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2017年12月29日

「お前らちゃんとしろよ」は本当に効果ありますか?湯浅誠さんの問い

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社会活動家であり、法政大現代福祉学部教授の湯浅誠さん

社会活動家であり、法政大現代福祉学部教授の湯浅誠さん

 12月、ひきこもり当事者・元当事者が主体となった株式会社「ウチらめっちゃ細かいんで」が設立されました。参画した当事者は「外に出たい、仕事をしたいと思っても、選択肢がなかった」と話します。その背景には、今まだ日本に根強く残る「あるべき論」が、当事者を苦しめています。「このままだと社会が多様化すればするほど、生きづらくなる」と話すのは、社会活動家の湯浅誠さんです。多様性の強みを発揮するためには、どうしたらいいのでしょうか?


本人にとって「ない」のも同然

――ひきこもり当事者が社会と関わりたいと思っても、「選択肢がない」と感じるのは、どうしてでしょうか

 国が主導するひきこもりへの支援事業が始まったのがまだまだ最近だからです。

 高度成長期以降、日本の男性のあるべき姿とは、学校を出たら会社に入り、家族をつくって養って、また子どもも学校に通って…というサイクルでした。女性の場合は家庭に入るっていう姿ですよね。それが、90年代の就職氷河期世代から、このサイクルの中からドロップアウトする人たちが増えてきました。

 それまでって「普通にしていたらこのサイクルから外れないはず」という考え方なので、90年代に問題が明らかになってきても、すぐには世の中に受け止められなかった。必要性を社会が気付いて、対応がとられ始めたのがこの数年です。

 自治体にも窓口などが設置されていますが、何万人もいる自治体でも数は限られています。自分のアクセスできるようなところが1カ所だけで、しかもそれが自分に合わないものだったら、本人にとって「ない」のも同然ですよね。

 

――当事者が主体となる意義とは

 やはり同じような当事者にもたらすインパクトが違います。例えば私が当事者の方に「できますよ」と言っても、「そうは言っても、私たちとは違うんでしょ」という風に思われるでしょう。直接会えば違いますけど、空中戦ではなかなか響かない。

 どんな業界でも一緒ですが、そこで自分と同じ目線の人が、となると訴える力が違います。理想を言うと、行政は当事者同士を出会わせ、つなげるような働きができるといいですよね。

「どうしたらいいかわからないもの」への共感

――ひきこもりに対して「なまけている」と思う人はまだまだいます

 今の時代になれば、自分の家族とまではいかないけれど、親族や知り合いの子どもとか、どこかに自分の能力を活用できていない人はいるはずです。

 人って「どうしたらいいかわからない」ものを見ると、見なかったことにしたり、考えたりするのをやめてしまう。自分でわからなくても、「ここにいけば対処できる人がいる」とか、その先のイメージができることが大事です。そのためにも実践的に示す必要があります。

 それに当事者たちの迷いが共有、共感されていくことが、一番の力になると思います。そういう意味で「お前らちゃんとしろよ、しっかりしろよ」って言いたくなる人たちは、それで本当に効果がありますかねっていうことを聞きたいし、考えてもらいたい。

「『お前らちゃんとしろよ』は本当に効果がありますか?」と問う湯浅さん

「『お前らちゃんとしろよ』は本当に効果がありますか?」と問う湯浅さん

「普通じゃないもの」は釈明しないといけない?

――「社会復帰」という概念も、いわゆる「一般企業に毎日出勤する」ということではなく、いろいろな形があるはずです

 多様性の強みを発揮するには、「普通」と「普通じゃない」と言われるものの、序列関係をなくす必要があります。

 例えば、専業主婦が当たり前だったときは、働く女性に対して「子どもはどうするの?」とか「働いていたら子どもがかわいそう」って言われて、それがつらいわけです。そしたら今度は働く女性が増えて、メインとして捉えられるようになると、専業主婦に「どうして働かないの?」と逆転します。

 なんとなく「普通」がいいもので、「普通じゃないもの」は釈明しないといけない立場になる、これは居心地が悪いですね。これは誰がメインになってもそうです。

 この「普通」「普通じゃない」の構造が変わらない限り、世の中が多様化すればするほど、生きづらい人が増えていくことになります。いずれも等価であるという価値観が生まれることが理想です。

「普通」と「普通じゃないもの」の、序列関係をなくす必要があるといいます(写真はイメージです)

「普通」と「普通じゃないもの」の、序列関係をなくす必要があるといいます(写真はイメージです)

出典:https://pixta.jp/

 働き方改革も、その人の状況に合ったオーダーメイド型の働き方っていうのができないとうまくいかない。例えばお子さんの年齢などによっても、働ける範囲って変わってきますよね。その延長線上にひきこもりの方がいると思っています。それぞれ力を発揮できる場所があるっていう発想は一緒なのですが、まだ射程がそこまで至っていない。

 やはりそういう意味では、ツケが回ってきています。

 90年代にこうした問題に早く反応していればと思います。少子化問題でも、今慌てても子どもはいきなり増えない。子どもを産める年齢の女性だって増えません。

 就職氷河期に増えたひきこもりの方も、もう50代にさしかかろうとしています。生活保護で対応するしかなくなることに、反発する人だっているけれども、あなたたちが気付かなかったことに、社会として引き受けていくしかないんじゃないかと思っています。

量としてマジョリティになっても「マイノリティ」

――これから、ひきこもりや結婚を選ばない人、いろいろな形で「ひとり」で生きていく人が増えていくとしたら何が起こりますか

 量としてマジョリティになっても、規範的にマジョリティになることは別です。規範的にはマイノリティっていうことはあり得るわけです。

 個人化していく世の中を先取りしていけば、非嫡出子の不利益は完全に解消していかないといけないし、パートナーシップも認めて、結婚制度のあり方も、社会保障のあり方も個人化していかないといけない。

 社会の変化と同じ歩調で制度的にも進められればいいですけど、それに対する反発もそれだけ強くなるので、逆にふれるバックラッシュが起こります。そうしたものを促進したら「家族を壊す」と今でも言われるように。

――そこで重要になるのは

 そういう人たちの声も拾いつつ、抑えつつ、ここら辺でいくしかないよねっていうところを見極めていく。半歩先ずつ進んでいくっていう役割が政治に求められます。

 安倍さんだって、10年前の第一次政権のときには大学無償化なんて絶対言いませんでした。働く女性にも、どちらかというと批判的だったんじゃないでしょうか。それくらい世の中が変わったということです。安倍さんは、政治家として、その社会の世論や雰囲気を感じ取っている。

 その安倍さんが旗振り役を務めたことで、批判していた人たちの声が小さくなっている面がある。その意味では、安倍さんは女性の社会進出に関して、大きな役割を果たしていると思います。

     ◇
 ゆあさ・まこと 社会活動家。法政大現代福祉学部教授。1969年生まれ。著書に「『なんとかする』子どもの貧困」「反貧困」など。



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出典:作・吉谷光平
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