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2018年07月05日

【世界の乗り物】タイだけじゃなかった!世界で活躍するトゥクトゥク

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世界の「街の乗り物」で企画して、トゥクトゥクだけで1本の記事になるとは!

世界の「街の乗り物」で企画して、トゥクトゥクだけで1本の記事になるとは!

 ところ変われば品変わる。世界のあちこちに住む朝⽇新聞の特派員が、「街の乗り物」をテーマに撮った写真を集めました。日本でもすっかりおなじみの3輪タクシー「トゥクトゥク」、なんと世界各地にありました。その起源となった国はタイではなく、実は……。(朝⽇新聞国際報道部)

力士も乗るトゥクトゥク

 案内役は東京・国際報道部の元テヘラン支局長、神田大介です。トゥクトゥクはタイを中心に使われています。前輪が一つ、後輪は二つという「原動機付き3輪車」。狭い路地でも小回りがきくうえ、丈夫で修理しやすいため、長く重宝されてきました。

バンコクの3輪タクシー「トゥクトゥク」=藤谷健撮影

バンコクの3輪タクシー「トゥクトゥク」=藤谷健撮影

 最近は日本でも観光などの目的で使われています。朝日新聞の記事を検索すると、少なくとも福島、千葉、山梨、長野、愛知、兵庫、高知、福岡、宮崎、沖縄の各県に存在するか、かつて使われていたようです。

 力士が場所入りする際に使われたことも。

トゥクトゥクに乗って名古屋場所入りした時天空関=2015年7月19日、波戸健一撮影

トゥクトゥクに乗って名古屋場所入りした時天空関=2015年7月19日、波戸健一撮影

 記事によると、八百長問題で大相撲から客足が遠のいたことから、「何とか盛り上げたい」と親方の知人が始めたとか。車体は約130万円でタイから購入し、150万円以上をかけて改造。取組前にリラックスできるよう、後部座席ではテレビも見ることができる特別仕様だそうです。

 こうしたカスタマイズのしやすさもトゥクトゥクの魅力となっています。

 今回特派員たちが撮った写真には、この種の3輪自動車がたくさんありました。まずはタイのおとなりラオスから、染田屋竜太記者。

ラオスの「ジャンボ」

ラオスの「ジャンボ」

 染田屋記者「ラオスの街中を縫うように走るのは、バイクで台車を引っ張る『ジャンボ』。首都ビエンチャンでは大通りを見れば1台は走っているのを見ることができます」

ラオスの「ジャンボ」運転手、オアンさん

ラオスの「ジャンボ」運転手、オアンさん

 染田屋記者「客待ちをしていたオアンさん(55)。『他のアジアの国ではトゥクトゥクが人気みたいで、観光客にはジャンボじゃなくてトゥクトゥクの方が通じるね』
 この仕事を始めて12年。実はフルーツ農家なのですが、雨期に入り、仕事の手が空くと街に出てジャンボを運転するといいます。『最近はあんまり景気が良くない。1日に客が5~6人しか乗らないこともあるよ』とオアンさん。
 料金は、1キロで2万ラオスキップ(約260円)とのこと。ぼったくられなければ、ですが……」

ラオスの「ジャンボ」

ラオスの「ジャンボ」

 染田屋記者「ジャンボに乗ってみると、渋滞の中をくねくねと抜け、なかなか爽快。オアンさんは『車が増えて渋滞がひどくなったから、ビエンチャンを回るならジャンボが一番だよ』」

ボンボンはねる中国の車両

 トゥクトゥクは楽しい乗り物ですが、メーターがなく、料金交渉をしなければいけないというのが難点ではありますね。

 さて、似たような車両は中国にもありました。瀋陽から平賀拓哉記者。

中国・瀋陽の「小蹦蹦(シアオボンボン)」

中国・瀋陽の「小蹦蹦(シアオボンボン)」

 平賀記者「中国東北部の遼寧省瀋陽では、『小蹦蹦(シアオボンボン)』と呼ばれる電動3輪車のタクシーが走っています。近郊の地下鉄駅では、朝夕の通勤時間帯に赤い小さな車体がずらりと並び、客引きをする姿をよく見かけます。
 もともとは高齢者や障害者用につくられた車両です。「蹦」は中国語で「跳ぶ、跳ねる」という意味の動詞で、道路の凹凸に小さな車体がはねるように走るので名付けられたようです。中国語でも見た目通り可愛いらしい語感があって、ネーミングセンスの良さを感じます。
 運賃は目的地までの距離に応じて、5元、10元とざっくり決められています。だいたいタクシーの半値以下で乗ることができるので、自宅が駅からちょっと離れた場所にある人にとって便利な交通手段です」

中国・大連の「小蹦蹦(シアオボンボン)」

中国・大連の「小蹦蹦(シアオボンボン)」

 平賀記者「北京や河北省などでも、『三蹦子(サンボンツー)』など呼び方は変わりますが、同様の3輪タクシーが利用されています。
 一見すると東南アジアの3輪タクシーのような趣があって観光客にも人気が出そうですが、観光資源として堂々と宣伝はできない事情があります。
 実は小蹦蹦、客を乗せるのは違法営業なんです。ただ、庶民の足として定着してしまっているのと、運転手たちから職を奪ってしまうことになるため、当局も黙認してきたというのが実情のようです。
 ですが、中国では乗用車が爆発的に増えているため、規制がかなり厳しくなっています。中国の発展の速度はすざまじいですから、10年後には姿を消してしまうかもしれませんね」

 えっ、ずいぶん派手な赤い塗色だけど、違法なの? 中国と言えば「お上には逆らえない」という印象がありますが、そういう融通の利く一面もあるんですね。

 続いてはパキスタンから、乗京真知記者。派手さではまったくひけをとりません。

パキスタンの「チンチー」

パキスタンの「チンチー」

 乗京記者「公共交通機関が発達していないパキスタンでは、数十円程度で乗れるタクシー的な乗り物が何種類もあります。トゥクトゥクに近い形のものは『チンチー』。バイクに荷台を付けて通勤や通院の人、野菜や果物など軽い荷物を運びます」

パキスタンの「スズキ」

パキスタンの「スズキ」

 乗京記者「スズキ社の軽トラックはそのまま『スズキ』の愛称で親しまれ、建築資材や家畜など重めの貨物も難なく運べる耐久性から最も人気の高い乗り物です」

 パワーや安定性は、やはり4輪の方が上のようですね。そういえばベトナムではオートバイのことを「ホンダ」と呼びます。それだけこの分野では、日本製が優れているということでしょう。

 インドネシアにも3輪から4輪に「進化」した車が走っています。首都ジャカルタから野上英文記者。

ジャカルタの「バジャイ・キュート」

ジャカルタの「バジャイ・キュート」

 野上記者「ジャカルタならではの乗り物が小型四輪タクシー『バジャイ・キュート』。これまでの三輪タクシー『バジャイ』に代わり、安全と環境への配慮で人気なんだとか。
 4人乗りで4000~5000ルピア(30~40円)。安いうえに、一般車が入れない専用道の通行が許可されていているそうです」

グアテマラやペルーでも

 そして驚いたことに、3輪タクシーは中南米でも快走していました。岡田玄記者で、まずはグアテマラから。

中米グアテマラにもあった「トゥクトゥク」

中米グアテマラにもあった「トゥクトゥク」

 岡田記者「グアテマラの古都アンティグアで撮影したのは、トゥクトゥクです。そう、あのトゥクトゥク。インドから輸入しているそうで、グアテマラの各地で走っているとか」

グアテマラの「トゥクトゥク」の運転手さん

グアテマラの「トゥクトゥク」の運転手さん

 岡田記者「アンティグアには市内に765台あり、観光客だけでなく、市民の足としても重宝されています。
 で、このグアテマラからコロンビアに移動する飛行機で、偶然隣り合わせたインド人商社マンいわく、トゥクトゥクはペルーにも輸出しているとのことでした」

ペルーの「モトタクシー」

ペルーの「モトタクシー」

 岡田記者「そのペルー、南部にあるチチカカ湖近くのプーノという街で見たのがこの青いバイクタクシーでした」

 ペルーではモトタクシーという名で呼ばれているようです。

 そういえばエジプトの首都カイロでもトゥクトゥクは走っていました。決まって黄色と黒の塗色。カイロも細い路地が多いだけに、使い勝手がいいようです。

エジプトの首都、カイロを走るトゥクトゥク

エジプトの首都、カイロを走るトゥクトゥク

出典: ロイター

 そして調べてみると、ポルトガルの首都リスボンや、オランダの首都アムステルダムなどヨーロッパにもありました。

 もっとも、こちらは近年になって増えたもので、観光用だとか。

 トゥクトゥクは、歩くにはちょっと遠い距離を行くにはぴったり。窓もなく、文字どおり街の空気を感じられることが、人気を呼んでいるようです。

ポルトガルの首都、リスボンで客を待つトゥクトゥク

ポルトガルの首都、リスボンで客を待つトゥクトゥク

出典: ロイター

ルーツはダイハツ「ミゼット」

 そんな世界中で活躍しているトゥクトゥクですが、ルーツは日本にあるんです。

1957年に発売された「ミゼット」

1957年に発売された「ミゼット」

 ダイハツの軽3輪車「ミゼット」は、1957年に発売されると爆発的にヒットし、ブームを巻き起こしました。

 このころ日本は高度経済成長期のまっただなか。まだ乗用車は本格的には普及しておらず、ミゼットのような「オート三輪」がモノや人の移動で大活躍しました。

 これ以前に主役だったのはリヤカー。つまり人力です。オート三輪は日本におけるモータリゼーションの先駆けでした。

2017年11月の東京モーターショーで展示された「ミゼット」

2017年11月の東京モーターショーで展示された「ミゼット」

 諸外国も注目。ミゼットは発売翌年の1958年には早くも東南アジアや中東から引き合いがあり、59年から輸出が始まったそうです。

 特にタイは輸送の近代化を目指す政府の政策もあり、59年から60年にかけて4300台を輸入。人力でこいでいた3輪車に取って代わりました。

1962年の東京都足立区千住の様子。「ミゼット」が活躍している

1962年の東京都足立区千住の様子。「ミゼット」が活躍している

 その後、日本ではよりパワフルな4輪の軽トラックが普及し、ミゼットも1971年末には製造を終了。タイをはじめとする各国では独自の進化を遂げ、今も現役で走っているというわけです。

インド圏のオートリキシャ

 ところで、3輪車と言えば、インドやネパール、バングラデシュ、スリランカなどで見る「リキシャ」もあります。

 モーター付きの「オートリキシャ」は、タイのトゥクトゥクよりも一回り小さいですが、ほぼ同じような形をしています。バングラデシュから奈良部健記者。

 奈良部記者「リキシャの語源は日本語の『人力車』だと言われています。
 オートリキシャは字のごとく、自動のリキシャです。圧縮天然ガスを燃料にしているものが多いです。呼び止める時には、大きな声で『オートー!!』と言います」

 なお、呼び名の由来は日本ですが、車体はスクーターの「ベスパ」で知られるイタリアのピアッジオ社が源流だそうです。

 ということは、中南米の3輪車はトゥクトゥクと呼ばれていても、源流はイタリアなのかもしれません。詳しいことはわかりませんでした。

バングラデシュの「オートリキシャ」

バングラデシュの「オートリキシャ」

 奈良部記者「実は、2年前に日本人も犠牲になった首都ダッカのテロ以降、バングラデシュの日本人社会では乗ることを避けるようにしています。
 後部客席に格子のようなドアがあり、外から施錠されてしまうタイプのものが多く、いざという時逃げにくいというのが理由だそうです。風情のある、安くて便利な乗り物に乗れないというのは、テロが残した悲しい影響の一つです」

 2016年7月1日夜、ダッカのレストランがイスラム過激派に襲撃され、日本人7人を含む22人が殺害された事件は記憶に新しいところです。

 今もなお、バングラデシュでは多くの日本人が現地のために貢献しようと働いています。ですが、外国人がいることがわからないように事務所の看板を外すしたり、外出を控えたりしているそうです。

 テロは単に命を奪うだけでなく、生活から人間らしさも奪っていきます。何を気にすることもなくリキシャに乗れる日が1日も早く訪れることを、切に願います。


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