10代から消費者金融に借金を重ねたお笑いコンビ・スパローズの大和一孝さん(48)。一時は400万円に膨れ上がり、借金を整理する法的な手続きである「債務整理」を2回経験しました。そんな大和さんは現在、独学で得た投資の知識を生かしてラジオのレギュラー番組を持ち、キャンプグッズ販売を手掛けるなど活躍しています。借金を重ねた理由や1回目の債務整理について聞きました。(ライター・小野ヒデコ)
――初めて借金をしたのはいつでしたか?
福岡でお笑いコンビを結成した18歳のころです。ギャラも安いのでアルバイトで稼がなければいけないのに、ほぼ毎日飲みに行くような文化がありました。生活が苦しくなっていったとき、先輩芸人から「魔法のカードがある」と教えられたんです。消費者金融のカードのことでした。
保証人も不要、自分の名義だけで10万円まですぐに借りることができました。当時は消費者金融のCMや広告があふれていて、周りの芸人仲間の多くが借金をしていた。「借りたらバイトをしなくても遊べるし、すぐ売れるから大丈夫」という感覚でした。借金をしながらギャンブルもしていました。
当時、僕が借りたカードローンの金利は今考えるとあり得ないくらい高いものでした。1社目で借りたお金を、2社目で借りたお金で返済する。返したことで信用力が上がって、もっと借りられるようになって、また借りる。途中からは計算するのも嫌になる……という流れで借金がどんどん膨らんでいきました。
全部で40社くらいに借りたり返したりしていました。一度に多くて15社の消費者金融のカードを持っていて、財布がパンパンでしたね。借金は総額400万円、利息だけで毎月10数万円になっていました。お金を借りたのは最初の数年でしたが、8年ほど利息を支払い続けました。
――借金をしていたときはどのような生活を送っていましたか?
九州から上京してからはお笑いの仕事がほぼゼロで、バイトを2、3個掛け持ちして週7で働く生活でした。消費者金融に2日に1回支払いをする生活だったので、心安らかに寝られるわけもなく、本当に異常でした……。面白いボケを思いついても言わない日があったんですよ。認められたら芸人の仕事が増えて、バイトができなくなると思って。
いつ、どこに、どれだけ支払うか、返済のことしか頭にありませんでした。返済のために、知り合い30人にお金を借りて、毎月30人に返すようなこともしていました。ずっと自転車をこぎ続けていて、こぐのを止めた瞬間に終わる、というギリギリの生活でした。
――1回目の債務整理で「任意整理」(貸金業者などの債権者と交渉し、利息をカットするなど毎月の返済負担を軽減するための手続き)をしたときのことを教えてください。
25歳前後だったと思います。当時、債務整理なんて言葉は知らないし、その方法も知りませんでした。何かの話の中で、無料で相談できる窓口があると聞いたから行ってみた、という感じでした。
対応してくれたのは弁護士さんだったと思うのですが、僕の場合、突き抜けて高い金利で支払いを続けていたので、元本と適正な利息の額はすでに支払っているとみなされ、目の前で消費者金融のカードをハサミで切られました。急に支払金額が0円になって、連絡ももう来ませんからって言われたので、「え!?」って。
しかも、「お金がかなり返ってきますよ」と言われました。本来支払う必要のなかった利息を払いすぎていた分(過払い金)があったからです。そんなの聞いたことがないから、「いや、借金がなくなるだけで十分です」と言って、数百万円という過払い金請求を断ってしまいました。借金がなくなることはズルい、みたいな後ろめたい気持ちがあったんだと思います。
そのときは春で、確か新宿御苑の近くだったと思うのですが、今でも覚えていることがあります。債務整理の手続きが終わった後にビルのエレベーターから降りて外に出た瞬間、春の匂いがしたんです。雑草も輝いて見えた。それまで、匂いすら感じなくなっていたんですね。
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債務整理をした大和さんですが、再び借金を繰り返してしまいます。記事の後編では、2回目の借金生活で「自己破産」を選んだその後を描きます。(記事は2025年8月1日時点の情報に基づいています)
【プロフィール】
大和一孝(やまと・かずたか)さん
1976年、福岡県生まれ。1995年にお笑いコンビ「スパローズ」を結成。過去に400万円の借金をし、2度の債務整理を経験。現在は投資の知識を生かし、ラジオNIKKEIでパーソナリティーを務める。芸人ヒロシさんらが立ち上げたソロキャンプ集団「焚火会」に属し、キャンプグッズのプロデュースもしている。
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