家事も子育てもおろそかにする夫と衝突し、イライラが募る日々――。俳優の中村アンさんが、7月放送開始のABCテレビドラマ『こんばんは、朝山家です。』で〝キレる妻〟役に挑戦しています。地上波ゴールデン・プライム帯の連続ドラマで初主演。ホームドラマでの母親役も初めてという中村さんに、役作りについて聞きました。(聞き手:朝日新聞withnews編集部・河原夏季)
<ドラマ『こんばんは、朝山家です。』>
映画『百円の恋』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞し、連続テレビ小説『ブギウギ』(NHK)を手掛けた足立紳さんが、自身の連載日記『後ろ向きで進む』をベースに脚本を執筆。脚本家として活躍する夫の賢太(小澤征悦)、夫のために事務所を設立し社長を務める妻の朝子(中村アン)、高校1年の長女・蝶子(渡邉心結)と小学6年の長男・晴太(嶋田鉄太)の一家奮闘のホームドラマ。毎週日曜日22時15分からABCテレビ、テレビ朝日系で放送中。
――地上波ゴールデン・プライム帯の連続ドラマで初主演を務められます。母親役のオファーを受けた際にどのように感じられましたか。
中村アンさん(以下、中村):年齢的には母親役をいただくところに差し掛かってきましたが、ホームドラマの母親役は初めてです。私自身はまだ独身で母親の経験がない中、演じきれるのか不安がありました。
その気持ちをドラマ原案の足立紳さん・晃子さん夫妻に正直にお伝えしたら、「そのまま演じていただければ大丈夫ですよ」とおっしゃってくださいました。晃子さんは「私も日々母親としてちゃんとできているかわからないから」と。
――母親役への不安は、ご自身が経験していないという点が大きかったのでしょうか。
中村:そうですね。今までは自分の経験や雰囲気に近い役が多かったように思います。
普段子どもと接する機会があまりないので、不自然になってしまわないかと不安が尽きませんでした。
――ドラマの公式サイトでは「〝家族〟の物語には強く興味があった」とコメントされていました。なぜ興味があったのですか。
中村:恋愛ドラマももちろん面白いのですが、「家族」って自分が一番ナチュラルに表現できる場所な気がするんです。
家族だからこそ巻き起こるドラマの中で喜怒哀楽を表現できたら、私自身新たな一面に出会える気がしました。
家族の根底には大きな愛があるから乗り越えられることもあるんだろうな、と勝手に思っている部分もあるので、「いつか家族の日常を描く作品に出会えたらいいなぁ」と思っていました。
――母親の役作りはどのようになさっていたのですか。
中村:とにかく〝家族4人〟でのコミュニケーションを大切にしました。
実際、夫・朝山賢太役の小澤征悦さんや娘役の渡邉心結(みゆ)ちゃん、息子役の嶋田鉄太くんが、自然と私を「母親」にしてくれたように思います。
「母ちゃん」って呼んでもらったり、みんなを役名で呼んだりして月日を重ねたことが、私自身の役作りにもつながりました。
撮影も終盤に差し掛かり、「母親だから」と気負わなくていいのかなと思えてきました。
きっと世の中のお母さんたちも、子どもを通して初めて知る「自分」があるだろうし、私もこのドラマを通して「母親になるってこういうことなんだろうな」なんておこがましいことは言えませんが、ほんの少しだけ気持ちがわかったような気がします。
――「朝山朝子」を演じる上で難しさはありましたか。
中村:とにかく会話の量がすさまじいので、今までとは違う頭の使い方が必要でした。特に、小澤さんとは間髪を入れずポンポンと会話が進むようにセリフを言わなければいけません。それもワンカットで。
自分にセリフがきちんと落とし込まれていないとできませんし、自分になじませるために歩きながらセリフを覚えたり、書いてみたりして、それがすごく難しかったですね。でも、その分やりがいもあります。
――視聴者の方に見ていただきたいポイントを教えてください。
中村:リアリティが詰まっていてドキュメンタリーのような感じですし、朝山家をのぞいているような気持ちで見ていただけると思います。
肩の力を抜いて楽しめる、あたたかい作品です。