お金と仕事
ギザ10より?予想外の価値の10円玉 平等院鳳凰堂、実物との違い
昭和61年は前期と後期で価値が違うことも
家にいることが多く、できることが限られる今。家にあるお金に高価なものがないか、探しています。以前の記事ではギザ10の価値を紹介しましたが、それよりも高い可能性のある10円玉が存在します。最高だと数千倍の価値に? 発行されてから来年で70年を迎える10円玉。描かれている平等院鳳凰堂と実物との違いも合わせて、調べてみました。(朝日新聞デジタル編集部・影山遼)
今回も私の愛読する『日本貨幣カタログ2020』を価格の参考にします。コイン販売業者らでつくる日本貨幣商協同組合が発行したこの本、現在の貨幣でなく、昔の刀幣や古文銭、大判金などの価格が列挙されています。
貨幣ごとの保存状態によって「完全未使用品」「未使用品」「極美品」「美品」「並品」の5段階に分かれ、それぞれの価格が載っています。
ちなみに、この価格は基本的に加盟店での販売価格です。私たちが店に買い取ってもらう価格と販売価格は、残念ながら異なるそうです。
価格の変わり目となるのは昭和61年。「前期」と「後期」で異なります。前期ですと、その前後の昭和60年や62年のものとほとんど変わらず、完全未使用品でも500円にしかなりません。ですが、後期は価格がグンと跳ね上がる可能性があります。
見分けるポイントは、描かれている平等院鳳凰堂のデザイン。
前期は両側にある「翼廊」の屋根の先端が鈍角、後期は鋭角。前期は屋根に切れ目があり、後期は切れ目なし。さらに、中央にある「中堂」の階段が、前期は縦線が分離し、後期は融合しているという細かな違いです。カタログでは前期・後期ともに同じ価格が記載されていますが、以前、取材した都内の買い取り専門店によると、発行枚数が少ない昭和61年の後期のものは数千倍の価格になることもあります。
そもそも、なぜ10円玉に平等院鳳凰堂が描かれているのでしょうか。
まず、わざわざ言うまでもありませんが、平等院とは京都・宇治にある世界遺産の寺です。今から1千年近く前の永承 8(1053)年に、極楽浄土をイメージして鳳凰堂が建てられました。昭和26(1951)年に国宝に指定され、京都の清水寺などと一緒に平成6(1994)年に世界遺産に登録されました。
国宝になった昭和26年、鳳凰堂が描かれた10円玉が登場します。以前、話を聞いた貨幣を製造している造幣局の職員によると、昭和26~33年の10円は、当時の最高額面であることを示すために、縁にギザギザがつけられています。いわゆる「ギザ10」というものです。
昭和32年に発行された100円銀貨にもギザがついており、区別が難しくなったことで、昭和34年にギザなしのデザインになりました。発行期間が短いため、価値のある存在となっています。ただ、最後の発行は昭和33年。もう目にする機会も少なくなってしまいました。
平等院鳳凰堂が採用された理由について、当時の最高額面の期待を背負ったことから、「偽造ができないように、精密な図柄が選ばれたということも考えられます」と造幣局。
現在の10円玉に描かれている平等院鳳凰堂ですが、最初に紹介した昭和61年のデザイン以外にも、実物と少し異なる部分があります。この図柄は、昭和25年から7年かけて行われた「昭和の大修理」より前、つまり1世代前の図面がもとになったそうです。
そのため、一つ目の違いが中央にある「中堂」の屋根にでてきます。10円玉に描かれた屋根の傾きは緩やかで美しく見えるのですが、雨が降った時の水の流れが悪く、屋根が傷む原因に。そのため、昭和の大修理で屋根の傾きを急にする変更がありました。なかなか見た目には分かりません。
二つ目の違いとしては、中堂の土台に描かれている粒が実物にはありません。実物は、長方形の石なのです。
10円玉に描かれているのは筒状の石を積み上げた「亀甲積(きっこうづみ)」、実物は長方形の石を組み上げる「壇上積(だんじょうづみ)」という工法で作られています。昭和の大修理よりもさらに前に行われた修理の際に、元々の「壇上積」が「亀甲積」に変更され、昭和の大修理で当初の形に復原したとされています。
旅行ができるようになったら、実物と比べてみたいものです。
何度か書いてきましたが、貨幣カタログを発行している日本貨幣商協同組合の鑑定料は、鑑定品の価格が10万円未満なら5千円、1千万円以上なら15万円などとなっています。偽物や鑑定不能品は1品につき5千円かかるということ。毎度のことながら鑑定するかどうか迷います。
この時期、家の中から、なんとかして珍しいお金を見つけたいと思います。もしかしたら見つけただけで満足してしまうかもしれません。可能であれば、インターネットのオークションで、状況が許せば、お店で売れたら良いなと考えています。
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