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連載

#16 特派員フォトリレー

【特派員イチオシ旅】ローマっ子が愛する穴場の湖 壁画だらけの街も

イギリス領・北アイルランドのベルファストで家屋の壁にあったクロムウェルの肖像画
イギリス領・北アイルランドのベルファストで家屋の壁にあったクロムウェルの肖像画

目次

 世界のあちこちに住み、出張取材の機会も多い朝⽇新聞の特派員が、おすすめの旅行先を写真でご紹介します。今回はイタリアとイギリスから。イタリアの首都ローマの近郊には、泳げるほどきれいな湖があり、ハリウッドセレブなじみの古城があり、温泉もあるという1粒で3度おいしい街が。イギリス領・北アイルランドの中心都市には、あちこちに壁画が並んでいます。その背景には長年にわたる紛争がありました。(朝日新聞国際報道部)

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ローマ近郊で湖水浴ができる

 まずはイタリアから、河原田慎一記者。

 「ローマから車でも電車でも約1時間のところに、ブラッチャーノという街があり、湖水浴が楽しめます。

 水質がきれいで、湖なので波も静か。

 湖畔のレストランやホテルがプライベートなビーチにしているところもありますが、公共の湖水浴場エリアも充実していて、駐車場がただです。ビーチパラソルとベッドを借りるには、近くのバールでお金を払います」
イタリアのブラッチャーノ湖
イタリアのブラッチャーノ湖
 「また、ブラッチャーノの街には中世そのままのお城があります。なんと今もこのお城は人が住んでいるそうで、一部分はガイド付きのツアーで見ることができます。トム・クルーズがここで結婚式を挙げたとか。

 近くに温泉もあるそうなので、1日過ごせます。日本で言うと箱根みたいな感じです。箱根よりも近くて混んでないのもおすすめです。ローマに観光に来られた際に、足を伸ばすのも良いかもしれませんよ」

北アイルランドの壁画に「英雄」たち

 続いては、アイルランド島にありながらイギリス領という「北アイルランド」の中心都市ベルファストから、沢村亙記者。

 アイルランドは独立戦争を経て1922年にイギリス連邦内の自治領となり、1949年には完全に独立。しかし、北アイルランドはイギリス領のまま残ったという経緯があります。

ベルファストはイギリス領だが、アイルランド島にある
ベルファストはイギリス領だが、アイルランド島にある
 「ベルファストの中心部には、カトリック系とプロテスタント系の住民を分かつ巨大な『壁』がそびえ、建物の壁にはそれぞれの『英雄』(ときとしてテロリスト)をたたえる壁画が描かれています。

 北アイルランドでは、アイルランドへの帰属を求めるカトリック系住民と、イギリスによる統治の維持を求めるプロテスタント系住民が対立。

 双方の過激組織によるテロも頻発し、1960年代以降、約3000人が命を落としました」
ベルファストでは高い壁が目立つ
ベルファストでは高い壁が目立つ
 「1998年に和平合意が締結。一進一退を繰り返しながらも少しずつ平和な暮らしが定着してきました。

 5年前に訪れたときは、アイルランドのダブリンから乗車した鉄道をベルファストの駅で降りると、すかさず客待ちのタクシーの運転手のおじさんが『ヘイ! テロツアーに行かないか』」
17世紀にクロムウェルの率いた清教徒革命で、当時のイングランド王は処刑。カトリック勢力は厳しく取り締まられた
17世紀にクロムウェルの率いた清教徒革命で、当時のイングランド王は処刑。カトリック勢力は厳しく取り締まられた
 「20年前に最初に訪れた時は街中を、まるで軍の装甲車のようなものものしい警察車両が走り回り、あちこちで武装した兵士を見かけました。

 こうした車両の姿はほとんどなくなりました。何より、遠回りしなくてもそれぞれの地域を行き来できます」

観光で売り出しはかる

カトリック系過激派アイルランド共和軍(IRA)の闘士、ボビー・サンズの壁画
カトリック系過激派アイルランド共和軍(IRA)の闘士、ボビー・サンズの壁画
 「壁や壁画を背景に記念写真を撮る外国人観光客も大勢。かつてカトリック系過激組織の政治部門だった政党の事務所には『土産物コーナー』までありました。

 実はベルファストは、あの大西洋に沈んだ客船・タイタニック号の建造地。2012年には港にタイタニック博物館もオープンしました。

 紛争の暗いイメージを払拭し、むしろそれを逆手にとって国際観光都市で売り出そうと懸命です」
ベルファストの壁画の中には「ゲルニカ」も見える
ベルファストの壁画の中には「ゲルニカ」も見える
 「平和に見えたベルファストですが、紛争の名残も感じました。

 チャーターしたタクシーの運転手がカトリック系なら、プロテスタント地区では怖がって車の外にまでなかなか降りてくれません。逆もしかり。

 やはり心の中の壁はなかなか消えないのだなと感じました」
名誉革命でイングランド王位に就いたウィリアム3世の壁画
名誉革命でイングランド王位に就いたウィリアム3世の壁画

 日本でも戦争や災害、事件の跡などを巡る「ダークツーリズム」が注目を集めています。

 清教徒革命、名誉革命といった歴史の教科書くらいでしかなじみのないことば。複雑な宗派対立の歴史。平和なイメージのあるイギリスで今なお紛争の爪痕がくっきり残っていること。学びもまた、旅行の大事な効用の一つです。

 タイタニック博物館もおもしろそうですけどね!

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