連載
#10 #おうちで本気出す
「ギザ10」「フデ5」レア硬貨の世界 数千倍に跳ね上がる10円玉も
電子マネーで値上がりした1円玉のカラクリとは
新型コロナウイルスの感染拡大によって外出を控えるようになり、自宅の掃除が進んだ方も多いのではないでしょうか。昔、祖父からもらった古い硬貨を私は見つけました。他にも、なぜ集めたのか分からない10円玉貯金もありました。もしかしたら中には高価なものもあるのでは? 愛好者の多い「ギザ10」や知る人ぞ知るレア硬貨など、価値のある硬貨とその理由をまとめました。(朝日新聞デジタル編集部・影山遼)
まずは昭和の硬貨から。誰もが名前を聞いたことのある「ギザ10」を紹介します。
そもそも、なぜギザがついているのか。貨幣を製造している造幣局の職員によると、昭和26~33年の10円は、当時の最高額面であることを示すために、縁にギザギザがつけられています。昭和32年に100円銀貨が発行され、この100円にもギザがあって区別が難しかったことから、昭和34年に現在のギザのないデザインへと変わりました。
コイン販売業者らでつくる日本貨幣商協同組合が発行する『日本貨幣カタログ2020』によると、一番高いのは、登場したばかりの昭和26年の「完全未使用品」で8万円。他も、完全未使用品は1万8千円~5万円と高額です。ただ、一番新しくても昭和33年のため、完全未使用品が出てくる可能性は限りなくゼロに近いです。
「並品」なら可能性はあります。こちらの定義は「全体に摩耗がすすみ高い部分の図案の多くが消えている。キズが多く、汚れ、変色も全体に見られる」です。昭和26年で50円、昭和32年で80円、昭和33年で100円。ちなみに、昭和27~30年は額面通りの10円にしかなりません。保存状態として最も多いとされる「美品」になると、昭和33年の200円を筆頭に、昭和32年150円、昭和26年100円、昭和27~30年が50円になります。あまり驚くほどではありませんが、見つけることはできそうです。
「ギザ10」ほど知名度はありませんが、語感の似た「フデ5」と呼ばれる硬貨もあります。
5円の裏面(年号のある方)を見てみると、書いてあるのは洋数字ではなく漢数字ですが、昭和24年~33年に発行されたものは、現在のゴシック体ではなく、楷書体で書かれています。これが、筆で書いたように見えることから「フデ5」と呼ばれています。
造幣局のサイトでは「5円貨については、昭和24年に穴あきの黄銅貨として、『稲、歯車、水』と『双葉』のデザインで誕生しました。その後、昭和34年に文字の書体が楷書体からゴシック体へと改正され、現在の5円貨のデザインとなっています」と説明しています。
完全未使用品だと一番高額なのが、昭和27年の4万円。美品・並品になると、昭和32年が高く、美品500円、並品250円。期待が持てる価格です。
他にも、高価な昭和の硬貨はいくつかあります。
まずは、昭和61年後期に発行された10円玉。前期ですと、その前後の昭和60年や62年のものとほとんど変わらず、完全未使用品でも500円にしかなりません。ですが、後期は価格が跳ね上がる可能性があります。取材した都内の買い取り専門店によると、発行枚数が少ない昭和61年後期のものは(状態にもよりますが)数千倍の価格になることもあります。
描かれている平等院鳳凰堂の両側にある「翼廊」の屋根と、中央にある「中堂」の階段のデザインが少し異なっており、そこで前期と後期を見分けます。
さらに、昭和62年発行の50円玉にも価値があります。
先ほどの専門店によると、それまでの流通量が多かったため、昭和62年は、収集家向けの「ミントセット」(造幣局が発行する完全未使用品のセット)用のみの発行となり、枚数が少なかったことが背景にあるといいます。発行枚数は前年の10分の1以下で、並品でも4千円になります。ですが、専門店は「なかなか単品で見かけることはないんではないでしょうか。基本はセットで取引されていると思います」と教えてくれました。
今の50円玉よりも、直径が4mm大きい「菊50円ニッケル貨」(昭和34~41年発行)も、昭和35年の完全未使用品で1万5千円、並品でも500円になります。サイズが違う50円玉を見つけたら、確認してみましょう。
古いから価値があるというわけではなく、平成の硬貨も侮れません。
まずは、平成23~25年の1円玉です。平成20年には、1億3481万枚の1円玉を製造していましたが、電子マネーの普及などで、平成22年の790万枚を最後に、平成26年に再開するまで一般向けの製造を中止していたためです。その間、ミントセットが作られただけでした。
同じく発行枚数の少ない平成28~30年と同様に、完全未使用品もしくは未使用品で、額面の3千倍以上の価格になります。ただ、平成26年に1億枚以上発行していたのと比べると、この間の発行枚数は、それぞれ50万枚前後にとどまりますので、見つけるのはハードルが高そうです。
5円玉も1円玉と似たような事情を抱えています。こちらも電子マネーに押され、平成22~25年は、ミントセット用のみの販売となりました。元々、相対的に発行量の少ない50円玉も、平成22~25年はミントセット用のみでした。この間の5円玉と50円玉は、少なくとも(並品でも)2千円以上になるといいます。
その他にも、前年に新500円玉が発行され、500円玉の流通が増えたことで、発行枚数が激減した平成13~14年の100円玉も、希少な分、額面以上の価値が期待できます。
今回紹介した価格は、残念ながら店頭での販売価格です。私たちが店に買い取ってもらう価格と販売価格は、異なるそうです。それでも、高く売れるかもしれないというロマンはあります。ぜひ一度、自宅の硬貨を探してみてはいかがでしょうか。
1/33枚