連載
#9 キャラクターの世界
「すみっコぐらし」の快進撃 控えめなキャラ、ビビアン・スーも感激
台湾ではシェアの半数近くを占めています
日本で2019年11月に公開された「映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」。ツイッターでトレンド入りしたり、賞を受賞したりと、部屋の隅を好むキャラクターたち自身は望まなさそうな活躍を見せていました。その映画、香港と台湾でも上映が始まりました。動員は好調のようですが、どの部分が魅力に映っているのでしょう。日本のファンと同じ感覚なのか、現地に住んでいる人たちに話を聞きました。(朝日新聞記者・影山遼、小川尭洋)
(2020年11月8日午後9時30分追記)
配給会社のアスミック・エースによると、「映画 すみっコぐらし」の第2弾の制作が決まりました。2021年の公開を予定しています。アニメーション制作は、第1弾と同じくファンワークスが担当。詳細や登場すみっコ・みにっコたちは、情報が入り次第、追加で報じていきます。
(2021年4月13日午後2時追記)
第2弾の映画は2021年11月の公開となり、タイトルは「映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ」に決定しました。監督は「夏目友人帳」の大森貴弘さん、脚本は「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の吉田玲子さんが手がけるということです。
大森さんは「制作に入ってみれば、仕事場の机もすみっこ、住んでる家も壁沿いのすみっこ、生まれた家も角っこのすみっこだった私自身、すみっコならぬ『すみオヤジ』だったのです!今は先輩すみっコたちに導かれて、鋭意制作に励んでおります。秋に映画館でお目にかかれれば幸いです。お楽しみに!」、吉田さんは「どのコたちもキュートなのは、外側と内側が作りこまれているからだと感じました。心に秘めた恥ずかしさも情けなさも哀しさも、それぞれを魅力的に見せる要素なのかも。心の片隅にある何かを愛しく思える映画になるといいなと思っております」とコメントしています。
(2020年7月30日午前12時追記)
配給会社のアスミック・エースによると、「おうちで映画すみっコ夏休み上映会」という企画が決まりました。
ブルーレイやDVD、配信サービスなどで自宅で同時に映画を視聴し、SNSに「#映画すみっコ夏休み上映会」とつけて感想を投稿する企画。今年8周年を迎えたことなどにちなみ、2020年8月8日午後8時に始まります。すみっコたちも自宅で楽しむ様子を描いた原作者のよこみぞゆりさんによる描き下ろしイラストも。
ご存じない方のために、最初に少しだけキャラクターを紹介します。「ぺんぎん?」は自分が本物のペンギンなのか自信がない黄緑色の存在。「しろくま」は北から逃げてきた寒がりの人見知り。「とんかつ」は脂っこいから残されたトンカツの端っこ。体形を気にする「ねこ」や捕まらないようとかげのふりをしている「とかげ」もいます。映画のオリジナルでは、「ひよこ?」という絵本の中で仲間を探しているキャラクターも登場します。
映画は、国内の観客動員数が122万人、興行収入が14億8千万円を突破。映画批評家たちが選ぶ「日本映画批評家大賞」(第29回)では、アニメーション作品賞を受賞しています。
香港では6月25日、台湾では7月10日から公開が始まりました。台湾の人気俳優ビビアン・スーさん(45)は、公開翌日の11日、親子で映画を見ました。最後のシーンを見た我が子が、ずっと泣いていたことをインスタグラムで報告。「可愛くて分かりやすかったからなのかな。ママの説明なしで、初めてちゃんと理解できたの」と感激していました。
一方、新型コロナウイルスの流行を抑え込んでいる台湾では、市民の関心が感染対策から生活の立て直しに向かっています。
配給会社・Vie Vision Pictures Co., Ltd.によると、映画を見るために行列ができたところもありました。
先週末の興行成績は1800万台湾ドル(約6552万円)で、先週末の台湾内で1位を記録。全体のうち47%のシェアを占めています。初週の興行成績に関しては、今年公開されたアニメ映画や邦画の中で、ともに1位になったといいます。
配給会社の担当者は「数カ月にわたって試行錯誤を重ね、この度、努力が実って感慨深いです。(台湾の俳優)賈静雯(アリッサ・チア)さんの吹き替えが人気で、85%の観客が吹き替えを選んでいます。最低でも4週間は上映する予定ですが、大ヒットスタートを切ったこともあり、夏休みが終わる9月までは上映は続くと予想されます」とコメントを寄せました。
一体どのような人たちに支えられて、ここまでの支持を集めているのでしょうか。
台湾に住む小学校教員の邱雅茜(チュー・ヤーシー)さん(38)は、2歳の娘がきっかけでハマりました。数年前に農場に遊びに行った時、お土産売り場で「とんかつ」のバッグを娘にねだられ、買ったそうです。以降、スプーンやヘルメットなど約10種類を購入。「可愛いだけじゃなくて、キャラとストーリーの設定が丁寧だから、大人もハマっちゃう。私も家にいるのが好きだから、この子たちの気持ちがよく分かるの」
書店で店長を務める張沛榛(ジャン・ペイジュン)さん(36)は数年前、のんびりとした表情や動きにひかれ、LINEスタンプを買ったそうです。「控えめで可愛いキャラは台湾には少ない。見ていると癒やされる」。7月に入ってから、グッズがもらえるコンビニのキャンペーンを知り、応募シールを集めているそうです。
台湾の人気YouTuberの滴妹(ディーメイ)さんも、自他ともに認めるすみっコぐらしの熱狂的ファン。グッズを買うためだけに、何度も日本に来ています。
ぬいぐるみや靴下など20種類以上のグッズを紹介した動画は、200万超の再生数に。巾着袋を片手に「こんな小さくて何も入らない袋でも、可愛すぎるから、ついつい買っちゃうの」と、魔力を力説します。コメント欄も「とんかつ超可愛い」「私もファンです」など、台湾の人たちの「すみっコ愛」であふれています。
日本のファンとほぼ変わらない熱量。すみっコ好きが世界に誇れる日も近そうです。
1/36枚