MENU CLOSE

連載

#41 #withyou ~きみとともに~

不登校だったYouTuberが「逃げた場所」 ベルを鳴らして#3

文学YouTuberのベル(ベルりんの壁)さん
文学YouTuberのベル(ベルりんの壁)さん

目次

ごきげんよう、ベルです。きょうも本を読む文学YouTuberです

【PR】指点字と手話で研究者をサポート 学術通訳の「やりがい」とは?

 読書が趣味の私ですが、一番本を読んでいた時期は10代です。

 私は中学2年生の嫌がらせをきっかけに3年生で不登校になりました。

 そんな時に、梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」(新潮文庫)という本に出会います。

文学YouTuberのベル(ベルりんの壁)です。「美女と野獣」のベルから名付けました。読書が好きで、動画で本を紹介しています。棚にも本がたくさん
文学YouTuberのベル(ベルりんの壁)です。「美女と野獣」のベルから名付けました。読書が好きで、動画で本を紹介しています。棚にも本がたくさん

 主人公の女子中学生“まい”も不登校。休養をとるため、おばあちゃんの家で生活する様子を描いたお話です。

 “西の魔女”と呼ばれるおばあちゃんの元での魔女修行をする“まい”。修行内容は、「規則正しい生活」と「何でも自分で決めること」。

 “まい”は、悩みながらもだんだんと自分らしさを取り戻していきます。

 私は、特別な環境にいる“まい”が羨ましくて仕方ありませんでした。

 私も逃げ場所を探していたのに、現実はあまりにもかけ離れていたからです。


(読書感想文のおすすめ本としても紹介しています)

第一の逃げ場所「家」

 その頃の私は、学校に「行きたくても行けない」状態が続き、引きこもり生活がスタートしていました。今思うと、身体が危険サインを出していたのだと思います。

 まずの逃げ場所は家になりますが、家族もこの状況をすぐに受け入れることはできませんでした。心配する気持ちよりも残念がる気持ちを大きく感じました。大事な受験期に、どうにか出席や成績を保ちたいという焦りもあったと思います。

中学時代、受験用に撮った写真です
中学時代、受験用に撮った写真です

 日の出ているうちは、学校へ行けないことへの罪悪感が押し寄せました。動けないのに、考え事だけがぐるぐる回って耐えられません。
 何も感じないようにとにかく寝ました。1日10時間以上寝ていたと思います。
 夜や土日は少し気持ちがましになったため、昼夜逆転の生活リズムに変化していきました。

 西の魔女がいたら、規則正しく生活できたかな?

第二の逃げ場所「保健室」

 欠席が続くと、保健室や相談室へ通うことを勧められました。第二の逃げ場所候補です。

 でも、保健室登校をする生徒会長がどこにいるというのでしょうか。私にとっては、教室へ通うよりきつい選択でした。それでも出席日数を稼ぐため、たまに通うようになりました。

MCを務める #部活ONE! のスタジオで撮った写真です。今の方が青春しているかもしれません
MCを務める #部活ONE! のスタジオで撮った写真です。今の方が青春しているかもしれません
 保健室の先生は感じが良かったため、ありがたかったです。でも、私の“自分で決める力”は弱っていました。よく考えもせずに、言われたことを聞いていたように思います。

 「生徒会活動は、裏方を手伝ったらどう?」
 自分の立場に責任を感じて、できることは全て担当しました。

 「修学旅行は一生の思い出に残るよ」
 なぜか参加しました。結局貧血で倒れて台無しにした覚えがあります。

 今では、そこで力を使う必要はないとわかります。
 保健室の先生も、やっぱり学校の人。

 断れない性格だった私は、“学校の見せ方”のために利用されていたのかもしれません。

 西の魔女がいたら、自分で決められたのかな?
 

第三の逃げ場所「相談室」

 相談室は、第三の逃げ場所候補でした。学校とは関係ない専門的なカウンセラーのいる場所です。若くて賢い女性で、秘密も守られました。自分の体調と合えば、2週間に1回の来校を楽しみにしていました。

 相談室は、合うか合わないかを確かめるくらいの気持ちで試してみても良いかもしれません。


(“かがみの孤城”では、不登校の生徒たちが頼りにするカウンセラーが登場します)

 相談室は、気分転換に行く場所です。何か変わるきっかけがあったらラッキー程度。

 でも私は、自分も学校も変わらないことに焦っていました。

 私はずっと、不登校の解決策は、学校へ完全復活することだと思っていました。
 そう思っている大人がとても多いからです。

 学校にある相談室へ行く度に「学校さえなじめないなんて、これから生きていけない」「私は頑張っていなければ存在してはいけない人間だ」と責め続ける気持ちを大きくしてしまいました。

 カウンセラーの先生は、学校へ提案をしてもなかなか伝わらずに悩んでいたようです。翌年から中学校のカウンセラーを辞められました。

まともに過ごせた逃げ場所「塾」

 ぎくしゃくした雰囲気の家、見るのも嫌な学校以外で私がなんとかまともに過ごせたのは、塾だったと思います。

 私は元々同じ学校の生徒がいない個別指導の塾に通っていました。登校していた時より成績も通う頻度も落ちましたが、余計なことは考える必要がありません。言われることもありません。頑張りがきちんと評価される場所です。落ち着く空間というわけではないけれど、未来を見ることができました。


(塾の先生や家庭教師のアルバイトで、学校に馴染めない生徒を担当したこともあります)

逃げ場所は目に見えない

 家、保健室、相談室、塾など私は目に見える形としての居場所を探していました。でも、中高生で“まい”のような完全な逃げ場所をつくることは難しいです。

 だからまずは、今ある選択肢の中で、ましな大人や場所を探すことが大事だと思います。さらに、現実を忘れられる時間を作ることで、目に見えない逃げ場所が出来上がります。

 私の場合は、家という場所でとにかく睡眠をとり、起きれば読書に熱中しました。他にもピアノ、タイピングゲーム、チャット、動画視聴に明け暮れ、はたから見たら廃人です。少し気が向いたら塾という場所で勉強をしていました。飛び飛びではありますがトータルで3年も同じ生活をしていました。


 でも、これらが私を支え、新しい刺激と可能性を与えてくれました。

現実逃避こそ必要不可欠

 私の引きこもり時代に出会った「西の魔女が死んだ」は、中学生ながら「生きるとは何か」「死ぬとは何か」を考えるきっかけになりました。そして、“自分で決めることの大切さ”を学びました。

 このような素敵な本が世界にあふれているなら、生きている意味もあるように思えました。


(2018年上半期も沢山の本に出会いました)

 今私は、あの頃熱中していた読書を仕事にしています。好きな本を読んで、心に響いた作品の魅力をYouTubeで発信することで活動が広がっているのです。

 読書に親しんだ期間は、学校での操り人形時代よりも、"私”を作る大事な要素になっています。

 いじるのが好きだったパソコンで動画編集をし、たまにですが、ピアノやタイピングも披露しています。私にとっては、学校で過ごそうと頑張ることこそが無駄でした。逆に、無駄と思われる現実逃避こそ人生に必要不可欠なものになっていました。

 つらい現実ではなく、純粋な自分と向き合う時間を確保できていたのです。

 ゆっくりで大丈夫。逃げ場所をつくって逃げまくりましょう。余裕があったら、新しい価値観を見せてくれる“好き”を集めてみてください。

 いつかパワーがたまったら、その時から本当の人生が始まると思っています。

【プロフィール】
べるりんのかべ 文学YouTuberとして、書評・美術館レビューなどを中心に文化・教養系の動画を配信する動画クリエイター。人を通して読書の魅力を伝え、本好きの輪を広めたいという想いから投稿中。チャンネル登録者は2万人超。『YouTube NextUp 2017』受賞。動画投稿バラエティ『#部活ONE!』のMCも務める。
ベルりんの壁 | Official Website
YouTube:ベルりんの壁
Twitter:@belle_youtube 
Instagram:@belle.gokigenyou
 

     ◇     ◇     ◇

 メイクの仕方を教えてくれたり、実験をしたり、モノマネをしたり……「好きなことで、生きていく」YouTuber。明るく楽しい印象ですが、過去は楽しいばかりではありません。

 コラム「ベルを鳴らして」では、文学YouTuberベルさんが、自身の過去といまを語ります。ステキな笑顔で書評を届けるベルさんの動画からは、想像できないかもしれません。

 次回は、「理解者」について掘り下げます。

文学YouTuberのベルさんコラム「ベルを鳴らして」
#1「嫌いなことで、生きていた」YouTuber
#2「友達がいない」から始めたYouTuber
#3不登校だったYouTuberが「逃げた場所」
#4孤独に耐えたYouTuberが見つけた理解者
#5「君らしくいればいい」YouTuberの答え

 withnewsは4月から、生きづらさを抱える10代への企画「#withyou」を始めました。日本の若い人たちに届いてほしいと、「#きみとともに」もつけて発信していきます。以下のツイートボタンで、みなさんの生きづらさも聞かせてください。

みんなの「#withyou #きみとともに」を見る

いろんな相談先があります

・24時間こどもSOSダイヤル 0120-0-78310(なやみ言おう)
・こどものSOS相談窓口(文部科学省サイト
・いのち支える窓口一覧(自殺総合対策推進センターサイト

連載 #withyou ~きみとともに~

その他の連載コンテンツ その他の連載コンテンツ

全連載一覧から探す。 全連載一覧から探す。

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます