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連載

#6 役所をやさしく

日本人の私が「外国人」だった時…職員の気づき #役所をやさしく

「言葉できる人と来て」と言われて落胆

イラスト・逸見恒沙子
イラスト・逸見恒沙子

「やさしい日本語」というと、外国人のためのことば、というイメージかもしれません。
でも、立場が変わり、違った方向から見ると、「外国人のため」という概念は単なる思い込みだったことに気づかされます。公務員が、役所を離れ、子育てしてみて、見えた景色。気づいたのは「役所言葉」は日本人にとっても難しいのではないか?ということでした。
「やさしい日本語」での改革を進める神戸市職員のつぶやきを聞きながら、さまざまな国のルーツの人が一緒に暮らす時代を考えます。

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定期券を買う。それだけのことが恐怖

神戸市の「やさしい日本語推進プロジェクトメンバー」の一員だった浅井さんは、この夏第二子が産まれたことを機に、育児休業中。ある理由から、神戸市の「やさしい日本語」推進に並々ならぬ熱意を持ってきました。

〈浅井さん〉
神戸市市長室国際部国際課。プロジェクトの推進は気になりつつも、この夏第二子が産まれたことを機に、現在育休(5ヶ月)を取得中。 多文化共生が趣味の「多文化共生モンスター」。学生時代はフランスに留学、現在は韓国語を勉強中の語学好き。

〈神戸市国際課・浅井さん(育休中)のつぶやき〉

「言語オタク」と自認する私は学生時代、フランスに留学していました。

留学の苦労は日々の勉強よりも、日常生活でした。フランスでは、日本語はもちろん、多言語での情報発信は重視されていませんでした。外国人に配慮した「やさしいフランス語」という概念も、存在すらしていなかったんだろうと思います。

だから、トラム(路面電車)の定期券を買う。たったそれだけのことが恐怖でした。日本とは全く異なるシステムで想像がつかない。フランス語の聞きとりに四苦八苦している私に雨あられのように言葉を浴びせられ、辞書を片手に格闘した苦悩の日々が思い出されます。

そんな苦労をした私だから、「やさしい日本語」の大切さがよくわかります。それを取り入れようとするのは、「共生社会を築こう」という想いが込められていること。

イラスト・逸見恒沙子
イラスト・逸見恒沙子

……もぞもぞ。げっぷ。ふぅ~、ようやくミルクの後のげっぷが出ました。

育児休業中にも関わらず、つい熱くなってしまいました。このタイミングでプロジェクトに関われていないことはとても残念。

でも、子育てに関わったからこそ、見えてきた部分もありました。

忙しい育児の合間に、手続きのために役所に行くことも増えました。普段は気にしなかった役所の文書にじっくりと向き合ってみると……、分かりにくい!

例えば第二子の保育園入所の手続きに必要な書類に目を通すと、「認定申請」や「利用調整」など聞きなれない独特の言い回しの数々……。改めて役所の文書は、日本人の自分から見ても分かりにくい!

もし、日本語に慣れていない外国人だったら、一層大変だろうな……。

育休中に仕事への想いをフル充電しておくので、復帰後はお任せください。

だから推進チームの中井係長! 飲んで、愚痴っている場合ではありません。日々、「やさしい日本語」を推進してもらわなくては困りますよ!

「免除」と「納付猶予」

「やさしい日本語」を推進する神戸市中央区では、小澤係長がやさしい日本語推進プロジェクトに参加しました。「やさしい日本語の大切さ」を痛感しているひとりでした。

〈小澤さん〉
中央区役所総務課サービス向上担当係長として着任した新米区役所職員。疲れた頭と体をコンビニアイスで癒すのが日課。

〈中央区総務課 小澤係長のつぶやき〉

私も留学先の役所に初めて行ったとき、早口でまくしたてられた挙句「〇〇語がちゃんとできる人と一緒に来て」と冷たく追い返され、とぼとぼ帰った記憶があるんです……。でも、その悔しさが、現地の言葉を学ぶモチベーションになったのも確かでした。

そう考えると、以前、ベトナム人職員のダンさんも言っていたとおり、やさしい日本語プロジェクトは外国人に配慮しながらも、日本語も勉強して日本社会に馴染んでもらいたいという想いが伝わる取組みですね!

今年11月から初めての区役所勤務で、各課が作っている市民向けパンフレットで勉強しているけれど、やっぱり行政用語は難しい。

問題です。年金の「メンジョ(免除)」と「ノウフユウヨ(納付猶予)」はどういう意味?
公務員人生が10年を超える私も、答えに苦慮しました……。

イラスト・逸見恒沙子
イラスト・逸見恒沙子

日本語に慣れていない人なら、長い文章を読むだけでも大変ですよね。

正確に伝えるには、言葉選びだけではなく、思い切って本当に重要な情報だけに絞るということも必要なのかもしれない。それは制度や大切なことを十分に理解した上でなければできないこと。私も勉強に励みます!

ちなみに先ほどの問題の答えですが、もし「やさしい日本語」にすると…。

免除=「いまは払わなくていいです。あとで払うことができます。払わなければ、もらえる年金が減ります。」
納付猶予=「いまは払わなくていいです。あとで払うことができます。払わなければ、もらえる年金がもっと減ります。」

う~ん、これでは、まだやさしくないんだろうなぁ。図などで説明するしかない。いやぁ、やさしい日本語、難しい。

「わかりやすい」に外国人も日本人もありません。やさしい日本語が広まることで、外国人、日本人問わず、住民サービス向上につながるといいなぁ。

 

これは神戸市とwithnewsの共同企画です。
小難しい「お役所言葉」を、誰にでも分かりやすい「やさしい日本語」にしたい。

神戸市の若手や外国人職員が中心になって立ち上げた「やさしい日本語推進プロジェクト」で、さまざまな声の板挟みになる現場や外国人の「本音」を紹介していきます。

本当に役所は「やさしく」なるのか。毎週金曜日に配信予定です。
 
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