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#31 #就活しんどかったけど…
就活の早期化「学生が急がされている感じがする」 教員側の受け止め
2025年卒の就職内定率は、すでに23.9%という調査も
2025年卒対象の会社説明会が、3月1日に「解禁」されました。この「解禁」はあくまでも政府主導のルール上でのこと。実は2025年卒の大学生の就職内定率は、2月1日時点ですでに23.9%という調査結果もあります。日々学生と接している教員は、就職活動の「早期化」をどのように受け止めているのでしょうか?
2月下旬、東京都内で就活に関するパネルディスカッション(リクルート就職みらい研究所主催)が開かれ、近畿大学経営学部准教授の岩井貴美さんと、立教大学経済学部特任准教授の翁理香(あやか)さんが就活をめぐる学生の状況について語り合いました。
政府のルールでは、3月1日に会社説明会など「広報活動の解禁」、6月1日に面接など「採用選考の解禁」となっていますが、強制力はありません。
リクルート就職みらい研究所の調査によると、2025年卒の大学生の就職内定率は2月1日時点で23.9%。2024年卒よりも4ポイント増加し、現在の選考スケジュールとなった2017年卒以降で最も高い水準になりました。
内定取得者のうち2社以上に内定した学生は48.3%で、2024年卒よりも22.2ポイント増加。こうしたことから、同研究所は「2月1日時点までに企業が出す内定の総量が前年に比べ増えたことが考えられる」としています。
企業の採用活動が早まる現状について、学校現場では課題感を募らせています。
近畿大学准教授の岩井さんがゼミに所属する3年生にインタビュー調査をしたところ、早期選考の時期は1月中旬から下旬が多かったそうです。
「24年卒は早期採用する業界が限られていましたが、25年卒では業界や企業の規模は関係なくなってきている」と説明します。
「この時期はゼミ活動の終盤、もしくは定期試験があり、学生が学業に集中しづらいのも事実です。時期を少しずらしていただければ、学業に集中できるのではないでしょうか」
就活に臨む学生については〝二極化〟していると岩井さんは指摘します。
将来就きたい職業や働き方を絞っている学生は「就活の早期化はじっくり考えられる機会であり、メリットが多い」と捉えている一方、絞り切れていない学生は「心の準備ができていないのにどんどん企業からアプローチが来て、『非常に急がされている』と感じる」そうです。
立教大学特任准教授の翁さんは、「早期化の波は、学生の意思で止められたり、変えられたりするものではない」と話します。サポートする側が状況に合わせて学生の後押しをしていくことが大切だと述べました。
学生へ対しては「企業の採用活動は期間が集中しているように思えるかもしれませんが、2次募集や3次募集など通年で採用している企業もあります。チャンスはゼロにならないので、焦らずに、できる事から取り組めばよいと伝えています」と話しました。
就活の早期化が言われる一つに、大学3年生の夏などに経験するインターンシップがあります。
翁さんは、コロナ禍以前よりも有給のインターンシップに参加する1、2年生が増えてきていると感じているそうです。サマーインターンに参加する3年生に関しても、「一斉に就活を始められるとその波についていけないかもしれないので、前倒しでインターンシップに参加するという学生もいる」と話します。
2025年卒からインターンシップは「就業体験を伴う」「実施期間が5日以上」「大学3年以降の長期休暇中に実施」といった条件を満たしたものと定義されました。また、企業はインターンシップに参加した学生の情報を6月1日以降の採用選考に使えるようになります。
翁さんは、「インターンシップ期間に何を経験し、何を得たいか、学生と企業双方がマッチングしていくことがとても重要になる」と指摘。「社会や大人との接点を増やすためにインターンシップや説明会に行き、感じたフィット感や違和感を言語化することが学生の自己理解につながっていきます」
岩井さんによると、学生たちはサマーインターンが始まる3年の夏を「就活のスタート」と捉えているそうです。
「就職活動は学生にとって大きなライフイベントで、全て自分で決めなければいけないこと。いつスタートして、何をして、どう終止符を打つか、全て個人が決めるため不安な状態」だといいます。
2025年卒のゼミ生へインタビュー調査をしたところ、ほぼ全員がインターンシップに参加して早期採用に進んでいるという結果になったそうです。中には1次2次面接を免除されて選考に進んだケースもあったといいます。
岩井さんは「就活は人それぞれやり方が違います。何が正しくて、何が間違っているかということは全くなくて、最後に自分が納得して就職活動を終えることが一番重要になってくると思います」と話しました。
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