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「段差が見えない」オシャレ階段に危機感 他人事ではない警告

「そもそも階段があること自体に気付きにくい」

同系色でまとまった階段にひそむ危険とは。写真はイメージです=VTT Studio/stock.adobe.com
同系色でまとまった階段にひそむ危険とは。写真はイメージです=VTT Studio/stock.adobe.com

目次

みなさんが普段利用している階段は何色でしょうか? 段差部分には、足元に注意を促すような工夫はされているでしょうか? 一見おしゃれに見える、「同系色」でまとめられた階段、実は弱視や乱視など、目の見えにくい人にとっては非常に危険であることを、知っていますか。

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テープと手すり「安心」

弱視と乱視のあるAさんは5年前、とある駅の階段にある「目印」に注目しました。

「自分は斜視、乱視持ちなので、手すりがあっても階段が歪んで見えます。(中略)この目印があるだけで安心して歩けます」という言葉とともに、街中でみかけた、階段の段差部分に赤と黄色のテープが貼られている写真をXに投稿。4万件以上リポストされるなど、大きな注目を集めました。

「ちょっとした段差につまづき、転倒して怪我をしやすい」というAさんは、テープの役割について、「私にとっては、テープの赤色がとても見やすかった。逆に、黄色が目に入るという人もいます。どちらの色もあると、多くの人が階段を認識することができると思います」

乱視もあるAさんは、実際にはまっすぐの線がゆがんでみえます。そのため、「固定されている」とわかる手すりがあるだけでも、それをつたって安全に階段を使うことができるそうです。Aさんは「斜視乱視問わず、高齢者など、視覚に関わるハンデのあるすべての人が手すりを使う理由と同じです」と説明します。

わからなくなってきている目印

同じ内容を5年前にも投稿し、その際にも大きな反響を得たAさん。今年、再投稿したのには理由がありました。

「おそらく摩耗が原因で、いまこの階段のマークがわからなくなってきている。他にも、街中には、段差部分が黒いラインだけだったり、滑り止めだけだったりで示されているものもあります。オシャレなデザインの階段が増えてきて、怖くて階段を使えません」と訴えます。

「私一人ではどうにもならないので、再度Xで声をあげました」

ハード、ソフトの両面で対応を

ユニバーサルマナー検定などを通じて、障害者の視点を取り入れながら誰もが安心して暮らせる社会づくりを目指している株式会社ミライロによると、階段が同系色でまとめられている場合、「段差の上下や奥行きが視認しづらくなり、段差の認識が難しくなるケースがある」といいます。

「視覚障害者や高齢者にとって、階段が単一色だと、段差の境目がぼんやりとしてしまい、そもそも階段があること自体に気付きにくくなる。視界に“もや”がかかったような見え方をする人もいて、そうした場合、階段がスロープのように見えてしまうこともある」

段差の見分けが付きづらくなり、踏み外しやつまずきにつながることも。

そのため、すでに同系色で設置されている階段に関しては、赤や黄色など「視認性の高い」色の滑り止めテープを貼るなどして、段差を認識しやすくする工夫が求められるといいます。
また、ハード面での工夫が難しかったとしても、ソフト面での配慮によって改善できるケースもあると説明します。
「階段の前で困っている方がいたとき、近くにいる従業員や周囲の人が気付き、声をかけてサポートすることで、安心してその場を利用してもらえることにつながります」

段差にばらつき、スケルトン…危険な階段

ミライロによると、階段には他にも危険が多いといいます。

一つ目は、階段の段差にばらつきがある場合です。
このような階段の場合、視覚障害者に限らず、一定のリズムで昇降しようとするすべての利用者にとって、動作のペースが乱れ、つまずきや転倒につながる可能性があります。

二つ目は、階段の手すりが設置されていなかったり、途切れている場合。
手すりを補助として使用する方も多いため、ないことで不安を感じたり、安全性が損なわれたりする場合があります。

手すりのない階段のイメージ=geargodz/stock.adobe.com
手すりのない階段のイメージ=geargodz/stock.adobe.com

三つ目は、階段の終わりが分かりづらい場合です。
階段を上りきった、あるいは下りきったと思っても、数歩先で再び段差が現れるような構造では、段差の存在に気付けず、つまずきや踏み外しにつながる危険性があります。
わかりにくい場所に点字ブロックが設置されていれば、段差の存在を知らせる手がかりとなる場合もあります。ただ、視覚障害のある方すべてが点字ブロックを利用できるわけではないため、それだけに頼るのは不十分です。
「段差の終わりを視覚的・触覚的にわかりやすくする工夫や、連続した手すりの設置など、複数の手段を組み合わせた対応が求められます」とミライロは説明します。

最後に、「スケルトン階段」と呼ばれるものの危険性も指摘します。
スケルトン階段とは、足を置く「踏板」の奥にある「蹴込み板(けこみいた)」がなく、段と段の間に隙間が空いている階段のことです。この構造は、視覚障害者が使用する白杖で段差の位置を確認しにくくなり、次の段を見誤るなどの危険があります。また、隙間から物を落とす・足を踏み外すといったリスクも考えられます。

ミライロは、「これから整備される建物はもちろん、すでに利用されている空間においても、障害当事者の視点を取り入れることで、今からでもできる工夫は数多くあると考えています」としています。

スケルトン階段のイメージ=Monfu/stock.adobe.com
スケルトン階段のイメージ=Monfu/stock.adobe.com

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