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5円玉、「漢数字だけ」の謎を追う 洋数字入りの契機は「ギザ10」?

財布に入っている日本の硬貨、そのデザインを気にしたことはありますか? 1円から500円まで、6種類の硬貨がありますが、漢数字のみで額面が表記されているのは5円だけです。他は全て洋数字。なぜ5円だけなのでしょう。貨幣を製造している造幣局に聞くと、「ギザ10」が洋数字のきっかけになった説が浮上しました。

楷書体時代の5円玉の表裏(「ギザ10」に対抗して「フデ5」と呼ばれます)
楷書体時代の5円玉の表裏(「ギザ10」に対抗して「フデ5」と呼ばれます) 出典: 造幣局提供

目次

 財布に入っている日本の硬貨、そのデザインを気にしたことはありますか? 1円から500円まで、6種類の硬貨がありますが、漢数字のみで額面が表記されているのは5円だけです。他は全て洋数字もあることから、「外国人にとっては分かりにくい」という指摘が度々でます。なぜ5円だけなのでしょう。貨幣を製造している造幣局に聞くと、「ギザ10」が洋数字のきっかけになり、5円玉だけハブられた説が浮上しました。(朝日新聞記者・丹治翔)

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【お金シリーズ】
①縁ギザギザの「ギザ10」…1枚8万円? なぜ生まれた、価値に迫る
②5円玉、「漢数字だけ」の謎を追う 洋数字入りの契機は「ギザ10」?
③消えた2千円札を探せ 今も1億枚が現役…沖縄では流通増えていた
④5円玉「漢数字だけ問題」、新しいお金でも継続…洋数字入らず60年
⑤一回り大きい50円玉が存在! 自販機で使えるお金調査、旧500円は?
⑥ギザ10より?予想外の価値の10円玉 平等院鳳凰堂、実物との違い
⑦「ギザ10」「フデ5」レア硬貨の世界 数千倍に跳ね上がる10円玉も

「5」の入る余地なし

 硬貨は法律で表裏が決まっている訳ではありませんが、独立行政法人である造幣局では便宜上、年号がある方を裏面としています。普通の感覚とは離れているような…。6種類の硬貨を改めて見てみると、表面は6種類とも漢数字で金額が表記されています。裏面にも、何円かが分かるように1円、10円、50円、100円、500円については、「1、10、50、100、500」と洋数字(算用数字、アラビア数字)が書かれています。

 そして、5円の裏面を見てみると、算用数字の「5」はありません。年号に加え、他の硬貨では表面にある「日本国」の文字が表示され、「5」が入る余地がありません。

漢字にスペースが支配されている5円玉の裏面
漢字にスペースが支配されている5円玉の裏面 出典: 造幣局提供

書体も含む全てがデザイン

 一体、どうしてなのか? 造幣局のサイトを見てみると、同じ疑問を持つ人が多いのか、Q&Aコーナーに回答がありました。

 「貨幣のデザインは、造幣局の職員が作る場合や一般の方から図案を募集する場合がありますが、いずれにしても複数のデザインの中から選ばれ、最終的には政府の閣議で決定されます」

 「5円貨については、昭和24年(1949年)に穴あきの黄銅貨として、『稲、歯車、水』と『双葉』のデザインで誕生しました。その後、昭和34年(1959年)に文字の書体が楷書体からゴシック体へと改正され、現在の5円貨のデザインとなっています」

 「数字や文字についても、その書体を含めた全てが貨幣デザインの一部であり、5円貨のデザインとして、算用数字のない現在のものが選ばれました」

ゴシック体で「五円」と書かれている
ゴシック体で「五円」と書かれている 出典: 造幣局提供

ないのは「たまたま」

 サイトでの回答は以上になりますが、造幣局にも話を聞きました。

 造幣局によると、額面を漢数字のみにするか、算用数字も併記するかといった決まりはないということです。現行硬貨の中では最も古い5円ですが、同時期の1円黄銅貨(昭和23~25年)には算用数字も使われていました。

 5円のデザインについては、「農業を表す稲穂、工業を表す歯車、水産業を表す水(横線)と当時の産業を表現した表面と、新しく民主国家になった日本を象徴している双葉を描いた裏面のデザインが一番ふさわしかったのだろう」とし、算用数字がないのは「たまたま」と説明します。

1948~49年に発行された穴のない5円銅貨
1948~49年に発行された穴のない5円銅貨 出典: 造幣局提供

ギザ10誕生の経緯は…

 しかし、穴あきの5円玉が誕生してから2年後の昭和26年(1951年)に製造が始まった10円からは算用数字もセットで表記されています。こちらについても、「デザイン全体で選んでいるので、なぜ算用数字が入るようになったかは分からない」と造幣局。

 ただ、取材に応じた造幣局の職員は、個人の推測として「最初はギザ付きの10円だったように、『識別』という観点が10円から出始めてきたので、5円と区別しやすいように算用数字も記されるようになったのではないか」と答えてくれました。

 昭和26~33年の10円は、当時の最高額面であることを示すために、縁にギザギザがつけられています。その流れとして算用数字も盛り込まれたのではないか。「ギザ10」がきっかけになったという見立てです。

昭和26年の10円玉には算用数字
昭和26年の10円玉には算用数字 出典: 造幣局提供

デザイン変更の予定は?

 識別という点では、5円は漢数字の表記しかないので、外国人にとっては分かりにくいという指摘があります。造幣局もこうした指摘は把握しているそうですが、デザインを変更する予定は「今のところ、ないですね」。

 今の5円は広く社会に浸透し、レジの検銭部分などが現行のデザインを基に設計されているので、変えるのは難しいという発想です。平成12年(2000年)に製造が始まった500円は、昭和57年(1982年)製造開始の旧500円から材質などが変更になりましたが、これは、偽造や変造が相次いだためでした。

 造幣局の職員は「500円のように『どうしても変える必要』があるような場合を除いては、変更は難しいです」と話しました。

1982年から、100円硬貨以来15年ぶりに登場した旧500円
1982年から、100円硬貨以来15年ぶりに登場した旧500円 出典: 朝日新聞

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