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初選抜HKT48山内祐奈さん 「辞めたい」心揺らいだ時も…転機は

7月23日に発売されるアイドルグループHKT48の19枚目のシングル「半袖天使」で初選抜されたメンバーのひとり、山内祐奈さん(26)。2013年の劇場デビューから、選抜シングル発売までの期間が「4281日」とAKB48グループで最長となりました。活動の目標を見失い、「ふて腐れた」時期もあったそうですが、今は若手メンバーから親しまれています。意識を変えたきっかけや、初選抜・アイドル活動への思いを聞きました。
今回、初選抜となったのは3期生の山内さんと6期生の猪原(いはら)絆愛(はんな)さん(14)。
初選抜されるまでにかかった日数は、これまでAKB48の茂木忍さん(卒業)が加入11年目で最長でしたが、12年目の山内さんはこれを上回ります。
選抜発表は6月1日、福岡市で開かれたイベント「HKT48集会~伝えたいことがあるっちゃん~」で行われました。
「本当に名前を呼ばれたのか半信半疑でした。長くアイドル活動をしてきて、選抜で名前を呼ばれたこの時が、一番うれしかったです。久しぶりにうれし涙を流しました」
大きなステージで前列に立って歌い、踊ったことは、これまでほとんどありません。
山内さんたち3期生が劇場デビューしたのは、2013年11月。その2年前に劇場公演が始まったHKT48は、12年に指原莉乃さん、多田愛佳さんがAKB48から移籍し、上昇気流に乗りつつある時期でした。
加入当初9人いた3期生でも「なこみく」の愛称で親しまれた矢吹奈子さん、田中美久さん(ともに卒業し、俳優・グラビアモデルとして活動)が翌年3月発売のシングルでいきなり選抜入りし、人気を得ていきます。
1年に何度もあるコンサートツアー。その会場もさいたまスーパーアリーナ(さいたま市)をはじめ各地の大規模施設も多く、客席を埋めたファンの前でステージに立ちました。
「3列目ではなく、みんなが見てくれる前列で踊りたい、最初のころはそんな悔しい気持ちもありましたが、コンサートツアーをはじめ、活動がとても楽しかったです」
しかし、アイドルとしてのキャリアが長くなるにつれ、次第に目標を見失っていきます。
後輩がどんどん加入し、人気になっていく。「私はもう無理かなって。正直ふて腐れていた時期もありました」
10代の終わりから20歳のころは、山内さんにとって、精神的にもっとも厳しかったそうです。
2019年に福岡市で開かれた舞台は、第1部が48グループの人気メンバーや著名な俳優が多数出演する舞台公演。そして第2部は山内さんたちが出演したライブでした。
1部と2部の出演者で楽屋の広さが違う。何より……。
「私は当時HKT48の正規メンバーでしたが、現場のスタッフさんは一人一人のメンバーを知っている訳ではないので、ほかの若いメンバーと一緒に『研究生たち』と呼ばれていました。それを多くの出演者が聞いている。仕事として出演できてありがたかったですが、期間中、本当に精神的にきつかったです」
劇場のステージに立っても笑顔になれない。「『辞めたい』と心が揺らいだことも、正直ありました」
2020年1月、東京・神田明神で48グループの成人式典が開かれました。終了後に筆者は、長年HKT48を取材してきた地元紙の記者とともに、新成人の山内さんに話を伺う機会がありました。
「もう少し前に出られる仕事をしたい」。率直な思いを口にしていたのが心に残りました。
なぜ踏みとどまれたのでしょうか。
「ファンの方、家族の支え、ペットのワンちゃんの存在があってここまで来ることができたというのが、正直な気持ちです」
「母親とは何百回とけんかをしてきました。『あんた何してんの』と強気で言ってくることが多いので、私も負けず嫌いで、負けたくない、と思って。言われて逆に気づかされるというか。もっと頑張らないと、という気持ちになりました」
ファンの人たちはシングルの選抜発表のたびに暖かい言葉をかけてくれました。
「『大丈夫、あきらめないでね』『次に選抜に入れるように(応援を)頑張るから、謝らなくていいよ』。それがすごくうれしかったです」
コロナ禍をへて、2021年以降、メンバーの卒業が相次ぎます。
先輩の1、2期生だけでなく同期や後輩も。「自分はいつだろうなと、メンバーの卒業発表を聞くたびに思うと同時に、辞めるからには次の目標が出来たのだろうからそれを応援したい、と思っていました」
そんな山内さんに次第に心境の変化が訪れます。
「ただ活動を続けるだけでなく、この世界にいる限り、強みが欲しい。HKT48でトークが上手なメンバーがどんどん卒業していたので、そこを、もっと出していけたらと、急に思い始めました」
ステージでは、どちらかというと笑顔が少ない印象ですが、自宅ではよくしゃべるそうです。
その個性を出せるように、テレビのお笑い番組も参考にしながら、ファンや劇場を訪れた人をトークで楽しませることができるようになるか、自分なりに研究したそうです。
次第に、後輩、とくに高校生や中学生の若いメンバーが「いじってくれる」ようになりました。
所属するチームHの劇場公演では、今やトークで欠かせない存在になりつつあります。
山内さんからみて、現在のHKT48はどう映っているのでしょうか。
「やっぱり以前がすごすぎたし、今それを越えたいと思っても正直難しいです。でも、以前とは全然違うHKT48だけど、今は今ですごく輝いていると思っています。だからこそ多くの方に知ってもらいたいです」
26歳になったばかり。いつ卒業を意識しそうか尋ねてみると、ポジティブな言葉がかえって来ました。
「いつ辞めるとか、今はそういうことを考えず、今を楽しんで自分がやりきったと思えた時なのかな」
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