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ゼネコンがつくった熱中症予防ゼリー 400万本売れる異例のヒット

しおゼリーを食べる作業員
しおゼリーを食べる作業員 出典: 三和建設

目次

異常な猛暑が続く中、中堅ゼネコンの三和建設(大阪市)が販売する「ゼネコンがつくったしおゼリー」が異例の売れ行きを見せています。熱中症予防のために食べるゼリーですが、今夏には累計売り上げが400万本に届く見通しとのこと。6月から職場での熱中症対策強化が義務化されるなか、建設会社はさまざまな知恵を絞っています。

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想定外の人気で追加生産

三和建設は1947年創立の中堅ゼネコンで、大阪府にある「サントリー山崎蒸溜所(1951年竣工)」を手がけたことで知られています。

「しおゼリー」を開発したのは2020年。当初は自社の建設現場用でしたが、同業他社の総務や安全衛生担当者から「販売してもらえないか」という問い合わせが相次ぎ、2021年に一般販売を始めました。

建設現場用に開発されたゼネコンがつくったしおゼリー
建設現場用に開発されたゼネコンがつくったしおゼリー 出典: 三和建設

最初の2年で売り上げは50万本に。今年は累計販売数が330万本を突破し、想定を大幅に上回る反響を受けて緊急で追加生産に着手。その結果、この夏に400万本を突破する見込みです。

企画した執行役員大阪本店長の川口秀夫さんは「正直びっくりしています。みなさんが熱中症のことを、本当にひとごとではなくて自分ごとのように考えられるようになってきたんだなと肌で感じているところです」と話します。

現場監督の思いが形に

そもそも、なぜゼネコンが熱中症予防ゼリーをつくることになったのでしょうか。

川口さんは「私は元々現場監督をしていまして、夏の暑さというか苦しさ、過酷さをよく分かっているんです」と語ります。

しおゼリーを開発する前から、現場では熱中症対策に力を入れていて、塩あめやタブレット、梅干しなどを食べるよう促していましたが、浸透しなかったといいます。

「誰も食べてくれないんですよ。何より僕が一番よう食べへんかったんです。なぜなら、のどが渇いているときにそういうものを食べたら、さらにのどが渇くので、なかなか手が出なかった。『何とかせなあかんな』っていうのを潜在的に思っていたわけなんです」

しおゼリーを食べる現場の作業員
しおゼリーを食べる現場の作業員 出典: 三和建設

川口さんがその思いを打ち明けたのは、化粧品原料の研究・開発などを手掛ける岩瀬コスファ(東京都千代田区)の担当者と飲んだときでした。そこで、岩瀬コスファがゼリーの製造を担う形となり、熱中症予防ゼリーの共同開発に至ったといいます。


職人が手軽に食べやすく、後味がすっきりして仕事に集中できるもの。そんなゼネコンならではの視点をいかして、試行錯誤を重ねました。

「現場での食べやすさ」にこだわり

川口さんがこだわったのはサイズ感。

「こまめに摂取していただくことをすごく考えました。休憩のたびに食べてもらえるような商品にしたかったんです」

ゼリーは1本約10グラムで持ち運びのしやすいスティックタイプです。工事現場で、朝礼時、10時、お昼、15時の休憩時に1本ずつ摂取することを奨励しています。

ただしょっぱいだけでは継続して食べられないと考え、レモン・りんご・ぶどう・ライチ・マスカットと味にバリエーションを持たせ、塩味と甘みのバランスも工夫しました。

5種類のフレーバー
5種類のフレーバー 出典: 三和建設

最近は「おいしい」という反響をもらうことが増えたと言います。「5種類のフレーバーで『食べ飽きないね』というような感じで、大変うれしい言葉をかけていただくことが多いです」

凍らせて現場に持っていけば、食べる前には「冷却剤」としても使えます。溶けはじめたら食べごろになっているという寸法です。

最近は、建設現場だけでなく、高齢者施設や幼稚園、スポーツチームなどからも問い合わせが入り、販路は拡大しています。

建設現場から熱中症をなくしたいという思いでしおゼリーの開発に取り組んできましたが、川口さんの目標はさらに大きくなりました。

「日本から熱中症がなくなるために、もっとしおゼリーが活躍してくれたらいいなと思っています」

持ち運びしやすいしおゼリー
持ち運びしやすいしおゼリー 出典: 三和建設

熱中症対策強化が義務化、知恵絞る現場

厚生労働省によると、職場の熱中症で4日以上の休業などとなった死傷者は2024年、1257人となり、過去最多でした。

そこで今年6月から、職場での熱中症対策強化が義務化されました。三和建設だけでなく様々な企業が熱中症対策に知恵を絞っています。

大林組(本社・東京都港区)は7月、建設現場における熱中症対策の一環として、新築工事の現場で建物全体を空調で冷却する取り組みを始めたと発表しました。

作業環境の改善を目的に、完成した建物の空調が稼働する前に全館空調を行う試みは、業界初だといいます。

特に夏場の建物の新築工事では、外壁などが取り付けられたあと、外気から遮断された状態で日射の影響を受けるため、高温・多湿となって熱中症リスクが高まります。

大林組は以前からファン付き作業服を導入するなどしてきましたが、猛暑日の増加で追加対策が必要と判断し、建物全体を空調で冷却することにしたそうです。猛暑日でも作業エリアの室温を28度程度にすることが目標だそうです。

ダクトで冷気を各フロアに供給する
ダクトで冷気を各フロアに供給する 出典: 大林組

矢作建設工業(本社・名古屋市)は、過酷さを増す建設現場で少しでも快適に作業してもらおうと、オリジナルのエアパッド付きファンジャケット(空調作業服)の開発やフルハーネスの軽量化に取り組みました。

ファンジャケットの上からフルハーネスを着用する仕様に変更し、着脱の簡素化を実現。従来のファンジャケットに比べて首元の温度を2~3度低下させる効果を確認したそうです。

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