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旅立った愛猫をモデルに、家の中を〝大冒険〟「にっこりしてほしい」

「てのり猫」をつくる作家が作品集を出版しました

マグカップに入る「てのり猫」。作品集『ちっちゃなねこたちのおるすばん』より
マグカップに入る「てのり猫」。作品集『ちっちゃなねこたちのおるすばん』より 出典: 小学館提供

目次

キジシロの「めばる」、三毛の「きなこ」、茶トラシマの「まっちゃ」、シロクロの「もち」。4匹の猫たちがリビングやキッズルームを大冒険……でも、猫たちは羊毛フェルトで作られた5cmほどの「てのり猫」です。8月、小さな猫たちの世界を描いた作品集が発売されました。4匹は、かつて作家が一緒に暮らしていた愛猫でした。

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猫たちの「おるすばん」

「とある日曜日。にんげんのみんなが出かけていきます。」

8月に発売した初の作品集『ちっちゃなねこたちのおるすばん』(小学館)は、玄関で飼い主を見送る「てのり猫」たちのシーンから始まります。

家主がいない時間、4匹が家の中で自由に遊んだり、ゴロゴロしたりする様子が描かれています。

「てのり猫」を作るのは、神奈川県に住む羊毛フェルト作家のMEBARUさん(@mebaru_felt_cat)です。インスタグラムのフォロワーは14万人に上ります。

2017年に作家活動を始めてから、4~6cmの猫を約460匹作ってきました。制作には1匹あたり50時間ほどかかるそうです。

作品集『ちっちゃなねこたちのおるすばん』より
作品集『ちっちゃなねこたちのおるすばん』より 出典: 小学館提供

作品集に登場する4匹は、かつてMEBARUさんが同時期に飼っていた猫たちをモデルにしました。

面倒見がいいリーダー的存在のオス「めばる」。アクティブでちょっぴり気が強いメスの「きなこ」。ひとり遊びが好きだけど、「めばる」のことが好きでいつも追いかけていたメスの「まっちゃ」。おおらかでやさしく、癒やし担当のオス「もち」。

それぞれの性格や関係性も作品集に反映しているそうです。

なかでも特別な存在は、作家名と同じ名前の「めばる」でした。MEBARUさんは、「本の計画を進める時点で、『めばる』をモデルに作ることしか思い浮かびませんでした」と話します。

作品集『ちっちゃなねこたちのおるすばん』より
作品集『ちっちゃなねこたちのおるすばん』より 出典: 小学館提供

大雨の日、自宅にやってきた「めばる」

めばると出会ったのは1995年。ある日の仕事帰り、最寄り駅から自宅へ向かって歩いていると、歩道沿いの木の上で大きな声で鳴いている猫が目に入りました。

こげ茶のしま模様がある「キジシロ」で、首輪は付けていません。

「助けなきゃ」

MEBARUさんは近くの商店からダンボールをもらい、近づいて「降りてきていいよ」と待ちました。しかし、猫は飛び降りて走り去ったといいます。

MEBARUさんは「怖がらせてしまったかも」と心配になった一方で、「降りられてよかった」と胸をなで下ろしたそうです。

翌日は大雨で、自宅にいたMEBARUさん。「猫が鳴いてない?」と家族が気づいて外を見ると、窓のそばに1匹の猫が座っていました。MEBARUさんは、その柄や雰囲気から一目で「昨日の猫」だと分かったそうです。

あの木から自宅までは2kmほどあります。「私の家とは逆方向に走り去っていったのに……」。MEBARUさんは縁を感じ、「めばる」と名付けて家で飼うことにしました。家ではほかに何匹も猫を飼っていたそうです。

愛猫めばる
愛猫めばる 出典: 羊毛フェルト作家・MEBARUさん提供

「手のかかる猫」だったけれど

MEBARUさんは、「『めばる』には本当に助けられました」と話します。

壁や柱で爪を研いでしまうような「手がかかる猫」でしたが、MEBARUさんの子どもが泣くとどこからでも走って駆けつけてくれたり、ほかの猫同士でけんかしていると割って入って止めてくれたり、やさしく愛される存在だったといいます。

「めばる」は、2017年に旅立ちました。MEBARUさんが作家活動を始めたのは、「めばる」の老いを見て愛猫の姿を残しておきたいと感じたことがきっかけでした。「作家を仕事にできたのは『めばる』のおかげだと思っています」

しかし、「めばる」を作ったのは、今回の作品集が初めてです。「これまでは『めばる』を作ったとしても、作り終えてしまうことがもったいないと思っていました」

「私は小さい『めばる』がほしいわけではなくて、『めばる』はどんなだったかなと思いながらほかの猫を作る時間が好きなのかもしれません」

今回はじめから「めばる」をモデルに考えたことについては、「作品集の出版という『晴れ舞台』なので、『めばる』を残しておきたかった」と話します。

作品集『ちっちゃなねこたちのおるすばん』より
作品集『ちっちゃなねこたちのおるすばん』より 出典: 小学館提供

「にっこり、ほっこりしてもらいたい」

作品集に向けては、計17ポーズを制作。「ノートに何か書いているときにそばに来て紙の上に座ったり、パソコンの上に寝そべったり、私が実生活で感じる『猫のあるある』を、小さな猫に合わせて表現しました」とMEBARUさんは話します。

「うちの猫も、私が出かけるときは『どこか行っちゃうの?』と寂しそうですが、出かけたあとは楽しく過ごしているかもしれません」

普段から「見た人ににこっとしてもらう猫を作りたい」と考えているMEBARUさん。作品集に関しても、「見てにっこり、ほっこりしてもらいたいですし、この本をきっかけに羊毛フェルトにも興味を持ってもらいたいです」と話しています。

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