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孤独に耐えたYouTuber、見つけた理解者 ベルを鳴らして#4
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私には、不登校の経験があります。中学時代の嫌がらせをきっかけに、つらくてどうしても学校へ行けなくなってしまいました。家に引きこもり、睡眠や好きな読書で現実逃避をしてなんとか過ごす日々。
誰とも関わりたくない。信じられない。
なのに、ふとした瞬間に「このつらい気持ちを誰かに理解してほしい」という思いが押し寄せる時がありました。
「YouTube革命 メディアを変える挑戦者たち」(文藝春秋)という本に、面白い調査結果が載っています。
私は、「なぜYouTuberが10代に人気なのか?」という質問の答えは、「YouTuberは理解者であるから」だと思っています。
誰にだって、どこかに安心できる場所がほしいし、自分のことを知ってほしいと思う気持ちがあるはずです。
でもまだ10代。家や学校にいづらくなった時、理解者を探すことはとても難しいと思います。
私もそうでした。インターネットは使っていましたが、今のように、関わる相手がどんな人なのかを詳しく知ることはできませんでした。暇つぶしにはなっても、憧れや希望を持ったことはありません。
でも、今は変わってきています。
「誰もわかってくれない」という孤独にひたすら耐える必要はないのです。
「You don't have to see the whole staircase just take the first step.(階段の上まで見えなくていい。とりあえず一段登ろう)」
“I Have a Dream”の演説で有名なキング牧師の言葉です。
私はこの言葉をYouTuberから知りました。
私がYouTuberになる前から憧れているクリエイター“バイリンガール英会話”チャンネルのちかさんです。
まだ“YouTuber”という言葉ができる前から、英会話のコツや楽しさを発信し続けています。今では押すに押されぬトップクリエイターです。
嫌なこともあるだろうに、それを見せない強さと賢さを持ちます。さらに視聴者を優しく巻き込む姿。
「私はこういう人になりたい」と強く思いました。ちかさんは、英語に乗せながら、結婚や出産をはじめとして生き方そのものを発信しています。
中でも就職をテーマにしたエール動画に感動し、キング牧師の言葉も合わせて胸に刻んでいます。
Instagramを開いてみてください。
コンプレックスだった体形を強みとして、おしゃれな写真で大人気のクリエイターがいます。
YouTubeを開いてみてください。
ジェンダーレス文化を広めて、男子のメイク術を披露するクリエイターがいます。
今は、マニアックな趣味や専門的な情報を発信するYouTuberも増えています。
“予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」”通称“ヨビノリ”のたくみくんは、高校から大学レベルの理系の授業動画をアップするYouTuber。難しい分野ですが、着実にファンを増やし、理系の視聴者からの厚い信頼を得ています。
クリエイターへの共感はもちろん、そのファンも似たような価値観を持っている人が多いです。
身近で自分らしい生き方をしている人って尊敬しますよね。
私は、こういった憧れや共感を持てる人が“理解者”なのだと思います。
好きなゲーム、音楽、ファッション、なんでも良いです。検索してみるだけでたくさんの可能性が広がっています。
私は、大人になってからやっと気の合う人を見つけることができました。
中高生の時よりも、たくさんの人に出会える環境になったからです。
広いものの見方になったことで、実は家族も最大の理解者だったことに気づきます。
理解者は必ずいる。
元気になった私は、趣味の読書や美術について魅力を発信して、一緒に楽しめる場所がほしいと思いました。YouTuberを始めてみたところ、今私には2万5千人以上の“理解者”がいます。
「ベルさんと出会えて人生が楽しくなった」「お悩み相談配信のアドバイスどおり告白したら成功しました!」とうれしいコメントをくださる視聴者の方もいます。お互いがお互いの理解者になれるすてきな瞬間です。
この夏、私は初めての交流会を開きました。視聴者さん同士の絆の深さを肌で感じた瞬間です。参加者は中学生1年生から50歳以上まで。普段出会えないような人たちと、たくさんの価値観をわかちあえる機会になったのではないかなと思っています。
今日もどこかで誰かが、たくさんのメッセージを届けています。YouTubeでもTwitterでも構いません。言いにくいことはいったん置いてみて、好きなことを一緒に話してみましょう。それが階段を一段登ることだと思います。
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メイクの仕方を教えてくれたり、実験をしたり、モノマネをしたり……「好きなことで、生きていく」YouTuber。明るく楽しい印象ですが、過去は楽しいばかりではありません。
コラム「ベルを鳴らして」では、文学YouTuberベルさんが、自身の過去といまを語ります。
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