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不登校だったYouTuberが「逃げた場所」 ベルを鳴らして#3
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読書が趣味の私ですが、一番本を読んでいた時期は10代です。
私は中学2年生の嫌がらせをきっかけに3年生で不登校になりました。
そんな時に、梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」(新潮文庫)という本に出会います。
主人公の女子中学生“まい”も不登校。休養をとるため、おばあちゃんの家で生活する様子を描いたお話です。
“西の魔女”と呼ばれるおばあちゃんの元での魔女修行をする“まい”。修行内容は、「規則正しい生活」と「何でも自分で決めること」。
“まい”は、悩みながらもだんだんと自分らしさを取り戻していきます。
私は、特別な環境にいる“まい”が羨ましくて仕方ありませんでした。
私も逃げ場所を探していたのに、現実はあまりにもかけ離れていたからです。
その頃の私は、学校に「行きたくても行けない」状態が続き、引きこもり生活がスタートしていました。今思うと、身体が危険サインを出していたのだと思います。
まずの逃げ場所は家になりますが、家族もこの状況をすぐに受け入れることはできませんでした。心配する気持ちよりも残念がる気持ちを大きく感じました。大事な受験期に、どうにか出席や成績を保ちたいという焦りもあったと思います。
日の出ているうちは、学校へ行けないことへの罪悪感が押し寄せました。動けないのに、考え事だけがぐるぐる回って耐えられません。
何も感じないようにとにかく寝ました。1日10時間以上寝ていたと思います。
夜や土日は少し気持ちがましになったため、昼夜逆転の生活リズムに変化していきました。
西の魔女がいたら、規則正しく生活できたかな?
欠席が続くと、保健室や相談室へ通うことを勧められました。第二の逃げ場所候補です。
でも、保健室登校をする生徒会長がどこにいるというのでしょうか。私にとっては、教室へ通うよりきつい選択でした。それでも出席日数を稼ぐため、たまに通うようになりました。
相談室は、第三の逃げ場所候補でした。学校とは関係ない専門的なカウンセラーのいる場所です。若くて賢い女性で、秘密も守られました。自分の体調と合えば、2週間に1回の来校を楽しみにしていました。
相談室は、合うか合わないかを確かめるくらいの気持ちで試してみても良いかもしれません。
相談室は、気分転換に行く場所です。何か変わるきっかけがあったらラッキー程度。
でも私は、自分も学校も変わらないことに焦っていました。
私はずっと、不登校の解決策は、学校へ完全復活することだと思っていました。
そう思っている大人がとても多いからです。
学校にある相談室へ行く度に「学校さえなじめないなんて、これから生きていけない」「私は頑張っていなければ存在してはいけない人間だ」と責め続ける気持ちを大きくしてしまいました。
カウンセラーの先生は、学校へ提案をしてもなかなか伝わらずに悩んでいたようです。翌年から中学校のカウンセラーを辞められました。
ぎくしゃくした雰囲気の家、見るのも嫌な学校以外で私がなんとかまともに過ごせたのは、塾だったと思います。
私は元々同じ学校の生徒がいない個別指導の塾に通っていました。登校していた時より成績も通う頻度も落ちましたが、余計なことは考える必要がありません。言われることもありません。頑張りがきちんと評価される場所です。落ち着く空間というわけではないけれど、未来を見ることができました。
家、保健室、相談室、塾など私は目に見える形としての居場所を探していました。でも、中高生で“まい”のような完全な逃げ場所をつくることは難しいです。
だからまずは、今ある選択肢の中で、ましな大人や場所を探すことが大事だと思います。さらに、現実を忘れられる時間を作ることで、目に見えない逃げ場所が出来上がります。
私の場合は、家という場所でとにかく睡眠をとり、起きれば読書に熱中しました。他にもピアノ、タイピングゲーム、チャット、動画視聴に明け暮れ、はたから見たら廃人です。少し気が向いたら塾という場所で勉強をしていました。飛び飛びではありますがトータルで3年も同じ生活をしていました。
でも、これらが私を支え、新しい刺激と可能性を与えてくれました。
私の引きこもり時代に出会った「西の魔女が死んだ」は、中学生ながら「生きるとは何か」「死ぬとは何か」を考えるきっかけになりました。そして、“自分で決めることの大切さ”を学びました。
このような素敵な本が世界にあふれているなら、生きている意味もあるように思えました。
今私は、あの頃熱中していた読書を仕事にしています。好きな本を読んで、心に響いた作品の魅力をYouTubeで発信することで活動が広がっているのです。
読書に親しんだ期間は、学校での操り人形時代よりも、"私”を作る大事な要素になっています。
いじるのが好きだったパソコンで動画編集をし、たまにですが、ピアノやタイピングも披露しています。私にとっては、学校で過ごそうと頑張ることこそが無駄でした。逆に、無駄と思われる現実逃避こそ人生に必要不可欠なものになっていました。
つらい現実ではなく、純粋な自分と向き合う時間を確保できていたのです。
ゆっくりで大丈夫。逃げ場所をつくって逃げまくりましょう。余裕があったら、新しい価値観を見せてくれる“好き”を集めてみてください。
いつかパワーがたまったら、その時から本当の人生が始まると思っています。
◇ ◇ ◇
メイクの仕方を教えてくれたり、実験をしたり、モノマネをしたり……「好きなことで、生きていく」YouTuber。明るく楽しい印象ですが、過去は楽しいばかりではありません。
コラム「ベルを鳴らして」では、文学YouTuberベルさんが、自身の過去といまを語ります。ステキな笑顔で書評を届けるベルさんの動画からは、想像できないかもしれません。
次回は、「理解者」について掘り下げます。
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