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連載

#7 特派員フォトリレー

【世界の乗り物】路面電車、各地で活躍 なんと2階建ての車両も!

一口に路面電車と言っても、土地によってさまざまです
一口に路面電車と言っても、土地によってさまざまです

目次

 ところ変われば品変わる。世界のあちこちに住む朝⽇新聞の特派員が、「街の乗り物」をテーマに撮った写真を集めました。今回は路面電車に注目。日本では1960年代から70年代にかけて各地で廃止されましたが、排ガスを出さない、騒音が少ない、地下鉄などに比べればコストも小さいと、近年は再評価が進んでいるんです。(朝⽇新聞国際報道部)

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ベビーカーもらくらく

 案内役は元テヘラン支局長で、現在は東京の国際報道部に勤務する神田大介が務めます。まずはイギリスから、河原田慎一記者。

 河原田記者「次世代型の路面電車(LRT)を導入する動きが世界で広がっています。従来より床が低く、乗り降りがバリアフリーでできるので誰でも使いやすいのが特徴。私が2017年に取材したイギリス中部のマンチェスターでは、1992年に導入され、さびれた中心街の復活につながりました」
イギリス・マンチェスターの路面電車
イギリス・マンチェスターの路面電車
 河原田記者「郊外の駅には駐車場が隣接し、通勤客はここで車から電車に乗り換えます。渋滞もないし、定時に来るので便利だと住民にも評判です。今では年間に約3800万人が利用しています。日本でも富山にあるほか、宇都宮が導入を進めています」
マンチェスター郊外のイーストディズバリー駅。電車を降りた乗客が、駅に隣接する駐車場に向かう
マンチェスター郊外のイーストディズバリー駅。電車を降りた乗客が、駅に隣接する駐車場に向かう

 ヨーロッパではトラムと呼ばれることが多い路面電車。その復権は、低層式の車両が開発されたことの影響も大きいようです。

 オーストリアの首都ウィーンから吉武祐記者。

ウィーンの路面電車
ウィーンの路面電車
 吉武記者「ウィーンを走るトラム、旧型車は風情があって外見はステキですが、ステップを上って車内に入るのがやや大変です」
ウィーンの路面電車
ウィーンの路面電車
 吉武記者「新型車は床が低くなっています。こちらはベビーカーで街に出る人が本当に多いです。出入り口付近の広いスペースはベビーカーでにぎわいます。子連れの客がいると、他の客が降りるときにドアのボタンを押して開けてくれるなど、手伝ってくれる人が多いです」
左が旧型、右は新型
左が旧型、右は新型
 吉武記者「ベビーカーで乗る場合は、ほかの乗客が助けてくれて、乗り降りで『よっこいしょ』と持ち上げている光景をよく見かけます」

香港では2階建て

 日本でも最近は、ベビーカーや車いす用のスペースを設けた電車やバスを目にする機会が増えました。

 一方で、子連れの客を手伝う人が多いかどうかと言えば、こちらはまだまだかも?

 さて、路面電車は香港にもあります。益満雄一郎記者。

香港の路面電車
香港の路面電車
 益満記者「過去、何回も香港に来た友人や同僚を連れて街を案内してきましたが、評判が良かったのが2階建ての路面電車に乗ってもらうことです。料金は大人2.3香港ドル(約32円)という安さ。定額制なので、どこまで走っても同じです。どこに行くという当てもなく、ふらりと乗って、街の景色を楽しむと、少し心が安らぐのは私だけではないかもしれません」
香港の路面電車
香港の路面電車
 益満記者「電車は全体が広告で覆われており、色も赤や黄色などカラフル。レトロなつくりが特徴的です。
 歴史をひもとくと、香港の路面電車は、日露戦争があった1904年(明治37年)に開通。現在は164両の2階建て電車が運用されています。毎日延べ20万人が乗車。香港には欠かせない庶民の足となっていますが、速度が遅く、急ぎの取材の場合はなかなか使えないのが難点です」
香港の路面電車
香港の路面電車
 益満記者「電車の中は見た目から推測できるように、やや窮屈です。僕の身長(173センチ)でも、天井まですれすれ。180センチ以上ある人は身をかがめないと、間違いなく頭をぶつけます」
香港の路面電車の急階段
香港の路面電車の急階段
 益満記者「電車には、後ろから乗ります。2階へ上がる階段があります。階段は傾斜がきついので、転落に注意しながら上がる必要があります。2階に上がると、看板が乱立する香港らしい雑多な景観が望めます」
香港の路面電車の車両内部
香港の路面電車の車両内部
 益満記者「香港は日本よりもはるかに暑いのですが、電車にエアコンはありません。窓を開けると、エアコンの冷たい空気と違う自然の風が顔に当たり、とても気持ちがよいです。雨が降ってきたら、手動でお客さんが閉めないと、びしょ濡れになります」

 全車両が2階建ての路面電車というのは世界でも香港にしかないそうです。土地の狭い香港ならではと言えるでしょうか。

 なお、香港にはこのほかに地下鉄があるほか、村上太輝夫記者によると、「軽鉄」と呼ばれる電車も走っているそうです。

香港の「軽鉄」
香港の「軽鉄」

 直訳すればまさにライトレール。主に香港の郊外を走っています。

中東にもあります

 路面電車は中東(北アフリカ)にもありました。アルジェリアの首都アルジェを走る車両は、白、水色、青のさわやかなデザイン。神田は2013年に取材で訪れました。

 建物の間を縫うように、ゆっくりと進んで行きます。

アルジェのトラム
アルジェのトラム

 さっそうと街をゆく様子がとてもおしゃれでした。アルジェと言ってもあまりなじみがないかもしれませんが、街並みは清潔でオープンカフェが軒を連ね、美しさはヨーロッパの都市にまったくひけをとりません。

 旅行者にとっての見どころも多いんですが、日本人が入国するにはビザが必要です。

アルジェのトラム
アルジェのトラム

 アルジェリアのおとなり、チュニジアの首都チュニスにもやはり路面電車が走っており、こちらのシンボルカラーは黄緑色。

 これまた街並みにマッチしていて、かっこいいんです。

チュニスのトラム
チュニスのトラム

 チュニス市民の足として、しっかり生活に根付いていました。ちなみにチュニジアは、日本のパスポートならビザなしで入国できます。

チュニスのトラム
チュニスのトラム

 このほか、トルコのイスタンブールや、アラブ首長国連邦のドバイにも路面電車は走っていました。環境にやさしく、赤ちゃん連れやお年寄りにも乗りやすい交通機関として、見直しが進んでいるようです。

5キロしかないモノレール

 続いて、バルト3国の真ん中にあるラトビアから、寺西和男記者。

リガのトラムとバス
リガのトラムとバス
 寺西記者「ラトビアでの取材先からホテルに戻る途中にあった路面電車兼バスの乗り場で撮影しました。観光客らしきアジア系の人たちや、仕事帰りと思われるようなスーツ姿の人も乗り混んでいました」
リガのトラム
リガのトラム
 寺西記者「撮影時間は午後8時ごろですが、空は真っ昼間のように明るいです。ヨーロッパの北部にあるラトビアで、夏場に日が沈むのはほんの数時間しかありません」
リガのトラム
リガのトラム
 寺西記者「リガ中心部の旧市街地にあるホテルの周りにはレストランやお店が並んでいましたが、空が明るい『真夜中』まで多くの観光客や地元の人たちでにぎわっていました」

 夏のヨーロッパは夜がいいですね。明るく、涼しく、人がたくさん出歩いていて、夜遅くまで盛り上がっている。

 特に、これからの7月や8月はバカンスのシーズン。街にいるのは同じヨーロッパ人に見えても、実は近隣の別の国や街から来ている観光客が多く、住民はあまりいないなんてこともあります。

 最後はロシアのモスクワから、中川仁樹記者です。

モスクワのモノレール
モスクワのモノレール
 中川記者「トロリーバスや路面電車など様々な公共交通機関が親しまれているロシアですが、モスクワにはロシアで唯一のモノレールがあります」
モスクワのモノレール
モスクワのモノレール
 中川記者「ただ、駅はたったの6つ。始発から終点までの距離はわずか5キロ弱で、18分で到着します。運賃は約100円で、いまは1時間に2本しかありません」
モノレールと併走する路面電車
モノレールと併走する路面電車
 中川記者「2010年の万博を目指し新技術のモノレール建設を決めたようですが、結局、万博は誘致に失敗。一方、モノレールは車両価格や建設費が高くて採算が厳しく、ほかの計画はなくなりました。乗ってみると、見晴らしがよくて快適なのですが、残念ながら廃止の噂も上っています」
モノレールと併走する路面電車
モノレールと併走する路面電車
 中川記者「面白いのはモノレールの路線の多くで、下を路面電車が走っていること。本数も多くて、確かにこちらを使いたくなります」

 どうも博覧会というのは「新しい乗り物」とセットでつくられることが多いのかもしれません。

 東京の臨海部を走る「ゆりかもめ」は、中止になった「世界都市博」のためにつくられたもの。2005年にあった愛知万博の跡地には「リニモ」が走っています。神戸の「ポートライナー」もそうですね。

 ただ、愛知では「ピーチライナー」という新交通システムが2006年、利用客数の低迷から廃線になってしまいました。モスクワのモノレールにはぜひ踏ん張ってもらいたいところです。

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