IT・科学
東京に雪!スノーボードや屋台で楽しみながら…主催者が伝えたいこと
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東京・代々木公園に雪が降り、ソリで遊んだり、スノーボーダーの華麗な技を見たり、ライブを楽しんだりできる……。そんなイベント「東京雪祭」が11月8、9日に15回目の開催を迎えます。主催者は「この15年で〝冬の到来を告げるイベント〟として定着してきましたが、実は10年ぐらいでクローズするはずでした」と語ります。いったいなぜなのでしょうか?(朝日新聞withnews・水野梓)
11月8、9日、東京・代々木公園で開かれる「東京雪祭2025」。主催するのは一般社団法人「SNOWBANK」です。
2011年から「楽しいから始まる社会貢献」として、スノーボード大会やライブ、屋台といった企画と、日本骨髄バンクのドナー登録ができる登録会や献血を、関係団体と連携して開催してきました。
今年は献血400人・ドナー登録100人を目指していますが、SNOWBANKの代表・荒井DAZE善正さんは「とはいえ無理強いはしません。会場で楽しんでくれるだけでも、献血やドナーを必要としている人たちの力になります」と話します。
そんな荒井さんはプロのスノーボーダーとして活躍していた2007年、27歳のときに100万人に1人とも言われる難病「慢性活動性EBウイルス感染症」を患いました。
骨髄移植が必要となりましたが、なかなかドナーが見つからず、半年待ち続けました。
その後、ドナーが見つかって移植を受け、42度の高熱といった過酷な拒絶反応にも耐え、回復しました。
誰かが骨髄移植が必要な病気を宣告された時に、ドナーが100人、1000人といるような社会にしたい――。
そう考え、「すべての患者が、骨髄移植のスタートラインに立てる社会を創る」をスローガンにSNOWBANKを立ち上げたそうです。これまで1万人を超える人が献血に協力しています。
荒井さんのもとには、患者やその家族からも連絡が寄せられます。ことし3月に開いた音楽イベント「THE BANK」では、同じ病気の男性とライブ会場を電話でつなぎ、遠隔で楽しんでもらいました。しかし治療のかいなく、男性は亡くなったといいます。
荒井さんは「これまで活動してきてさまざまな患者さんと関わりましたが、同じ病気で亡くなってしまった人も多くいます。自分が助かったのは稀なことだったんだと痛感しています」と語ります。
しかし、白血病などで骨髄移植を必要とする患者は年2000人ほどいるにも関わらず、移植を受けられたのは半数ほどにとどまります。
「本当は10年ぐらいで、移植を望む人が治療できる社会になって、SNOWBANKの活動がいらなくなって解散する……と考えていたんです。〝冬の到来を告げるイベント〟として定着してきましたが、15年もやるとは思っていなかったというのが正直なところです」と語ります。
一方で、SNOWBANKの設立後に生まれたスノーボーダーたちもイベントに参加するようになって、「このイベントの意義を理解して、SNSでシェアしてくれる10代の選手も多いので、うれしいですね」と語ります。
荒井さんは「僕が患者さんを救えるわけじゃない。だからこそ活動を続けて、病気になってもこんな風に元気になった人がいるという姿を見せていきたいです」と語ります。
15回目ともなると、イベント参加のリピーターも増えてきますが、「新規参加者を増やして、ドナー登録者の目標を達成したい」と考え、企画は年々ブラッシュアップされています。
荒井さんは「献血は予約制なので、何度も参加している人たちはすでに午前中に献血を予約して、それから飲んで食べて遊ぶ予定みたいです。献血した人にはブースでいろんなプレゼントがもらえるので、子どもが『お父さん献血してきて』と言ったりしてますよ」と笑います。
そして、都心で生まれ育った子どもたちにとっては、初めて雪遊びをする機会にもなっているそうです。
「自分が病気になって骨髄移植が必要だったとき、スノーボーダーの仲間たちが献血したりドナー登録したりして励ましてくれました。この雪遊びをきっかけに、スノーボードに興味を持ってもらって、スノーボード業界へも恩返しがしたいと思っています。ぜひ多くの人に気軽に楽しんでもらいたいです」と話しています。
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