連載
#2 役所をやさしく
ひとりぼっちの家に届いた恐怖の通知 #役所をやさしく
「33年の公務員人生、初めての発注」
シンプルでわかりやすい「日本語」を使って、日本語にまだ慣れていない外国人にも情報を提供する「やさしい日本語」。
「小難しい」言葉の代名詞ともいえる「お役所言葉」もやさしくするべく、ある自治体が本腰を入れました。やさしい日本語の「発祥の地」ともいえる、神戸市です。
しかし、若手や外国人職員の推進チームの前に立ちはだかったのは「慣例の壁」。年金、医療、公文書・・・。本当に役所は「やさしく」なるのでしょうか。
役所内のさまざまな声の板挟みに、ふと漏らした公務員のつぶやき。その本音には、さまざまな国のルーツの人が当たり前のように一緒に暮らす時代への、ヒントがあるかもしれません。一緒に、のぞいてみませんか。
【前回までのあらすじ】
中央区役所で行われた神戸市「やさしい日本語」推進プロジェクト第1回検討会議。中井係長は、やさしい日本語の有効性に一抹の不安も抱えながらも、ベトナム人職員ダンさんの励ましもあり、とにかく一度やってみようということになりました。
「やさしい日本語」に置き換える文書を何にするか。「どんな文書が難しかった?」。中井係長はこのプロジェクトの外国人メンバー、中国人職員・呂さんの意見を聞いてみました。
呂さん
〈呂さん〉神戸市役所 市長室 国際部国際課。中国人。今年神戸市内の大学を卒業後、就職先が、新型コロナの影響で内定取り消しとなった。神戸市の緊急雇用対策により、4月に神戸市職員として採用され、現在は中国語翻訳や多文化共生関連の業務に携わっている。漢字圏の外国人代表としてプロジェクトに参加。
「外国人に分かりやすい文書」。言うのは簡単ですが、それを実際に作ろうとするとちょっと状況は違います。なにがやさしくて、何がやさしくないのか。
現場となった中央区役所では、「国民健康保険・国民年金手続きメモ」との格闘が始まりました。担当の田中係長からは「苦悩のつぶやき」が漏れます。
中央区保険年金医療課の田中係長
〈田中係長〉神戸市中央区役所 保険年金医療課 国保年金係長。今年4月から配属。区役所窓口の最前線で、日々国民健康保険・国民年金業務に従事。プロジェクトにはモデル職場の代表として参加し、現場の意見も反映しつつ、今回やさしい日本語の実践を試みる。
中央区を後にした中井係長は、プロジェクトの取組み内容がとりあえず決まって安堵しながら、職場に戻る道を歩いていました。
神戸市国際課・中井係長
〈中井係長〉酒好き。神戸市役所 市長室 国際部国際課。やさしい日本語推進プロジェクトの中心的役割のはずなのに、落ち込みがち。
ベトナム人職員のダンさん
【本日のベトナム人職員・ダンさんの励まし】
「Từng bước, từng bước.(step by step)」
〈多文化共生専門員 ダン〉ベトナム人。来日9年目。神戸市役所 市長室 国際部 国際課 多文化共生専門員。神戸市ベトナム語版Facebookの開設・運営など、外国人の視点から神戸市の多文化共生関連事業に携わる。プロジェクトでは、自分の経験に基づき、外国人に求められる情報ややさしい日本語について監修。
ダンさんのコラムは、神戸市ベトナム語版Facebookで読むことができます。
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