連載
#3 役所をやさしく
20回説明しても伝わらない日本語って何なんだ? #役所をやさしく
規格外の公務員、トレーニング中の気づき
シンプルでわかりやすい「日本語」を使って、日本語にまだ慣れていない外国人にも情報を提供する「やさしい日本語」。
「小難しい」言葉の代名詞ともいえる「お役所言葉」もやさしくするべく、ある自治体が本腰を入れました。やさしい日本語の「発祥の地」ともいえる、神戸市です。
しかし、若手や外国人職員の推進チームの前に立ちはだかったのは「慣例の壁」。健康保険をどう説明すればわかりやすいのか。頭を悩ませるのは、表の顔は公務員、裏ではSASUKE完全制覇を目指しているマッチョな北風さん。公文書は「完全制覇」できるのか?
役所内のさまざまな声の板挟みに、ふと漏らした本音には、さまざまな国のルーツの人が当たり前のように一緒に暮らす時代への、ヒントがあるかもしれません。一緒に、のぞいてみませんか。
【前回までのあらすじ】
外国人職員の経験を聞いて、家に届く「恐怖の通知文書」の存在に気づいた神戸市職員。そこで、郵送される「国民健康保険の更新のお知らせ」や、窓口で渡す「国民年金、国民健康保険」の説明書きを、外国人にも分かりやすい「やさしい日本語」にしようと、奮闘を始めました。
「そもそも、外国人に分かりやすい文書って、どんなものだろうか……」
中央区役所で国民年金の事務を担当する北風さんは、考えていました。
北風さん
北風さん
〈北風さん〉
世界165の国と地域で放送されているスポーツ特別番組“SASUKE”。その実力派チーム山田軍団‘黒虎’の一員。
SASUKE完全制覇のため、筋力を高める毎日のトレーニングを欠かさない。
趣味の将棋ではアマチュア五段で全国大会にも2回出場。神戸市役所の将棋部前代表。大手監査法人勤務後、26歳の時に神戸市役所へ転職、本庁各部署を経験後、現在は中央区役所保険年金医療課の年金担当をしている異色の公務員。
「やさしい日本語」推進プロジェクトにより“やさしい日本語”が市役所内を‘完全制覇’することを期待している。
神戸に住む外国人向けの日本語学習支援の充実に日々尽力している日本語教師の尾形さんでも、外国人に分かりやすい文書を作る難しさを改めて実感していました。
尾形さん
〈尾形さん〉
神戸国際協力交流センター・総括コーディネーター兼地域日本語教育コーディネーター 。
日本語教育に関わって、早や四半世紀!「少女老いやすく学成り難し」たぶんあの世に行くまで学び続けるのだろうと思う今日この頃……。
南国土佐を後にして数十年経っているのに、未だハチキン魂が抜けず、戦うコーディネーターとして、日々奮闘中。
少しずつ、目指すべき「公文書」の形が見えてきた「神戸市やさしい日本語推進プロジェクト」のメンバー。
やさしい日本語は「新しいチャンネル」。一方で、「やさしい日本語に正解はない」という言葉にも行き当たります。
「やさしい役所」を目指し、日本人担当者と外国人職員の意見交換・苦悩は続いていきます。
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