連載
#7 ソロジャーの時代
ヒトカラ・一人焼き肉…海外からはどう見える? 各国の独り身座談会
一人旅やヒトカラ(一人カラオケ)、一人焼き肉など、一人向けのサービスが次々と生まれています。一人で遊ぶのも不自由がなくなりつつある一方、職場や身内からの「忠告」に生きづらさを感じる人もいます。外国では、独り身でいることについてどのようなイメージがあるのでしょう? 海外の「ソロジャー」たちに、日本の「おひとりさま事情」について聞きました。
話を聞いたのは、日本に住む中国、韓国、アメリカ、ドイツの人たちです。まず「ひとり」についての印象を聞いたところ、全員がまず、「結婚せず、独身を貫く人」というイメージを答えました。
中国では独身者の数が2億人を超え、韓国男性の生涯未婚率は15年で6倍に急増。初の10%台になったと伝えられています。ドイツやアメリカでも独身を貫くことは珍しくなく、日本と似たような状況だと言えそうです。
中国や韓国での独身者に対するイメージは、どちらかというとマイナスなものが強いそうです。中国では一時、独身者に対してポジティブな意味の「単身貴族」という言葉を使っていましたが、最近はまた変わってきています。
中国人の江美(ジャンメイ)さん(仮名、女性30代独身)は「単身貴族は、結婚や家族の束縛がなく、一人で生きるという意味でした。でも最近は『独身は貴族か犬か』という論争が出てきて、単身貴族と呼ばれていても、『独身の犬』という惨めなイメージがつけられています」と話します。特に女性は、『剰女』(残された女)というレッテルが貼られ、肩身が狭い厳しい環境にあるそうです。
韓国人のイ・ヨナさん(仮名、女性30代独身)によると、韓国では「おひとりさま」のままでいると、周りの親戚、特におばさんたちがすぐ「彼氏まだいないの?」「結婚しないの?」と聞いてプレッシャーを与えてくるそうです。
一方、アメリカ人のテイラーさん(男性20代独身)はちょっと違う意見です。「ソロになるのも、結婚するのも自分の選択」という考えがアメリカでは浸透しているので、独身であっても特段わずらわしいことはないそうです。
さらに、ドイツではプラスのイメージがあるそうです。ドイツ人のタベヤさん(女性20代独身)は「ソロには『自由、気ままで生活できる』というニュアンスがあります」。
国によっても変わる独身のイメージ。では、日本の「おひとりさま」についてはどう感じているのでしょうか?
中国の江さんは「中国より、日本のほうが生活しやすいと思います」と語ります。一人向けのサービスが充実していることを挙げ「一人カラオケや一人焼き肉をする友人は、かなり楽しんでいます。日本は安全安心で、サービスもいいので、おひとりさまに優しいです」。
韓国のイさんも「日本では生活が便利で、一人で自由に生活できます。独身でも不自由や不利益は感じないような気がします」と同じような感想でした。
一方、欧米側の受け止めは異なります。ドイツのタベヤさんは日本の生活が便利だと認めた上で、次のように話しました。
「一人焼き肉や一人ラーメンはちょっと考えられません。食事は基本的に友人や家族と一緒にするもの。私は大学で勉強をしていますが、ランチなどはやはり友人とするものです。一緒に食べる友人が見つからない日は、コンビ二などで何かを買って寮で食べるか、ランチ自体をパスすることもあります」
アメリカのテイラーさんも、「アメリカでも、映画館やレストラン、バーなどに一人で行く習慣はあまりないです。平日のランチぐらいは仕方ないかもしれませんが、週末に一人で行動するのは、『友達がいない』という目で見られると思います」
またテイラーさんは「起業など一人で働くことを考えると、アメリカや中国の方が環境が良い」と話します。日本で起業をしようと調べた時に、サポートなどの面で高いハードルを感じたそうです。
それぞれの結婚観についても聞きました。離婚を経験している江さんは独身生活を満喫しながらも、再婚願望があるそうです。「彼氏が海外にいて、結婚を考えています。ただし、すぐに結婚して一緒になるともまだ考えていません。今の生活を楽しみつつ、結婚についても真剣に考えています」
イさんも結婚願望はありますが、「独身のままでいるかもしれない」とも話しました。「今は非常勤雇用という不安的な身分なので、『結婚をして安定したい』という気持ちがあります。定職を見つけて、生活が楽になれば、ひとりの生活を悠々と過ごしたくなるかもしれません。高額な報酬を稼いでいる知り合いの女性がいますが、彼女はおひとりさまを満喫しています」
アメリカのテイラーさんは「結婚したい」と話しました。「日本人女性の彼女を愛しているので、結婚を考えています」。テイラーさんは、起業という意味での「ソロ」を考えているそうです。
明確に独身を選ぶと答えたのは、ドイツ人のタベヤさんだけでした。
「ドイツでは一人で過ごすライフスタイルが普通なので『パートナーがいないといけない』というプレッシャーがあまりありません」
タベヤさんの友人の日本人の女性が、彼氏と別れた時、その友人は「新しい彼氏を探さなければ」と焦っているように見えたそうです。
「ドイツだったら、探すというより、次の彼氏を『待つ』ということになります。大学で法律を専攻しているので、将来は自分のキャリアを中心にした生き方をしていきたいです」
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