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お金と仕事

2度の借金で「自己破産」芸人を変えた〝成功体験〟と〝投資の勉強〟

「自分自身の整理が必要」と話します

消費者金融に借金を重ね、債務整理を経験したお笑いコンビ・スパローズの大和一孝さん=撮影はいずれも大野洋介
消費者金融に借金を重ね、債務整理を経験したお笑いコンビ・スパローズの大和一孝さん=撮影はいずれも大野洋介

目次

10代から消費者金融に借金を重ね、一時は400万円に膨れ上がったお笑いコンビ・スパローズの大和一孝さん(48)。2回の債務整理(借金を整理する法的な手続き)で「自己破産」したものの、現在は独学で得た投資の知識を生かしてラジオのレギュラー番組を持ち、キャンプグッズ販売を手掛けるなど活躍しています。マイナスからプラスへ、起死回生に至るエピソードを聞きました。(ライター・小野ヒデコ)

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再びの借金生活……自己破産へ

――1回目の債務整理で「任意整理」(貸金業者などの債権者と交渉し、利息をカットするなど毎月の返済負担を軽減するための手続き)をしましたが、再び借金をされています。どのような経緯があったのでしょうか。

借金していた人が、生活スタイルを何も変えなければ、また借金する生活になるのは簡単なことなんですよね。
 
1回目の借金のときもそうだったんですが、1社目で借りるハードルが異常に高いんですよ。でも一度借りてしまったら、加速していくというか、右肩上がりで借金額が増えていくというか……。400万円借りたときのしんどさを知っているからこそ、「10万ぐらいなら余裕だろう」と思ってしまうんです。
 
以前のようにギャンブルはしなくなっていましたが、「先輩芸人が後輩におごる文化」はあって、おごると慕われますし、僕自身、おごってくれた先輩をかっこいいと思っている節がありました。でも、それは芸で稼いだお金だからかっこいいのであって、借金してでもおごるのがいいなんていう間違った文化を信じていたんですよね。
 
だんだん生活が乱れていって、追い込まれるとストレスでまたお金を使ってしまう。債務整理という制度で借金が整理されただけで、僕自身は何も変わっていなかったんです。
 
「借金をしていたときは周りの人にも優しくできないし、感覚が麻痺していました」と話す大和一孝さん
「借金をしていたときは周りの人にも優しくできないし、感覚が麻痺していました」と話す大和一孝さん
――今度は、債務整理のなかでも「自己破産」(裁判所に申し立てて借金の返済義務を原則として免除してもらう法的手続き)という選択をしたのはなぜですか。

借金が200万円ほどになってしまったとき、このままではまた繰り返してしまうと思い、弁護士さんに相談しました。自己破産について、自分で調べ、弁護士さんにも聞いた上で、デメリットよりメリットの方があると思ったんです。
 
――自己破産後の心境や生活はいかがでしたか?

1度目の任意整理の時は「助かった、やった!」という感覚でしたが、自己破産した後はさすがに「このままじゃダメだ」と感じ、何がダメだったのかを考えました。それでも最初のころは追い込まれるとまた人にお金を借りてしまって……。それぐらい、悪習慣を正すのは難しいんですよね。
 
借金する人って、「継続」ができないと思うんですよ。僕、虫歯がすごく多いんですけど、歯磨きが継続できなかった証拠です。
 
そこで、「腕立て伏せを10回する」という目標を立てました。「毎日やる」と決めるとプレッシャーになると気づき、「思いついたときにやる」に変えました。その結果、10年以上続いています。こうした小さな成功体験を一つずつ増やしていきました。
 
部屋の整理も始めました。何かをやろうと思っても、部屋が散らかっていたら、物を探すのに10分かかり、そのうちに「やめておこう」となる可能性もありますよね。だからまずは部屋の整理の勉強からしました。そうやって少しずつ自分を変えていきました。
 
お笑いコンビ・スパローズの大和一孝さん
お笑いコンビ・スパローズの大和一孝さん

「お金の知識がないのは危険」 子どもたちに金融教育も

――そこから独学で投資の勉強をされていますね。

もともと小学生のときに「株式必勝学」というテレビゲームをやっていて、数字に抵抗もありませんでした。お金に関する本をたくさん読んで、ラジオの番組が始まってからは、億万長者になった投資家の話も聞くようになりました。

よく言われることですが、コップに水を入れたとして、あるだけ飲み干していたら何も残らないけど、コップからあふれたしずくをすすって生きていく、つまりは利子を生み出すことの大切さを学びました。

初めて株を買ったら、何もせずともお金がお金を生み出したんですよ。これまで、何もせずともお金がお金を奪い取っていった。それが真逆になったとき、「10代のときにこの知識があれば……!」と心から思いました。

最近はご依頼をいただいて、小中学校の子どもたちにお金について教えるボランティアもしているんです。お金の知識がないのは危険だから、なるべく早く知っておいたほうがいいと思うんです。


――苦しかったとき、人から言われた印象的な言葉はありますか?

僕は周りの人に本当に恵まれていて、自己破産をした後、付き合っていた彼女が「アルバイトで稼いだお金で後輩におごるのって、何にもかっこよくないよ!」と真剣に向き合ってくれて、そういう飲み会に行くのをやめました。
 
「人からお金を借りているお前が何を言ってもダサい」「ちゃんと返さないと、お前の言葉が濁るよ」と言ってくれる人もいました。そのときお金を借りていた人たちに全額返済したら、本当に僕の話を聞いてくれる人の数が増えたんです。
 
それから、急に顔つきが変わったねとか、背が伸びたねとか言われるようになって。測ってみたら、本当に背が伸びていました。借金をしていたころは、背中を曲げて、下を向いて生きていたんでしょうね。
 
お笑いコンビ・スパローズの大和一孝さん
お笑いコンビ・スパローズの大和一孝さん

人に話すことが「歯止め」に

――今後、また昔のように借金をしてしまうかもしれないという怖さはないですか。

全然ありません。でもそういえば、この前、借金したんですよ。日本政策金融公庫に。それは、キャンプ場経営を始めるために借りた融資です。借金が悪いわけではなくて、何のためにどういう借金をするかが重要なんですよね。これまではお金を生かす使い方ができていなかったので、過去の自分を批判されても当然だと思います。

 
――現在借金で深刻に苦しんでいる方に、伝えたいメッセージをお願いします。

借金のことを誰にも言わずに、借金が膨らんでいる人も多いのではないかと思います。でも、素直になって人に話すことで、もう繰り返さないという歯止めになるかもしれません。

やっぱり自分自身の整理が必要なのだと思います。部屋の整理も心の整理も人間関係の整理も、全部が伴わないと根本的に解決しないんですよね。
 
借金で苦しんでいるのに「ギャンブル行こうぜ」って誘う人や、働かないといけない状況を知っていて飲みに誘う人も、今のあなたにとっては良くないかもしれない。付き合う人を選ぶことも必要です。お金だけではなく、すべての整理を一緒にやっていくのがいいと思います。

(記事は2025年8月1日時点の情報に基づいています)
 
【インタビュー前編】18歳から借金、総額400万円…相談して気づいた利息の「過払い」
  ◇  ◇  ◇

【プロフィール】
大和一孝(やまと・かずたか)さん
1976年、福岡県生まれ。1995年にお笑いコンビ「スパローズ」を結成。過去に400万円の借金をし、2度の債務整理を経験。現在は投資の知識を生かし、ラジオNIKKEIでパーソナリティーを務める。芸人ヒロシさんらが立ち上げたソロキャンプ集団「焚火会」に属し、キャンプグッズのプロデュースもしている。
  ◇  ◇  ◇

<債務整理のとびら>
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