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経理歴13年…異色のR-1ファイナリスト 単独ライブへの意気込み

ピン芸人・どくさいスイッチ企画さん

2024年のR-1グランプリで、アマチュアで初のファイナリストになった「どくさいスイッチ企画」さん=筆者撮影
2024年のR-1グランプリで、アマチュアで初のファイナリストになった「どくさいスイッチ企画」さん=筆者撮影

2024年のR-1グランプリで、初のアマチュアファイナリストとなった「どくさいスイッチ企画」さん。今はフリーで芸人をしながら、前職で培った経理職の副業をしています。「フリー芸人だからこそ経理という仕事が役に立っている」と語る理由について聞いてみました。(ライター・安倍季実子)

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どくさいスイッチ企画: 神奈川県出身。大阪大学の落語研究部に所属し、卒業後は会社員として働くかたわらで落語を続けていた。銀杏亭魚折(いちょうてい うぉーりー)という名前で、複数の落語の大会で優勝をおさめている。コロナ禍の2020年にピン芸人としての活動をスタート。R-1グランプリ2024では、アマチュア史上初の決勝進出を果たし、4位に輝いた。同年春に上京し、現在はフリー芸人として多方面で活動している。

経理歴13年 異色のR-1ファイナリスト

会社員から芸人にキャリアチェンジをしたのが、2024年の「R-1グランプリ」でアマチュアとして初のファイナリストとなったどくさいスイッチ企画さんです。

大学では落語研究会に所属し、全日本学生落語大賞を受賞するなど、当時から高い実力を発揮していました。

卒業後は「落語は趣味」と決め、約13年間、会社員として勤めていました。

「経済学部で簿記を勉強していたので、その流れで新卒入社後は経理部に配属されました。社員の交通費などの入出金から始まり、最終的には決算資料や有価証券報告書の作成、社内向けの消費税説明会の担当などを任されました」と振り返ります。

R-1グランプリ2024で、個性的なネタで会場をにぎわせて同率4位に輝いた、どくさいスイッチ企画さん=本人提供
R-1グランプリ2024で、個性的なネタで会場をにぎわせて同率4位に輝いた、どくさいスイッチ企画さん=本人提供

「ただ、経理の仕事って意外とチームワークが大事で、一人で黙々と進めたい僕の性格とは、少し合っていなかったんです。しかも、業務の幅も深さも本当に広くて、正直、いまだに『完璧にできる』とは言えないですね(苦笑)」

2024年のR-1グランプリで決勝進出したことをきっかけに退職。春には上京し、現在はフリーで芸人活動に注力しています。

一方で、経理の仕事も個人事業主として継続中です。

「知人の会社2社の経理業務を請け負っています。入出金の記録や、領収書・請求書の整理、会計ソフトへの入力など、基本的な経理業務が中心です。ほかにも、銀行への記帳やコンビニでの電気代支払いなど、お金まわりの実務全般も担当しています」

平日は日中に経理の仕事をこなし、それが終わったらネタ作りやSNS発信に励み、夜はライブに出演するというのが、現在の主な一日の流れです。

月に10本前後の舞台に立ち、芸人としての経験を着実に積み重ねています。

「経理の仕事は忙しさの波がはっきりしているので、スケジュールのコントロールがしやすいんです。今は芸人と経理の収入は1:2くらい。安定した収入源があるのは心強いですが、できるだけ早く、この割合を逆転させたいです」

芸人への本気度を高めた、R-1グランプリ

R-1グランプリ2024以前から「芸人になりたい」という気持ちは少しずつ膨らんでいたと振り返る、どくさいスイッチ企画さん。

コロナ禍でピン芸人に転向した頃、大阪で社会人でも出演できるお笑いライブが始まり、試しに出てみたそうです。

すると、いつの間にかレギュラーメンバーとなり、週3回のペースで舞台に立つように。「経理の仕事よりも芸人の方がうまくいってるかも」と感じ始めたといいます。

R-1グランプリでも大きな手応えがありました。

「アマチュア時代にR-1に挑戦した時はあまり振るわなかったのですが、2022年に久々にR-1グランプリに出たら、準々決勝まで進めたんです」

翌年の2023年の大会は、惜しくもまた準々決勝止まりとなりましたが、その結果が逆に芸人への本気度を高めたといいます。

「会社員としては全然ダメだったけど、お笑いの方は意外とうまくいっている感覚がありました」と話すどくさいスイッチ企画さん=筆者撮影
「会社員としては全然ダメだったけど、お笑いの方は意外とうまくいっている感覚がありました」と話すどくさいスイッチ企画さん=筆者撮影

そして翌年、念願の決勝に進出。結果は同率4位でしたが、「ここで踏み切らなかったら、一生このままだろうなと思ったんで、退職を決断しました」と話します。

大きな転機を迎える上で気になるのが、周囲の反応です。

「妻はすぐに賛成してくれました。僕の両親も『いつかこうなると思ってた』と言っていました。妻の両親もお笑いが好きだからか、ひとまず応援してくれました」

こうして、36歳にして新たなスタートを切ることとなりました。上京から約1年が経ち、少しずつ東京のお笑い界の雰囲気もつかめるようになったといいます。

「今は、呼ばれたライブに出るのが主な活動ですが、今後は自分からオーディションに応募したり、いわゆる営業をしていこうと思っています」

芸人&落語家としての集大成、単独ライブ

8月24日、28日に東京と大阪で単独ライブを開催するどくさいスイッチさん。このライブを、自分自身の覚悟を示す場と見据えています。

「会場の手配、チケット販売、予算管理まで、ライブの運営はすべて一人でやっています。もちろん、ネタも作らないといけません。正直しんどい部分もありますが、自分の力でやり切ることでしか見えない景色があると思うんです」

これまでより大きめの会場を押さえた理由は、「今の自分に、どれだけ人を呼べるのか」という、芸人としての現在地を測るため。今だからこそできる挑戦です。

そんななかで、フリーの芸人にとっては運営や裏方仕事もネタ作りと同じくらい大切なもの。ここで生きるのが、会社員時代の経験です。

「経理をやっていたので、お金の計算は苦じゃありません。請求書も自分で作れるし、売り上げの見込みも把握できるんです。たとえば、『このライブハウスでやるなら、お客さんを何人呼ばなきゃ赤字になる』とかが、すぐに試算できます」

ライブで赤字になることも想定のうちです。

「1回のライブで赤字が出たとしても、長い目で見て黒字になればいいと思ってます。それに、今は種まき期間だと思うんで、いろいろ試してみたいんですよね」

落語でもコントでも 届けたいのは“自分の笑い”

今後の目標は、「爆笑ヒットパレード」などのお正月のネタ番組に出ること。そして、創作落語にもより力を入れていきたいと話します。

「創作落語を書くことがライフワークになっていて、自分だけでなく、プロの落語家さんに演じてもらうこともあります。そうした世に出る作品を、これからもたくさん作り続けたいです」

とにかくネタを作り続けたい――。それが、どくさいスイッチ企画さんの一番の原動力です。「そのために会社を辞めて芸人になったというのもあるので」と笑います。

「頭に浮かんだアイデアは、コントでも落語でもショートショートでも、何でもいいので形にしたいんです。今はそれをできる時間があることが、すごくうれしいです」

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