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#8 プレ親の質問箱

「つわりは気分の問題でしょ」と言われたら…専門医「違います」

「妊婦のつわり」についての取材リクエストを頂きました。※画像はイメージ
「妊婦のつわり」についての取材リクエストを頂きました。※画像はイメージ 出典: Getty Images

目次

取材リクエスト内容

妊娠中の体調不良で有給を使った欠勤の連絡をしたら、女性上司から「つわりは病気ではない」「気分の問題でしょ、がんばって出勤して」と言われました。そういうものなのでしょうか。 まる

記者がお答えします!

妊婦のつわりについての取材リクエストを頂きました。妊娠やつわりは「病気ではない」と言われることがありますが、実際にはもちろん、妊婦の体に大きな変化が起きています。「気分の問題」では済まない不調について、専門医に話を聞きました。(朝日新聞デジタル機動報道部・朽木誠一郎)

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「普通ではないし、不調を伴う」

妊娠中には妊婦さんの体にさまざまな変化が起きます。その一つが「つわり」です。日本産科婦人科学会の『産婦人科診療ガイドライン産科編2020』では、つわりすなわち妊娠初期の悪心・嘔吐は、半数以上にみられるとされています。

しかし、このつわりや妊娠自体は、しばしば「(つわりや妊娠は)病気ではない」と言われることがあります。また、時にそのような言葉が、妊娠中の体調不良に悩む妊婦さんに無理をさせる方向に使われることもあります。

『産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK』などの著書がある産婦人科専門医の宋美玄さんを取材しました。宋さんは「(つわりや妊娠は)当然、普通の体の状態ではないし、不調を伴うものです」とします。

そもそも「(つわりや妊娠は)病気ではない」と言われるのは、お腹が大きくなったり、悪心・嘔吐があったりすることは、体の中で赤ちゃんを育てるための正常な体の変化であり、「病気ではない」と伝えて妊婦さんを心配させないため、という意味合いがある、と宋さん。

また、正常な妊娠・出産は保険適用外であるため、制度の説明の際にも「病気ではない」と言われることがあります。(※妊娠高血圧症候群や後述する妊娠悪阻は妊娠に伴う病気であり、その治療は保険適用。)

「ただし、だからと言って『普通』の状態ではありません。程度の差はあれ、気持ち悪くなったり、実際に吐いてしまったりという不調を伴っています。よく『常に二日酔いのような状態』と例えられることがありますが、それは到底、『普通』ではありませんよね」

重症化すれば「病気」に

そして飲まなければ防げる二日酔いと違って、妊婦さんがつわりを防ぐのは難しいことです。実は、つわりの原因やメカニズムは、医学的に十分に解明されていません。胎盤の絨毛という部分から分泌されるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)などのホルモンが関係しているとされますが、対処法は確立していないのです。

前述したガイドラインでも、「心身の安静のために休養を取ることが症状緩和につながることなどを説明し​​、少量頻回の食事摂取と水分補給を促す」とされています。

「そんな状態の妊婦さんに『病気ではない』と伝えて無理をさせるのは酷なことです。心身の安静により改善することがありますが、実際に体に変化が起きている以上、『気分の問題』とは違います」

人によって、また同じ人でも日によって、妊娠時期によって、軽かったり重かったりと多様な不調を伴うことも、周囲に理解されにくい原因になっている、と宋さん。

「しかし、つわりは重症化することがあります。『妊娠悪阻(おそ)』と呼ばれる状態になると、これは病気です。つわりについては定期の妊婦健診の際や、ひどい場合はかかりつけ医を受診して、相談するようにしてください」

ちなみに、多くは安定期に入るとなくなるつわりのような症状が、妊娠後期に入ってまた現れることを俗に「後期つわり」と言うことがありますが、これは医学用語ではなく、その原因やメカニズムも別と考えられているということでした。

「母健連絡カード」活用して

宋さんは、職場などで妊娠中の体調不良に理解が得られない場合などでは「『母健連絡カード』を活用して」とします。

「母健連絡カード」は、医師などが女性労働者に指示したことを、事業主に適切に伝達するためのツールです。働く妊婦さんが医師などから「通勤緩和」や「休憩」などの指導を受けた場合、その指導内容を事業主に的確に伝えられるようにするために利用するものとされます。

「母健連絡カード」(母性健康管理指導事項連絡カード)について
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/renraku_card/

女性労働者から「母健連絡カード」が提出された場合、事業主は記載内容に応じた適切な措置を講じる必要があることが、法律により定められています。

これまで、働く妊婦さんからも多くの相談を受け、母健連絡カードを発行してきたという宋さんは「周囲の理解が得られないことがストレスとなり、つわりが悪化してしまうこともあります。つらいときは無理せず、医療者に相談していただければ、力になれることがあります」としました。

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