身近にあるハムやチーズといった加工食品。美味しく手軽なためすっかり生活に馴染んでいますが、実はその中には、妊娠中に注意が必要な病原体が増殖しやすいものが含まれています。
厚生労働省を取材しました。同省は
啓発パンフレットなどで妊婦の加工食品の食べ方についての注意喚起を続けています。同省が対策を呼びかけるものの一つが「リステリア菌」という食中毒菌です。
リステリア菌は食品を介して感染する食中毒菌で、「塩分に強い」「低温に強い(冷蔵庫の中でも増殖する)」という特徴があります。健康な成人であれば賞味期限や保存方法を守っている限り問題ないとされますが、妊婦は少量のリステリア菌でも食中毒を発症したり、重症になったりすることがあるとわかっています。
また、妊婦がリステリア菌に感染すると、菌が胎盤や胎児へ感染(母子感染)し、流産することや生まれた新生児に影響が出ることがあります。
そして、このリステリア菌が増殖しやすいのが「加熱殺菌していないナチュラルチーズ※」「生ハム」「肉や魚のパテ」「スモークサーモン」といった食品です。これらの食品の特徴は、冷蔵庫で長期間に渡り保存され、加熱せずそのまま食べられること。リステリア菌による食中毒を避けるため、妊娠中は控えることを厚労省が勧めています。
※ナチュラルチーズは「乳、クリーム、バターミルクまたはこれらを混合して凝固させた後、ホエーを除去して製造されたもの」。プロセスチーズは「ナチュラルチーズを粉砕、加熱融解して乳化したもの」。プロセスチーズは製造過程で加熱されるため、食中毒のリスクは低くなる。
厚労省の担当者によれば、リステリア菌による食中毒についてパンフレットを作るなどして呼びかけをする理由は、母子感染が起こり得て注意が必要なため、ということでした。