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唐揚げ1個「寂しい」の声 物価高…予算にシビアな給食作りの現場

メインのおかずは、唐揚げ1個――。「寂しい」という声が上がるなど、福岡市の給食が話題になりました。自身も食べ盛りの子どもを育てる記者は、予算を切り詰める給食づくりの現場を取材しました。その取材を振り返ります。(朝日新聞記者・城真弓)
話題になった給食のメインは、唐揚げ1個。あとは、ご飯と汁物、牛乳だけ――。
福岡市学校給食公社が公開している、ある日の献立の画像はかなり衝撃的でした。
福岡市側によると、唐揚げは通常の2個分のサイズで、給食全体のカロリーも目標を満たしているとのこと。
しかし、画像の唐揚げは小さく見え、「皿にぽつんと」感が強く感じます。SNSにも投稿され、「寂しい」などの反応が出ていました。
「唐揚げ1個の給食」について記事で配信したところ、反響は大きかったです。
福岡市の高島宗一郎市長は市議会で「(画像は)私もショックでした」と語り、今後は給食の見栄えなども意識し、予算面でバックアップするとも約束しました。
7月上旬には改善をめざすためのプロジェクトが開始し、料理研究家らから評価する声や助言がありました。順次意見を反映していくといいます。
物価高騰の中、給食の献立作りはどの自治体も苦労しています。
実は6年前、記者は北九州市の給食の取材で、その献立の少なさに驚いた記憶があります。
北九州市は今回、取材依頼に応じて、献立検討会議の様子を初めて公開しました。
市は給食費を上げずに質を充実させようと、昨年度から「おいしい給食大作戦」と銘打った取り組みを始めていました。
献立検討会議では、野菜を1グラム単位で調整したり、安い食材を探したりし、苦心する栄養士の姿を目の当たりにしました。
ショウガ、ニンジンを1グラム単位で調整し、価格・塩分が高いベーコンをやめて鶏肉に変更――。
市教育委員会の栄養士がキーボードをたたいてカロリーを計算します。
カロリーは「いい線いってる」けれど、1人1食の単価が目標を0.5円オーバー。また作り直しになりました。
栄養価、バランスだけでなく見た目、子どもたちの満足度も大切です。北九州市で食べ盛りの子どもを育てる親として、感謝の念がこみ上げました。
北九州市の給食は1食250円(保護者負担分)で、市による物価高騰分の補塡(ほてん)はあるものの、今後はフルーツが半分になる可能性もあるそうです。
印象に残ったのは、「学校給食自体が教材」という栄養士の言葉でした。
季節の食材や地域の食材を入れる「食育」という観点です。
250円(と物価高騰補塡分)でここまで考えた食事を作る自信は私にはありません。
福岡市は今後、給食を無償化するなど、自治体によって様々な動きがあります。各地の給食がどうなるか、今後も取材を続けたいと思います。