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2018年07月03日

【世界の乗り物】ロープウェーも市民の足 各地で日本の旧型車両活躍

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さまざまな交通機関が、市民の足を支えています

さまざまな交通機関が、市民の足を支えています

 ところ変われば品変わる。世界のあちこちに住む朝⽇新聞の特派員が、「街の乗り物」をテーマに撮った写真を集めました。今回は鉄道、索道。索道とは耳慣れない言葉かもしれませんが、ロープウェーのことです。日本では登山用のイメージがありますが、海外では都市部でも使われています。起伏のある街ではケーブルカーも便利。そして、古い日本の車両が各地で活躍しているのも確認できました。(朝⽇新聞国際報道部)

空中を行く「市民の足」

 案内役は東京・国際報道部の元テヘラン支局長、神田大介です。まずは南米のボリビアから田村剛記者。

 田村記者「ボリビアの中心都市ラパスは3600メートルの高地にあります。山の斜面に家々がぎっしりと並んで坂が多く、鉄道や地下鉄の建設は非現実的。ロープウェーはまさに市民の足です。
 運行会社によると、総延長は都市部の交通機関として使われるロープウエーでは世界最長だそうです。ラパス市内と郊外を結び、名前は『ミ・テレフェリコ(私のロープウェー)』といいます」

南米ボリビアの中心都市、ラパスのロープウェー

南米ボリビアの中心都市、ラパスのロープウェー

 2014年に最初の路線が開業したばかりですが、あっという間に拡大し、現在は6路線が運行中。総延長は20キロ超に及び、近くさらに延伸されるそうです。

南米ボリビアの中心都市、ラパスのロープウェー

南米ボリビアの中心都市、ラパスのロープウェー

 田村記者「住民の話では、以前は満員の乗り合いバスを使い、渋滞もひどかったそうです。ロープウェーの開業後は、1時間かかっていた道のりが10分になったと話す人もいました。
 建設を進めたのはボリビアのモラレス大統領。開業後の2014年に3選を果たしていて、ロープウェーが当選につながったとも言われています」

ロープウェーの乗客

ロープウェーの乗客

 この山高帽と民族衣装姿の女性たちは「チョリータ」と呼ばれ、先住民にルーツを持つとされています。

 坂道を車で行くのは疲れますが、空中を滑るように進むロープウエーは乗り心地も上々で、とても好評だということです。

 田村記者は、ブラジルの写真も送ってくれました。こちらはまた別の事情があったようです。

車の通る道がつくれない!

 田村記者「ブラジルのリオデジャネイロにある『ファベーラ』と呼ばれるスラム街の上にも、ロープウェーがあります」

ブラジル・リオデジャネイロのロープウェー

ブラジル・リオデジャネイロのロープウェー

 田村記者「リオデジャネイロは2016年の五輪後も治安が安定せず、銃撃戦が相次いでいて、中でも最も危険な地区の一つとされているのがコンプレクソ・ド・アレマンという地区です。
 広い地域にびっしりと粗末な家が立ち並び、迷路のような小道が張り巡らされているので、もはや車が通れるような大きな道を引くことができません」

ブラジル・リオデジャネイロのロープウェー

ブラジル・リオデジャネイロのロープウェー

 田村記者「市民の足として使われているのが、2011年に山々の頂上を結ぶように完成したロープウェー。2014年のサッカーW杯・ブラジル大会の前に建設され、1日平均1万2000人が利用していましたが、2017年11月に訪れた際には、財政難で運行が止まっていました。
 ひんぱんに繰り返されるマフィアと警察の銃撃戦で市民の犠牲者が相次ぎ、そのたびに学校も休校になる日々。住民は『世界が注目した五輪が終わっても、結局、俺たちには何も残らなかった』と嘆いていました。写真は2015年6月の、運行していた当時のものです」

ロープウェーから眺めるリオデジャネイロの街並み

ロープウェーから眺めるリオデジャネイロの街並み

 中国、ロシア、インド、南アフリカと並んで「BRICS」、主要新興5カ国の一つと称されるブラジルですが、格差の是正はなかなか進まないようです。

 1代前の大統領(ルセフ氏)はクビになり、2代前の大統領(ルラ氏)は収賄などで有罪判決を受けるなど、政治も混乱が続いています。

ジョージア(グルジア)、イランにも

 さて、街中のロープウェーは何も中南米の専売特許ではありません。

トビリシのロープウェー

トビリシのロープウェー

 カスピ海と黒海に挟まれた旧ソ連の国、大相撲の栃ノ心の出身地としても知られるジョージア(グルジア)の首都トビリシにもありました。神田が2015年に訪れました。

 トビリシは周囲を山に囲まれていて、中心部と周辺部の間はかなりの高低差があります。もっとも、こちらは市民の足というよりは観光用という意味合いの方が強い印象を受けました。

 そして中東にもロープウェーはあります。

イランのロープウェー

イランのロープウェー

 イランの首都テヘランはアルボルズ山脈のふもとにあり、南部は標高1100メートルくらい。北部の最も高いところは標高2000メートルほどもあります。人口約850万人と世界でも指折りの大都市ですが、斜面に貼り付いたような形をしています。

 ただし、市街地を結んでいるのは地下鉄やバス、タクシー。ロープウェーがあるのは市北部からさらに山の上へと登っていく路線で、夏はトレッキング、冬はスキーを楽しむ人たちでいつもにぎわっていました。

イランのロープウェー

イランのロープウェー

 このロープウェー、イラン・イスラム革命(1979年)よりも前にフランスとオーストリアの企業がつくったものだそうです。革命後に外国企業は撤退し、その後はイランの企業が運営しているそうですが、老朽化は否めません。動きが悪いと係員のお兄さんが手でゴンドラを押していたのが印象に残っています。

 もっとも、事故は1回も起きていないそうです……。

大丈夫かな?

大丈夫かな?

かわいいケーブルカー

 岡田玄記者から送られてきたのは、南米チリにある風変わりな乗り物の写真です。

チリ・バルパライソのアセンソール

チリ・バルパライソのアセンソール

 岡田記者「チリ中部の港湾都市、バルパライソにある『アセンソール』というケーブルカーです。
 写真を撮影したのは2012年ですが、この街はその後大火に襲われたので、いまもこの車両が走っているかはわかりません」

チリ・バルパライソのアセンソール

チリ・バルパライソのアセンソール

 岡田記者「全体に趣があり、大好きな街の一つ。海産物もおいしいです。チリの詩人、パブロ・ネルーダの家もあります。この街と、イスラネグラに行くのがおすすめです。なお、ミステリー好きで南米にも興味のある方は『ネルーダ事件』という小説もおすすめです」

 バルパライソは丘陵地に住宅が広がっているそうで、このアセンソールは街のいたるところにあるそうです。驚いたことに、ほとんどが100年以上前からあるんだとか。それにしても車両の塗色がド派手!

 続いてはロシア極東ウラジオストクから、中川仁樹記者です。

ウラジオストクのケーブルカー

ウラジオストクのケーブルカー

 中川記者「ウラジオストクの金角湾を望む丘にあるのがケーブルカー。駅は始発と終点の2つだけ。約180メートルの路線を2台の車両が交互に上下し、途中ですれ違います。丘の上にある大学の学生が主な乗客で、運賃は30円弱。5分おきに走っています。1分半のあっという間の旅ですが、下側の窓からは、金角湾の雄大な景色を楽します」

ウラジオストクのケーブルカー

ウラジオストクのケーブルカー

 中川記者「ちょっとレトロな車両のデザインは愛嬌があり、観光客にも人気があります」

ケーブルカーの線路ごしに、ウラジオストクの港湾が見える

ケーブルカーの線路ごしに、ウラジオストクの港湾が見える

 中川記者「ソ連指導者だったフルシチョフが初のアメリカ訪問後に訪れたウラジオストクで、『ソ連のサンフランシスコにする』と宣言。1962年にケーブルカーが開業しました。ちなみにサンフランシスコはケーブルカーのほか橋で有名ですが、金角湾をまたぐ橋が完成したのは、さらに50年後の2012年でした」

 率直に言って、サンフランシスコのケーブルカーとは似ても似つきませんが、丸っこい車両にはまた違った魅力がありますね。

 旧ソ連時代にできた車両には、どこか共通した親しみやすさがあるような気がします。

こちらがサンフランシスコのケーブルカー

こちらがサンフランシスコのケーブルカー

出典: ロイター

日本製?記録ないサハリン

 引き続き中川記者から、こんどはサハリンを走る鉄道。

サハリンを走る富士重工製とされる車両

サハリンを走る富士重工製とされる車両

 中川記者「ロシア極東のサハリンでは、富士重工(現スバル)製とされるД(デー)2系気動車がいまも乗客を運んでいます。導入はソ連時代の1984年で、日本との関係が悪かったためか、スバルには記録がないという不思議な車両です。すでに30年以上が過ぎましたが、まだまだ元気に動いています」

日本統治時代に製造された除雪車「マックレー車」

日本統治時代に製造された除雪車「マックレー車」

 中川記者「さらに驚かされるのが、日本統治時代の1920年代に製造された除雪車『マックレー車』も、いまも2両が健在。『マックリ』の名で親しまれ、『ほかに代わりがない』(ロシア鉄道)と高く評価されています」

サハリンを走る蒸気機関車

サハリンを走る蒸気機関車

 中川記者「サハリンは第2次世界大戦中までは日本が統治し、鉄道を整備しました。終戦後、国力が弱っていたソ連は日本の鉄道網の活用を選択したため、実はいまも線路の幅が日本の在来線と同じ1067ミリです。
 ソ連は日本の機関車などを接収しただけでなく、蒸気機関車のD51形などを正式に輸入もしました。特別に寒冷地仕様にしたそうです。ロシア鉄道に、ロシアの国旗が描かれた珍しいD51形の写真がありました」

キハ58系気動車

キハ58系気動車

 中川記者「ソ連崩壊後の1993年ごろには、JR東日本が引退後に保管していたキハ58系気動車も無償で譲り受けています。ただ、ロシア鉄道はサハリンの鉄道の線路幅を本土と同じ1520ミリにするため、2020年を目標に工事を進めています」

 日本の鉄道を活用しているのは、ロシアだけではありません。再び岡田玄記者、今度は南米アルゼンチンから。

アルゼンチンに丸ノ内線

アルゼンチンの首都ブエノスアイレスの地下鉄

アルゼンチンの首都ブエノスアイレスの地下鉄

 岡田記者「ブエノスアイレスの地下鉄で見た黄色い車両は、確か名古屋の地下鉄でした」

 ええ、ええ、知ってますとも。わたくし神田は名古屋の出身です。これは市営地下鉄東山線の旧型車両ですね。「きいでん(黄電)」と呼ばれていました。名古屋弁では「黄色い」を「きいない」、タマゴの黄身を「きいみ」とのばして発音するんです。

 朝日新聞の過去記事によると、この車両は2000年4月に引退。アルゼンチンに積み出されたのは翌2001年で、計24両が譲渡されたそうです。1957年に開業した東山線でも古参の車両で、クーラーがついておらず、黄電が来ると内心舌打ちをしたことを覚えています。いま日本には冷房装置のない電車ってなくなりましたねえ。

ブエノスアイレスを走る丸ノ内線

ブエノスアイレスを走る丸ノ内線

 ブエノスアイレスには東京メトロ丸ノ内線の車両も使われています。元ワシントン特派員の五十嵐大介記者が撮影した写真を見ると、「乗務員室」という表示はそのまま残っていますね。

 そして、元ヤンゴン支局長の五十嵐誠記者からは、ミャンマーを走る環状鉄道の写真。

ヤンゴンの環状線

ヤンゴンの環状線

 五十嵐記者「ミャンマー最大都市ヤンゴンには、街をぐるっとめぐる環状線があります。アジアで環状線を有する都市は、東京と大阪のほかやヤンゴンだけとのこと。2013年11月に駅を訪れると、年代物の車両が現役で走っていました」

 実はこのヤンゴン環状線にも、日本の車両が使われています。今はローマ支局長を務める河原田慎一記者が、2013年にミャンマー出張をした際に取材していました。

ヤンゴン中央駅に停車する松浦鉄道の車両

ヤンゴン中央駅に停車する松浦鉄道の車両

 河原田記者「ミャンマー国鉄に譲渡され、ヤンゴン市内の環状線を走るRBE2546。かつての松浦鉄道MR-300形気動車MR-302号車です。松浦鉄道は国鉄松浦線を転換して1988年に開業した第3セクター鉄道、MR-300は1988年の開業時に新潟鉄工所で作られたボギー台車のレールバス(軽快気動車)で、バス部品が要所に使われています。2007年から廃車が始まり、ミャンマーに送られました。ミャンマーでは後に客車に改造され、RBT2546号車に改番されています」

 えー、お察しの通り、河原田記者は社内でも指折りの「鉄ちゃん」です。ローマ赴任に際し、自宅に置いてある鉄道模型のセットが大きすぎて運び出せなかったという逸話の持ち主。セットは泣く泣く半分に切断し、今も実家で保管しているそうです。

 話がそれましたが、日本で現役を退いた車両が、今も世界各地で活躍しているのは喜ばしい限りです。こういうのも国際貢献ですね。


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