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#27 #ふしぎなたてもの

上野動物園「日本初のモノレール」物語 〝後継〟は「パンダに配慮」

上野動物園のモノレール=2018年11月21日、東京都提供
上野動物園のモノレール=2018年11月21日、東京都提供
日本で初めて開業したモノレールは「上野懸垂線」​​、つまり、上野動物園のあのモノレールです。2019年に運行を休止、そして22年11月には後継の乗り物についての方針も発表され、26年度の開業が予定されています。〝日本初のモノレール〟はなぜ誕生し、今後どうなっていくのか、東京都などを取材しました。(withnews編集部・朽木誠一郎)
 
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路面電車に替わる都の“実験線”だった

1957年、開業間近の上野動物園モノレールに搬入されたH形電車
1957年、開業間近の上野動物園モノレールに搬入されたH形電車 出典: 朝日新聞社
一般社団法人日本モノレール協会によれば、現在、日本で運行されているモノレールは全国10カ所(休止中の上野懸垂線を含む)、路線総延長で約112㎞にのぼります。

そもそもモノレールとは、​​一本のレールまたは桁にまたがったり(跨座型)、ぶら下がったり(懸垂型)して、人や物を運搬する交通システムのこと。

恩賜上野動物公園にモノレールができたのは、1957年12月。日本にはそれ以前に、遊園地のアトラクションとしてのモノレールも存在していましたが、上野動物公園のモノレールのポイントは、東京都交通局が建設した“交通手段”だったこと。

当時、主流だった路面電車に代わる新たな交通手段を開発する試みで、戦後の経済発展に伴う道路混雑を解消しようと、都が計画した実験線だったのです。

定員62人の2両編成で、東園-西園間の約330メートルを1分半でつなぎました。利用者は年間100万人ほどで、入園者の3割が乗車していたといいます。

約60年の歴史の中で、67年、85年、2001年の計3回の車両の更新がありました。しかし、19年1月に経年劣化による車両故障が発生。結局、この出来事が転換点になりました。

都は車両を修理し、新たな車両の開発も検討したものの、「1本のアームでぶら下がる」という仕様はこの時点で国内唯一であり、製造には3年かかるとわかったそう。安全上の理由もあり、19年11月に運休を発表し、以来、モノレールが走ることはありませんでした。

歩行が困難な人のために、無料のシャトルバスが運行していましたが、モノレールの存続を求める声も多くありました。そこで都は旧モノレールに替わる新たな乗り物を検討することに。

22年11月に発表された東京都建設局の資料によれば、「コンパクトな乗り物(小型モノレール等)とすることを想定」。「バリアフリーに配慮し、モノレールと同等以上の輸送量で、省エネで、メンテナンス性に優れ維持管理コストも高くない」などの観点で整備されます。26年度の開業を予定しているということです。

ルートは既存のものを最大限活用し、東園の乗り場は変わらない予定。西園の乗り場は「パンダのもり」に近接しているため、パンダの成育環境に配慮し、より不忍池側に近い位置に設置する予定だとします。

元々は“実験”でも、現在は都の持ち物として、あらためて支出を抑え、収益を高めることも求められる上野動物園のモノレール。後継の乗り物がどんなものになるか、引き続き注目されています。
 

【連載】#ふしぎなたてもの

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