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「ヤンキー」消えた…夜の定時制高校は今 まるで大学?けど給食あり
夜間定時制高校。10年ほど前に高校生だった記者の時代には、少しやんちゃな生徒が行くようなイメージがありました。何度か通った福井の定時制高校はイメージと全く違いました。どちらかというと大学に近い自由でのんびりした感じ。おいしく食べた給食を中心に定時制高校の取材を振り返ります。
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夜間定時制高校。10年ほど前に高校生だった記者の時代には、少しやんちゃな生徒が行くようなイメージがありました。何度か通った福井の定時制高校はイメージと全く違いました。どちらかというと大学に近い自由でのんびりした感じ。おいしく食べた給食を中心に定時制高校の取材を振り返ります。
夜間定時制高校。10年ほど前に高校生だった記者の時代には、少しやんちゃな生徒が行くようなイメージがありました。それよりも昔は、だいぶ荒れていたという話も聞きます。全国的に夜間の定時制が縮小する傾向にありますが、そういえば現在はどうなっているのか。ちょっと怖い、と思いながら何度か通った福井の定時制高校はイメージと全く違いました。どちらかというと大学に近く、自由でのんびりした感じ。生徒たちとおいしく食べた給食を中心に定時制高校での半年ほどの取材を振り返ります。全日制だけでなく、定時制も進路の良い選択肢ではないでしょうか。(朝日新聞デジタル編集部・影山遼)
取材をしたのは、記者が2018年の春まで赴任していた福井県。募集を停止する学校が相次ぎ、県内で募集を続けるのは1校だけになっています。2017年春ごろから半年近く取材をさせてもらいました。
テレビ朝日系の「アメトーーク!」では、2017年9月に「定時制高校芸人」が放映されていましたが、その中を見てもヤンキーっぽい芸人は皆無でした。
いつも高校に行くと教頭先生が案内してくれました。教頭によると、この高校には定時制と通信制があります。そして、定時制は午前・午後・夜間の三つのコースに分かれています。基本は4年で卒業できるようにカリキュラムが組まれているそうです。
夜間に話を絞ると、ここ数年の入学者数は1桁。人数は少ないです。また、取材当時の最年長は22歳でした。これもイメージと違い、若い人が多い高校でした。
一方、経済的な理由や社会勉強の観点からアルバイトが推奨されていて、働きながら学ぶ生徒は8割強に上るなど、昔の役割も維持しています。
中学時代に対人関係がうまくいかずに、不登校だった生徒も多いといいます。
教頭は30年ほど前に新卒で勤務したのが定時制でした。「昔は体を張って生徒に対応することもありました。けれど、久しぶりに戻ってきた定時制は穏やかな感じになっています」
担任の教諭は「働きながら学ぶ生徒にとって役割はますます大きなものになります。人が多いところが苦手という子にも夜間は必要な存在です」と強調しました。
話を聞いたのは夜間の3年生たち(当時)。語ってくれた場所は主に食堂です。食堂では、学年関係なく食べます。グループで食べている子がほとんどで、大学の学食と変わりません。変わるのは教師陣も同じテーブルで食べていることでしょうか。
授業は午後5時55分に始まり、9時5分まで。授業の前に給食の時間が設けられているのも、夜間ならではです。1食350円。ある日のメニューはチャーハン、ギョーザ、カボチャのスープ、牛乳などが並びました。これがおいしい。その場で調理したできたてを大量に食べることができます。誰かが持ってきた野菜の漬物が提供されることも。
生徒はどのような子たちがいるのでしょうか。
3年生の中でも一目置かれていたのが、おしゃれな茶髪の中尾圭佑さん(22)です。中学校を卒業した後、全日制の高校に進学しました。けれど、夢中になったのは勉強よりも遊ぶこと。授業に出るには出ましたが、日に日に出るのがしんどくなっていき…。16歳のとき、冬休みが明けた1月に、勢いにまかせて高校を退学しました。
「出て行け」。母親に退学を伝えた瞬間、怒鳴られたといいます。このまま家で暮らすには家賃を払わなければならず、遊ぶのにもお金はかかる。ということで仕方なく職を探しました。
見つけたのは家の近くのスーパーマーケット。その年の3月から、アルバイトとして働き始めました。朝から一日中働く日々。久しぶりにやりがいを感じたといいます。そして、仕事を2年ほど続けた努力が認められ、別の店舗に異動するのを機に、正社員になるように社長から勧められました。
そのとき、社長が知ったのが中卒だということ。「働きながらなら、どれだけの時間がかかってもいいから高校に行かせてやる」。この社長の言葉で、もう一度高校に行こうと決めました。
19歳の秋、夜間の定時制に編入。と言っても、退学した前の高校での在籍は1年にも満たなかったため、単位はゼロからのスタートでした。
「散々遊んだツケが回ってきた。(前の高校で)単位を取っておくという頭はなかったです」
退学という同じ失敗は繰り返せません。通信制ではなく定時制を選んだのは、学校に行くように自分を仕向けるためでした。
入学前、高校の評判をインターネットで検索してみました。すると、「夜間に来る人はガラが悪い」と決していい評判ではありませんでした。ですが、入ってみると拍子抜けするほど落ち着いていました。「コミュニケーションが苦手な子もいるが、色んな子を受け入れる土壌があるんだと思いました」
仕事は午前7時にスーパーに出勤していました。青果部門を担当し、商品の仕入れやカット野菜への加工、陳列も全部自分でやっていました。接客もするし、市場からの電話も受けるなど何でも屋です。
午後5時ごろに仕事を終えたら、急いで登校し、給食を食べます。授業を終え、家に帰るのは午後9時半に。なかなか自由に使える時間はありません。
「慣れですよね。慣れると大したことはない」。大人びた表情を見せてくれます。
スーパーが休みの日は、趣味の魚釣りに行きます。自分でさばき、刺し身に。腕前は店で出してもおかしくないほどのレベルまで上達しました。部活動の卓球も大好きで、いくら仕事で疲れていても参加すると決めています。
前に通っていた全日制高校と変わったことは何でしょうか。「行かされるのと、自分で決めて行くのは違いますから。今はさぼろうにも、さぼれません」と笑います。
家賃や食費として最低月2万円を家に入れています。しかし、学費を払ってくれているのは母親。「これは出世払いで返します」
今の学校生活に特に問題は感じていません。「夜間は人が少ないので寂しい」。たまにそう思うくらいです。
自分より年下の生徒と接すると、言動に「常識ないな」と感じることもあります。ですが、よく考えれば自分も前の高校では同じでした。だから気付いたことがあれば、その都度伝えています。
授業は出席者が少なければ、教員と2人きりになることもあります。大人数ではない分、無理して授業が進むこともありません。「先生は授業での態度もしっかりと見てくれます」
取材時は、卒業後にやりたいことをじっくり考えているところでした。
夜間定時制が減っているのは福井だけの話ではありません。
東京都教育委員会によると、都立高校4校の夜間定時制課程廃止を盛り込んだ計画を2016年2月に決定しました。担当者は「不登校の生徒や高校中退者向けのチャレンジスクールの増設などで(減った部分を)対応します」と話しています。
愛知県では、私立の豊川高校で夜間定時制が2017年に88年の歴史に幕を下ろし、私立高校から夜間定時制がなくなりました。
夜間の定時制に特有の給食をやめる動きも出ています。千葉県教委は2017年11月、18年度から県内17校で全面廃止する案を発表しました。担当者は「働きながら学ぶ生徒が多かった時代と比べて、ライフスタイルが多様化しています。食事の方法を自らが選択できるようにしていきたいです」と説明しています。
次回は、現在の定時制に多い海外出身や不登校だった生徒との思い出を語れればと考えています。
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