ところ変われば品変わる。世界のあちこちに住む朝⽇新聞の特派員が、「街の乗り物」をテーマに撮った写真を集めました。今回は路面電車に注目。日本では1960年代から70年代にかけて各地で廃止されましたが、排ガスを出さない、騒音が少ない、地下鉄などに比べればコストも小さいと、近年は再評価が進んでいるんです。(朝⽇新聞国際報道部)
ベビーカーもらくらく
案内役は元テヘラン支局長で、現在は東京の国際報道部に勤務する神田大介が務めます。まずはイギリスから、河原田慎一記者。


ヨーロッパではトラムと呼ばれることが多い路面電車。その復権は、低層式の車両が開発されたことの影響も大きいようです。
オーストリアの首都ウィーンから吉武祐記者。



香港では2階建て
日本でも最近は、ベビーカーや車いす用のスペースを設けた電車やバスを目にする機会が増えました。
一方で、子連れの客を手伝う人が多いかどうかと言えば、こちらはまだまだかも?
さて、路面電車は香港にもあります。益満雄一郎記者。


歴史をひもとくと、香港の路面電車は、日露戦争があった1904年(明治37年)に開通。現在は164両の2階建て電車が運用されています。毎日延べ20万人が乗車。香港には欠かせない庶民の足となっていますが、速度が遅く、急ぎの取材の場合はなかなか使えないのが難点です」



全車両が2階建ての路面電車というのは世界でも香港にしかないそうです。土地の狭い香港ならではと言えるでしょうか。
なお、香港にはこのほかに地下鉄があるほか、村上太輝夫記者によると、「軽鉄」と呼ばれる電車も走っているそうです。

直訳すればまさにライトレール。主に香港の郊外を走っています。
中東にもあります
路面電車は中東(北アフリカ)にもありました。アルジェリアの首都アルジェを走る車両は、白、水色、青のさわやかなデザイン。神田は2013年に取材で訪れました。
建物の間を縫うように、ゆっくりと進んで行きます。

さっそうと街をゆく様子がとてもおしゃれでした。アルジェと言ってもあまりなじみがないかもしれませんが、街並みは清潔でオープンカフェが軒を連ね、美しさはヨーロッパの都市にまったくひけをとりません。
旅行者にとっての見どころも多いんですが、日本人が入国するにはビザが必要です。

アルジェリアのおとなり、チュニジアの首都チュニスにもやはり路面電車が走っており、こちらのシンボルカラーは黄緑色。
これまた街並みにマッチしていて、かっこいいんです。

チュニス市民の足として、しっかり生活に根付いていました。ちなみにチュニジアは、日本のパスポートならビザなしで入国できます。

このほか、トルコのイスタンブールや、アラブ首長国連邦のドバイにも路面電車は走っていました。環境にやさしく、赤ちゃん連れやお年寄りにも乗りやすい交通機関として、見直しが進んでいるようです。
5キロしかないモノレール
続いて、バルト3国の真ん中にあるラトビアから、寺西和男記者。



夏のヨーロッパは夜がいいですね。明るく、涼しく、人がたくさん出歩いていて、夜遅くまで盛り上がっている。
特に、これからの7月や8月はバカンスのシーズン。街にいるのは同じヨーロッパ人に見えても、実は近隣の別の国や街から来ている観光客が多く、住民はあまりいないなんてこともあります。
最後はロシアのモスクワから、中川仁樹記者です。




どうも博覧会というのは「新しい乗り物」とセットでつくられることが多いのかもしれません。
東京の臨海部を走る「ゆりかもめ」は、中止になった「世界都市博」のためにつくられたもの。2005年にあった愛知万博の跡地には「リニモ」が走っています。神戸の「ポートライナー」もそうですね。
ただ、愛知では「ピーチライナー」という新交通システムが2006年、利用客数の低迷から廃線になってしまいました。モスクワのモノレールにはぜひ踏ん張ってもらいたいところです。