連載
#1 LGBTのテンプレ考
LGBT=おネエ?めんどくさい?都市伝説? イメージを調べてみた
あなたは「LGBT」と聞いて、何を思い浮かべますか? 「新宿2丁目」や「おネエ」は誰でも聞いたことがあると思いますが、それ以外では、どんなイメージをもたれているのでしょう。まとめてみました。(朝日新聞東京社会部・原田朱美)
ここ数年、セクシュアルマイノリティの4タイプの頭文字をとった「LGBT」という言葉を、ニュースでよく聞くようになりました。「性的少数者」と同じような意味で使う人もいます。
そこで、人々が「LGBT」という言葉にどんなイメージを持っているのかを知りたいと思い、「LGBTのイメージに関するアンケート」を、先日ネット上で実施しました。
注1:正確には性的少数者は4タイプだけではありませんので、お気をつけください。
注2:アンケートはSNSで告知しただけのものですので、これをもって「社会的にこういう傾向がある」とは言えませんので、その点はご容赦ください。
800件の回答が寄せられ、うち5割がセクシュアルマイノリティ、通称セクマイの当事者でした。
回答を読んでいると、「世間からセクマイがどう見られているのか」を、当事者たちが敏感に感じ取っていることが、わかります。意見をタイプ別にご紹介します。
「昨今LGBTがブームな気もしますが、結局のところほとんどの人はセクマイを別世界のことだと信じていて、まだまだ認知度は低いと感じます」(20代、東京在住)
「当事者の自分は積極的にLGBTの情報を収集しているので、昨今の『LGBTブーム』は大きな変動のように感じています。ですが、世間のイメージは自分が思うほど変わってないのではないか?と思うときもあります」(30代、東京在住)
「少しずつ認知度は上がりましたが、LGBTという言葉が知られただけで、受け入れられないのは何も変わっていません。高年齢の方ほどこの事を理解して頂けてないような気がします。悪い事をしていないのに何か悪い事をしたような人のように対応されます」(40代、北関東在住)
LGBTという言葉を知っている人はたしかに増えたけれど、理解をしている人は必ずしも増えていない。
こういう意見がいくつもありました。
「『身近にいない』と言われる。都市伝説程度」(20代、南関東在住)といった自虐的な例えも。
また、異口同音に「大衆がもつLGBTイメージ」として例に挙がったのが、テレビのバラエティ番組でした。
「認知度は上がっていますが、知られているのは現実のLGBTというより、バラエティやコントのキャラクター(フィクション)としてのLGBT」(20代、北関東在住)
「テレビに出るLGBT(と呼ばれている方)たちはテレビ写りのよい派手な方たちばかりで、そのため人々はテレビに影響されて“LGBT=派手で個性的なオネェ”という認識を持ってしまうのでは」(20代、九州在住)
「TVでいじられていると、現実でも『いじっていい人』と思われている」(10代、東京在住)
岩手県に住むゲイの男性(20)は、
「セクシュアルマイノリティのことって、別に知らなくても不自由しませんよね。当事者が身近にいる人、または自ら興味を持って調べる人じゃないと、テレビのような面白おかしいイメージしか、もっていないと思う」
と、話します。
先日、男性が通っている大学で、知らない女子学生たちが「LGBTってゲイでしょ? ウケるわ~」と、言っているのが耳に入りました。なにが「ウケる」のか、男性にはよくわかりませんでしたが、小馬鹿にしていることだけは、伝わります。
「LGBT」という言葉だけが広まっている状況について、こう評した人もいました。
「関心が強い当事者以外は、『LGBT』から連想できるものというのはほとんどなく、その実イメージとしては空っぽなのではないでしょうか」(20代、東京在住)
「なんかよく分からないけどいちいち突っかかってくるうるさいやつら、という見方も多いように感じます」(20代、北関東在住)
「LGBT」を掲げて理解を求め、権利を主張することで、逆に「面倒な人」というくくられ方をしている、という意見も、かなりありました。
「特別な人というイメージだけが一人歩きしている感があります。触れてはいけないとか。面倒な人とか」(50代、東京在住)
「広く認知されるということは、好意的な意見と同時にアンチが出てくるものだと思っているので、そのお手本がゲイだと思っています。一番知名度が高く、ネタになっているために異質な存在だと受け取られやすく、いじめの標的になったりするのだと思います。それはLGBT全てに言えることなので、今後も波が立たないことは無いのではないでしょうか」(20代、東京在住)
ここ数年の動きを評して「LGBTブーム」と言われることがありますが、企業がイメージアップに利用しようとしているだけなのではないか、と警戒する人もいました。
「中身に乏しいままLGBTで騒ぎすぎ。特に企業」(40代、東海在住)
企業が打ち出す「支援策」「応援策」が、必ずしも当事者たちのニーズに沿っていない、という不満が背景にあるようです。
「企業のイメージアップのためにさりげなく使われていて、マーケットとして認知、消費されている商業ワードという性質が否定できません」(30代、東京在住)
「『ダイバーシティ推進』や『ダイバーシティ&インクルージョン』と打ち出す割には理解が進んでいない企業が多すぎる気がします」(20代、東京在住)
報道のあり方についても、間違ったイメージを助長していると不満が寄せられました。
「『感動ポルノ』の側面が強いと感じる。社会的に『自分より下』な人たちが、かわいそうなのに頑張っている姿が好きなのかもしれないが。かわいそうな話を取り上げるなら、同じくらい幸せな話も報じてほしい」(40代、北関東在住)
「マイノリティ=大変な人生、ドラマティックな人生、ではありません。オープンにしてたわけではありませんでしたが、周囲と変わらず恋愛して、楽しく生きてきました。自分の周りの人に感謝してます。マイノリティでいろいろ苦労した人がいることは理解できますが、それがすべてでないことも発信すべき時が来ているように思います」(40代、東海在住)
LGBTに限りませんが、当事者を「かわいそうな人」として、ドラマティックな「読み物」として、ステレオタイプに報道する例が多いのではないか、という指摘です。
祈るように、こんな意見を寄せた人もいました。
「生活水準の高い当事者に光があたることがありますが、これも、ごく一部の方々の話です。生活保護を受給し、ギリギリの生活をしている方もいらっしゃいます。セクシュアルのみならず、多数のマイノリティな部分を抱えてなんとか生きている者がたくさん存在する現実を どうか世の中へ届けていただきたいです」(30代、南関東在住)
「よくメディアに出る当事者」だけでなく、多様な当事者をきちんと見てほしい、という声は、とても重いです。
LGBTに限らず、とかく世間はイメージで人を語りがちです。
「イメージは、あくまでもイメージ。マイノリティのステレオタイプに当たる人は、決して多くない。セクシュアリティに限らず、いろんな人がいるから世界はおもしろくて美しいということを、ニュースメディアを通じて発信してもらいたい。(30代、東京在住)
「各々の中にある典型のイメージとは異なるタイプの当事者に合う、という経験の積み重ねが、人生と価値観を豊かにすると思う」(20代、東京在住)
1/11枚