妊娠中には妊婦さんの体にさまざまな変化が起きます。その一つが「つわり」です。日本産科婦人科学会の『産婦人科診療ガイドライン産科編2020』では、つわりすなわち妊娠初期の悪心・嘔吐は、半数以上にみられるとされています。
しかし、このつわりや妊娠自体は、しばしば「(つわりや妊娠は)病気ではない」と言われることがあります。また、時にそのような言葉が、妊娠中の体調不良に悩む妊婦さんに無理をさせる方向に使われることもあります。
『産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK』などの著書がある産婦人科専門医の宋美玄さんを取材しました。宋さんは「(つわりや妊娠は)当然、普通の体の状態ではないし、不調を伴うものです」とします。
そもそも「(つわりや妊娠は)病気ではない」と言われるのは、お腹が大きくなったり、悪心・嘔吐があったりすることは、体の中で赤ちゃんを育てるための正常な体の変化であり、「病気ではない」と伝えて妊婦さんを心配させないため、という意味合いがある、と宋さん。
また、正常な妊娠・出産は保険適用外であるため、制度の説明の際にも「病気ではない」と言われることがあります。(※妊娠高血圧症候群や後述する妊娠悪阻は妊娠に伴う病気であり、その治療は保険適用。)
「ただし、だからと言って『普通』の状態ではありません。程度の差はあれ、気持ち悪くなったり、実際に吐いてしまったりという不調を伴っています。よく『常に二日酔いのような状態』と例えられることがありますが、それは到底、『普通』ではありませんよね」