close

閉

これフカボリしてほしい

リクエストする

閉

2018年04月07日

「ゲイかも」息子の告白に救われた母 25年家族に隠したある秘密


  • 166787

出典: PIXTA

最新ニュースを受け取る

 「ゲイかもしれへん」。高校生の息子から告白され、「救われた」と話す女性がいます。そこには、家族にも誰にも話せなかった、女性のある「秘密」がありました。(朝日新聞デジタル編集部記者・原田朱美)


息子の告白

その女性とは、Cさん(49)。
夫と大学1年生の息子と暮らす、ごく普通の主婦です。

Cさんと息子は、普段から仲が良く、リビングのコタツでいろんな話をします。
あれは、2016年の秋ごろ。
息子はいつもの場所に座り、当時通っていた高校の授業で読んだという、小説の話をはじめました。

出典: PIXTA

物語の中に、同性愛者が登場します。

感想をあれこれと語り合うなかで、息子がさらりと口にしました。

「自分もゲイかもしれへん」

勇気を振り絞ってとか、意を決してとかではなく。
ごくごく自然な告白でした。

一家は以前、関西に住んでいたので、家でリラックスして話すときは、だいたい関西弁です。

「なんや、全然知らへんかったわあ。ママそれ聞いてうれしいわあ」

Cさんは、思わずこう口にしていました。

もちろん「差別されないか」「今後つらい目にあうんじゃないか」という不安がないわけではありません。
その一方で、うれしかった。

「私の心に、ぱあっと青空が広がった気がしたんですよ」。

記者にそう話すCさんの声は、少し震えていました。

「息子の告白を聞いて、私も自分の気持ちにフタをしなくていいんだ。ああ、助かった。救われたって」

Cさんは、続けて息子にこう告げました。

「実はママも、女の人の方が、好きかもしれへん」

「へーえ」

息子は、やっぱりいつもどおりの穏やかな顔で、受け止めてくれました。

出典: PIXTA

心にフタをした結婚

Cさんは、古い街に生まれました。
両親の仲が悪く、難しい家庭でした。

恋愛結婚で苦労した両親の二の舞いになるのが怖く、「結婚に恋愛感情を持ち込まない」と、心に決めていました。
結婚への夢や憧れは、ありません。
「結婚は家と家がするもの。相手は『嫌いじゃない』程度なら、親が薦める人でいい」。

同世代と比べて古くさい考え方だと知っていましたが、親が求める理想を実現させてあげれば、親も自分もうまくいくと思っていました。

思春期のころ、Cさんが好きになった同級生は、女子でした。
でもそれは、「女の子にはよくあること」。

27歳の時、親の薦めに従って、今の夫と結婚します。
「LOVE」がなくても「LIKE」な相手なら、十分だと思っていました。

出典: PIXTA

式の直前、ふたりで祭りに出かけた時のこと。
夫が、Cさんの手を握りました。

「すごく、嫌」

自分自身の反応に、戸惑いました。

そして、キスもしないまま、結婚式の日を迎えます。

2次会で参列者たちが、無邪気に新郎新婦のキスを求めました。
やっぱり、嫌。
「ああ、この結婚はダメだったかもしれない」
と、はっきり自覚します。

「どうしよう。どうしよう」

同性が好きかもしれないなんて、怖くて誰にも言えません。
結婚生活を維持しなければ。この気持ちにフタをしなければ。
一時的なものかもしれないし。
女性が好きなわけがない。そんなことは、許されない。

出典: PIXTA

ストレスとの関係はわかりませんが、
まもなく、病気を患いました。

結婚から5年後、息子が生まれました。
「跡取りを産まねば」と思っていたので、役割を果たしたという安堵(あんど)が、どこかにありました。

ただ、フタをしたはずの思いは、消えません。

気がつくと、本屋で同性愛について書かれた本を手に取っていたり、レズビアンであることを公言している人のブログを読んでいたり。

病は、いっこうに治らず、結婚生活と同じ期間、今に至るまで、薬を飲み続けています。

出典: PIXTA

人生を肯定して死ねる

Cさんが息子の告白を聞いて「救われた」のは、20年以上押さえつけていた自分の心でした。

「息子が、自然と自分がゲイであると認めるのを聞いて、『ああ、なんだ。同性を好きでもいいんだ。そういう気持ちがあってもいいんだ』って」

「もっと早く気付けば良かったのかもしれませんが、これで自分の人生を肯定して死ねるのが、うれしい」

ただ、夫は、なにも知りません。

「絶対ムリです! 言えるわけがない!」

自分と同じく古い家で育った人なので、妻と息子が同性愛者かもしれないという事実を受け入れられるとは、思えません。
息子も、父親には当面言う気がないようです。

夫との関係は、ずっと前に冷えています。
自分のことしか考えていないかのような夫の言動に、いらつくこともあります。

「ただ、夫には申し訳ない気持ち。私も愛情が希薄でしたから。もっと頼ったり甘えたりしたら、よかったのかな。結婚したら急に病気になった私を、心配していたかな。私の言動で、彼を傷つけたこともあったのかな」。

近い将来、息子が独立した後、夫と向き合い、関係をどう立て直すのか。
「これからが正念場」と、Cさんは笑います。

出典: PIXTA

実は、「結婚しているレズビアン」は、珍しいわけではありません。
レズビアンのコミュニティでは、「主婦レズ」といった呼び方をされています。
結婚するにいたった経緯は、人それぞれですが、家族に隠し、ひそかに集まる人たちもいます。

Cさんに「他のレズビアンの当事者に会ってみたいと思いますか」と、聞きました。

「思います!」

Cさんは、勢いよくこたえた後、「でもやっぱり、怖いかな。怖いなあ……」と、うつむきました。「家族を、なんとか保っていきたいんです」

レズビアンの人たちと会うことで、自分の知らない部分がムクムクと育ってしまったら、どうしよう。思いが育ちすぎた時、自分がどう変わってしまうのか、想像もできません。

20年以上押さえ続けた「フタ」は、もうありません。

同性愛を告白した著名人 女優・歌手・元首相… 偏見恐れず公に
前へ
ジョディ・フォスター氏。米ゴールデングローブ賞の授賞式で同性愛者であることを公にした=1995年4月27日
次へ
前へ
次へ

もっと見る



コメント

あわせて読みたい

「筋肉体操」あの先生が明かした後悔、「重さ自慢」筋トレの結果……
「筋肉体操」あの先生が明かした後悔、「重さ自慢」筋トレの結果……
アラームでダメなら実力行使だ!半世紀愛される「定刻起床装置」とは
アラームでダメなら実力行使だ!半世紀愛される「定刻起床装置」とは
朝日新聞指定席 『恋のヴェネチア狂騒曲』 ムロツヨシ
朝日新聞指定席 『恋のヴェネチア狂騒曲』 ムロツヨシ
PR
丸山議員「戦争」発言の罪深さ 「ビザなし...
丸山議員「戦争」発言の罪深さ 「ビザなし...
一人ひとりが「自分」でいられる神秘の島 隠岐に生きる
一人ひとりが「自分」でいられる神秘の島 隠岐に生きる
PR
「天皇決戦」叫んだ中核派、今はコミケ出展 ブースで売っていたもの
「天皇決戦」叫んだ中核派、今はコミケ出展 ブースで売っていたもの
まるで別世界!就活の格差 「懲役45年」と「1年からインターン」
まるで別世界!就活の格差 「懲役45年」と「1年からインターン」
たった4日でお年寄りに… 梅の実で作った「子ども梅」の姿が衝撃的
たった4日でお年寄りに… 梅の実で作った「子ども梅」の姿が衝撃的
国連安保理の南スーダンへの武器禁輸決議、賛成しない国の理由は?
国連安保理の南スーダンへの武器禁輸決議、賛成しない国の理由は?
Q&A
もう会うことはなくても、好きだ 1人の祝杯 夜廻り猫が描くエール
もう会うことはなくても、好きだ 1人の祝杯 夜廻り猫が描くエール
「ユニクロにメールしてみよう」から始まっ...
「ユニクロにメールしてみよう」から始まっ...
「あなたを犠牲にしないで…」 交換ノートめぐる漫画の作者に聞いた
「あなたを犠牲にしないで…」 交換ノートめぐる漫画の作者に聞いた

人気

もっと見る