連載
#261 #withyou ~きみとともに~
生理のしんどさ、セックスの痛み…人気イラストレーターに届く悩みは
相談応じつつ「それ以上は自分で考えるしかない」
相談しづらい性の悩みや、パートナーに直接言いづらい恋愛の悩み。フォロワー30万人のイラストレーターの平泉春奈さんには、そんな悩み相談が寄せられるといいます。平泉さんは「悩みを全てオープンにした方がいいとは思わないけど、伝えなきゃいけない人には伝えられるようになってほしい」と語ります。相談を受ける中で、見えてきたものを聞きました。
――ウェブメディアで「春奈先生の独断性教育」という連載をされています。毎回テーマごとにフォロワーにアンケートをとり、届いた悩みに答えていますね。
4年ほど前から、個人のブログで性の悩みについての発信をしてきました。
「遠距離恋愛」や「後悔しているセックス」などをテーマに、ファンから送られてきた悩みやアンケートの結果をまとめ、私の思いで締めくくるような構成で、50回ほど記事を書きました。そちらの更新はもうしていませんが、いまはインスタグラムのストーリーズの機能を使い、悩みが綴られたDMに答えたり、その反響をさらに紹介したりしています。
それを連載という形にしたのが「春奈先生の独断性教育」です。
――「独断」性教育なんですね。
「独断性教育」は、私が提案した言葉です。
私は保健の先生でも、性の専門家でもありません。ただのイラストレーターです。
でも、ただのイラストレーターの割には、アンケートをとったり、悩みを聞いたりしてきて、リアルな声を知っています。
それらを通じて考えてきた、私の「独断性教育」です。私の考えだけが正しいわけじゃないけど、「みんなはどう?」と問いかけるような内容にしているつもりです。
――ファンからの悩みというのは、昔から届いていたのでしょうか?
初期に描いていたカップルイラストは、読者にドキドキしてほしいという思いが強い、女性向けAVのライト版のような作品でした。
でも、作品として進化していかないといけないなというタイミングで、テーマを設定し、官能的なシーンのあとに、空しさを描き、登場人物が自分と向き合い、光を残す――そんな作品作りをするようになりました。
「セフレのことが好きなのに付き合えない」というストーリーにしたとき、その人の視点を描きながら「どうしたいんだろう」「幸せってなんだろう」というモノローグを入れたり、「高齢処女」をテーマにしたときに「『普通こうだ」なんてないよね」という言葉を入れたりしました。
それらを通じて、見る人に、より刺さったり意味のあるものをつくったりしたいと考えるようになりました。
その結果、反響がDMで届き、悩みも送られてくるようになりました。
――悩みにはどう向き合っているのですか。
基本的には、「これは正解ではなく、あくまで個人的な意見です」というスタンスです。
その人の人生や価値観、状況や感じ方、すべてが違います。答えは自分の中にしかないということは、毎回伝えるようにしています。
例えば以前、「付き合っている彼はいてキスもするけど、どうしても嫌悪感が出てしまう」という相談が届きました。
アセクシャル(他者に性的感情を抱かないセクシャリティ)の可能性もあるなと思いましたが、私が直接知っているわけでもない人に断言するわけにはいきません。
そのときは、可能性の一つとしてアセクシャルを提示した上で、「自分と向き合う時間を作ったらいいんじゃないかな」と伝えました。
選択肢を示すことはしますが、「それ以上は自分で考えるしかない」という姿勢は大切にしています。
――寄せられる悩みの中で多いものはありますか?
性の悩みと恋愛の悩みで、だいたい4:6です。
デリケートな部分をさらけ出さないとちゃんと伝えられない性の悩みは、ちょっと恥ずかしくて言いづらいのでしょう。身近で信頼できる人にこそ、言いにくいようにも思います。
それでも、私に悩みを打ち明けてくれる一番大きな要因は匿名性だと思います。私も匿名だし、相談の際にも自分の名前を明かさなくていいので、相談しやすい。
一方で、悩みをオープンにできればいいのになという気持ちもあります。それは、不特定多数に対してではなく、「ちゃんと伝えなきゃいけない人にはオープンでいてほしい」という思いです。
セックスレスについてパートナーに相談できないという悩みもありますが、そこはもっと言えるような関係性であってほしいと思います。
性の話の中には身体の悩みも含まれます。
例えば生理のつらさなどの婦人科系の悩みは受診が必要な場合もあり、カップル・夫婦間でも共有できていた方がいいと思います。そうすることで、身体的なつらさを共有でき、パートナー側から受診のきっかけを与えてくれるかもしれません。
――ファンとのやりとりで、印象的なものはありましたか。
性の悩みで印象的だったのは、性交渉で皮膚が切れてしまうという悩み。
私自身、そのような体験をしたことがなかったので、「まずはパートナーに伝えて」「病院へ」などありきたりなことしか言えませんでした。
ところが、この悩みをストーリーで紹介したところ、経験者から「病院で薬をもらった」「潤滑剤を使ってみては」といった声や、「パートナーとの関係性を見つめ直すべきだ」といった意見など、フォロワーから300ほどの反応が来たため、回答も紹介しました。
――プラットフォームのようですね。
私では分からないことは回答を募集します。
回答を送ってくれる人からは、「自分と同じ悩みを持つ人の悩みを解決したい」という思いを感じます。
30万のフォロワーがいる私が発信することで、貴重な情報を得られると思われているのかなと思います。
――やりとりしている中で、相談する側はどんな思いを抱えているか、感じることはありますか。
パートナーとの関係について相手に相談できないということは、相手に対して「嫌われたくない」とか「自分が間違っているんじゃないか」といった思いを抱えていると感じます。
私だったら、「自分が色んなことを我慢したりしているのに、その悩みを相手に言えないのはどうなのかな」「そこまでしてすがらないといけない相手なのかな」とも思います。
……でも振り返れば、私にもそういう時期があったよなと思います。若くて、経験がなくて、自信がなくて地に足がついていなくて。しょうがないっちゃしょうがない。
すぐには変わることはできなくても、寄り添うのが私の役目だと思っています。
相談に対して私が返した言葉が、支えになればうれしいです。
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