路面電車に替わる都の“実験線”だった

そもそもモノレールとは、一本のレールまたは桁にまたがったり(跨座型)、ぶら下がったり(懸垂型)して、人や物を運搬する交通システムのこと。
恩賜上野動物公園にモノレールができたのは、1957年12月。日本にはそれ以前に、遊園地のアトラクションとしてのモノレールも存在していましたが、上野動物公園のモノレールのポイントは、東京都交通局が建設した“交通手段”だったこと。
当時、主流だった路面電車に代わる新たな交通手段を開発する試みで、戦後の経済発展に伴う道路混雑を解消しようと、都が計画した実験線だったのです。
定員62人の2両編成で、東園-西園間の約330メートルを1分半でつなぎました。利用者は年間100万人ほどで、入園者の3割が乗車していたといいます。
約60年の歴史の中で、67年、85年、2001年の計3回の車両の更新がありました。しかし、19年1月に経年劣化による車両故障が発生。結局、この出来事が転換点になりました。
都は車両を修理し、新たな車両の開発も検討したものの、「1本のアームでぶら下がる」という仕様はこの時点で国内唯一であり、製造には3年かかるとわかったそう。安全上の理由もあり、19年11月に運休を発表し、以来、モノレールが走ることはありませんでした。
歩行が困難な人のために、無料のシャトルバスが運行していましたが、モノレールの存続を求める声も多くありました。そこで都は旧モノレールに替わる新たな乗り物を検討することに。
22年11月に発表された東京都建設局の資料によれば、「コンパクトな乗り物(小型モノレール等)とすることを想定」。「バリアフリーに配慮し、モノレールと同等以上の輸送量で、省エネで、メンテナンス性に優れ維持管理コストも高くない」などの観点で整備されます。26年度の開業を予定しているということです。
ルートは既存のものを最大限活用し、東園の乗り場は変わらない予定。西園の乗り場は「パンダのもり」に近接しているため、パンダの成育環境に配慮し、より不忍池側に近い位置に設置する予定だとします。
元々は“実験”でも、現在は都の持ち物として、あらためて支出を抑え、収益を高めることも求められる上野動物園のモノレール。後継の乗り物がどんなものになるか、引き続き注目されています。
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