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連載

#7 #withyouインタビュー

「嫌いなことで、生きていた」YouTuber ベルを鳴らして#1

文学YouTuberのベル(ベルりんの壁)さん
文学YouTuberのベル(ベルりんの壁)さん

目次

ごきげんよう、文学YouTuberのベルです

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 「好きなことで、生きていく」

 YouTubeの有名なキャッチフレーズです。今では“小中学生のなりたい職業ランキング”の上位に名を連ねる人気の職業“YouTuber”。

 実は私、YouTuberです。“ベルりんの壁”というチャンネルで、書評や美術館レビューなど、好きなことを存分にいかした文化・教養系の動画を配信しています。

 今でこそたくさんの仲間(視聴者)のおかげで活動を楽しんでいますが、私にはかつて「嫌いなことだらけで、生きなければならなかった」時期がありました。

文学YouTuberのベル(ベルりんの壁)です。「美女と野獣」のベルが憧れだったので、ベルという名前にしました
文学YouTuberのベル(ベルりんの壁)です。「美女と野獣」のベルが憧れだったので、ベルという名前にしました

学校になじめない違和感

 私は幼い頃から読書が大好きで、本はいつでも体験したことのない世界へ連れていってくれました。

 しかし、学生時代の私が現実で属する場所といえば、家庭と学校、時々塾くらいのもの。そして、当時の私はこの狭い世界を「人生の全てである」と本気で信じ、絶望していました。

 もともと積極的な性格の私は、何でも全力で取り組みたいと思っています。しかし、思春期にこの考えを持つことは危険でした。勉強、部活、生徒会、体育祭……精を出せば出すほど、クラスメイトとの距離の広がりを感じるのです。

 もちろん10代における未熟さでは、図らずとも相手に嫌がられる態度をとったこともあったとは思います。

 それにしても、学校になじめない違和感は強過ぎて、しかし唯一の世界から追放されないよう必死でした。

 わかるはずもない「私の何がまずかったのか」を自問自答し、クラスメイトのご機嫌をうかがっては自身を責め続ける日々を過ごしました。

 実を言うと、私はこの事態を小学生時点である程度予測しており、中学では空気のように過ごすことを考えていました。

小学生時代。実は体育も好きで、リレーの選手でした
小学生時代。実は体育も好きで、リレーの選手でした

大人に助けを求めたけど

 そこで、初めての三者面談で担任に相談をしたところ、こう返答されたのです。

 「頑張っている人はきちんと評価される。全力でサポートする」

 この言葉を信じ、私は主に部活動と生徒会活動に打ち込みました。吹奏楽部では副部長を務め、生徒会では生徒会長に当選し、どれも生き生きと参加していたと思います。

 しかし、何がきっかけだったかはいまだに不明ではあるものの、だんだんと協力者がいなくなり、いつの間にか私に対する嫌悪感が取り返しのつかない状況にまで広がっていました。

 気づくのが遅かったため大人に助けを求めたのですが、相談しても逆効果。最終的には担任に見捨てられました。学校全体を通しても私は腫れ物扱いでした。

中学生時代。一番悩みました
中学生時代。一番悩みました

現実逃避のための読書

 それからというもの、私は今まで抱えていたものが一気に爆発したのか、部活や生徒会はもちろん、今まで頑張ってきたこと全てに手をつけることができない状態が続きます。

 登校も危うくなるのですが、その時唯一できたことといえば、“読書”でした。とはいえ、この時期の読書は、楽しむものとしてではなく、“現実逃避”のための緊急避難所に変わっていました。

 残念がる家族との関係も悪化し、「頑張れない私には何の価値もない」という考えが強くなっていきました。本の世界は、私でも作れたなけなしの居場所でした。

”YouTube NextUp 2017”に入賞しました!クリエイターの強化合宿で沢山の技術と刺激をもらいました
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 読書に逃げたと言っても、1日の大半はぼーっとするか寝ていたと思います。エネルギーをためるには3〜4年くらいかかったでしょうか。当時は相当焦りましたが、今となってはそれくらいのブランクは人生に何の影響も及ぼさないことを知っています。

 今つらいことがある人は、とにかく渦中の出来事から目をそらし続け、消耗を抑えてください。

 少し気力が出てきた時は、私の場合は読書でしたが、映画でもゲームでも、そしてSNSやYouTube視聴でも良いと思います。

 没頭できる場所、できれば普段の生活では味わえない様々な価値観を見せてくれる場所を探すことをおすすめします。

 私はこの時期の熱中が、結果として今の仕事にいきています。

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「今いる世界が狭すぎる」

 私が過去の自分に一言声をかけられるならこう言うでしょう。

 「今いる世界が狭すぎる」

 全ての原因はこれに尽きます。

 本来学校の閉鎖的な環境を改善し、あらゆる世代と関われる場所の提供などができたら良いのですが、すぐには難しそうです。

 しかし、明日ではなく、もっと先の未来を少し信じてみることはできます。そこには、自分を認めてくれる世界がちりばめられています。

 私は、大人になって初めて“友達”と呼べる人ができました。

 学生時代にはYouTuberなんてものはなかったのに、ただ生きているだけで、いつの間にか人生の選択肢が一つ増えていました。年を重ねれば重ねるほど“生き心地”がよくなっていると感じています。

YouTuberはよき理解者

 私はずっと“やりたいこと・好きなこと”を発揮できなかったからこそ、たくさん蓄えておいたエネルギーをYouTubeに放出し、自身を表現しています。

 スマホ画面に映るYouTuberは遠い存在ではありません。

 私が仲間のYouTuberを見て思うことは、皆それぞれ生きづらさを感じる経験を持っており、これを打破するために自身の道を切り開いているということです。

 YouTuberはみなさんの近くで多くの可能性を示し、よき理解者となる存在ではないかと考えています。

「かがみの孤城」(辻村深月著、ポプラ社)書評動画
【プロフィール】
べるりんのかべ 文学YouTuberとして、書評・美術館レビューなどを中心に文化・教養系の動画を配信する動画クリエイター。人を通して読書の魅力を伝え、本好きの輪を広めたいという想いから投稿中。チャンネル登録者は2万人超。『YouTube NextUp 2017』受賞。動画投稿バラエティ『#部活ONE!』のMCも務める。
ベルりんの壁 | Official Website
YouTube:ベルりんの壁
Twitter:@belle_youtube 
Instagram:@belle.gokigenyou

     ◇     ◇     ◇

 メイクの仕方を教えてくれたり、実験をしたり、モノマネをしたり……「好きなことで、生きていく」YouTuber。

 明るく楽しい印象ですが、過去は楽しいばかりではありません。

 コラム「ベルを鳴らして」では、文学YouTuberベルさんが、自身の過去といまを語ります。ステキな笑顔で書評を届けるベルさんの動画からは、想像できないかもしれません。

 2回目以降は、「人間関係」「現実逃避」「理解者」を掘り下げます。

文学YouTuberのベルさんコラム「ベルを鳴らして」
#1「嫌いなことで、生きていた」YouTuber
#2「友達がいない」から始めたYouTuber
#3不登校だったYouTuberが「逃げた場所」
#4孤独に耐えたYouTuberが見つけた理解者
#5「君らしくいればいい」YouTuberの答え

 withnewsは4月から、生きづらさを抱える10代への企画「#withyou」を始めました。日本の若い人たちに届いてほしいと、「#きみとともに」もつけて発信していきます。以下のツイートボタンで、みなさんの生きづらさも聞かせてください。

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