連載
#23 #就活しんどかったけど…
「お祈りメール」見たことない 就職エージェントを使った学生の本音
「合否のたびにフィードバック」「押しが強い」メリット・デメリットも
サイトに登録して求人を見たり、説明会に参加したり、様々なかたちで展開する就職活動。「就職エージェント」に依頼して、無料で専任のアドバイザーのサポートを受けながら就活する学生もいます。
就職エージェントを使って内定した大学4年生の女性は「自分の向き不向きや考えていることを整理できた」と評価します。
一方で、紹介された企業の面接を断りづらいと感じたこともあったそうです。
都内の私立大学に通う4年生の女性(22)は、3年生だった2023年1月、就職エージェント経由で受けたIT企業に内々定しました。
就活を始めたのは3年生の夏。就活サイトに登録したり、企業説明会やIT系企業のインターンに参加したり、同級生よりも精力的に活動していたそうです。
ただ、希望の業界や職種を絞れていたわけではありませんでした。
就職エージェントについてはSNSで発信している人の投稿を見て、「プロが一緒に就活を進めてくれるなんて心強い」と興味を持っていました。
3年生の秋、軽い気持ちでIT系の就職エージェントに登録し、オンラインで面談を受けました。費用は0円。就職エージェントは、紹介した学生が内定して入社が決まれば、企業から成果報酬を得ることができます。
女性は、就活について大学のキャリアアドバイザーに相談したことはあったものの、友達やゼミの指導教授に話をしたことはありませんでした。「相談相手やサポートがほしい」という気持ちがあったといいます。
就職エージェントとの最初の面談は、自己紹介や雑談で終わりました。面談の最後、「次回までにワークをやってみない?」と勧められ、長所や短所、興味のあるITの職種などについて記入するキャリアシートを渡されたそうです。
女性はIT業界に絞って就活していたわけではありませんが、「早めに就活を終わらせたい」と思っていたため次回の面談も受けようと決めました。
「担当者が親身になって、私のことを知ろうとしてくれている」姿勢に好感が持てたことも、面談を続ける動機になったといいます。
2度目の面談は、キャリアシートの記入内容をもとに女性の人となりや希望を掘り下げていきました。
IT系のインターンに参加してプログラミングを体験した際、女性は「自分には合わないかも」と思っていたそうです。
しかし、エージェントの担当者は、女性の「集団行動は苦手でひとりで作業することが好き」という性格や「タイピングゲームが趣味」などを踏まえてか、「IT業界向いてるよ」と勧めてきたといいます。
担当者の言葉に納得した女性は、そのままエージェントを使って就活を続けることにしました。
「それまで自分という人間をあまり言語化してこなかったので、他人から見ての意見を聞けたことがとても大きかったです」
登録から1カ月は、週1のオンライン面談と、LINEでこまめに連絡を取りながら自己分析を進めました。それまで分からなかった自己分析の仕方も、担当者が「壁打ち相手」となって進められたといいます。
その後、担当者が女性の希望に合う求人を1度に2~4社ほど紹介してくれ、女性が応募する企業を決めていきました。
「面接で忙しくなってきて担当者と面談する予定を入れられないときでも、LINEでやり取りしていました。『こういう内容を聞かれるから、企業についてもっと深堀りしておきましょう』と一緒になって企業研究もしてくれました」
就職エージェントから10社ほど紹介されたうち、7社を受けたという女性。そのうち5社は最終面接に進み、ベンチャー企業1社から内々定が出たといいます。
近年、一定数の学生が就職エージェントを利用しています。
2023年卒の学生(n=1618)を対象にしたリクルート就職みらい研究所の調査によると、「応募した(応募する予定)企業の採用活動の方法・形態(学生全体/複数回答)」で、15%が「人材紹介サービスを通じた採用」と回答。2022年卒の学生(n=2868)では13.7%、2021年卒の学生(n=2111)では14.5%でした。
就職情報会社マイナビによると、同社のエージェントサービス「マイナビ新卒紹介」経由の就職決定件数は、2024年卒で前年比122.3%(9月末時点)と伸びているそうです。
サービスを利用した学生からは、「求人紹介だけでなく、話を聞いてくれて、そこからこういう仕事が合うのではないか、とアドバイスしてくれた」「就職活動についての知識がほとんどない人にとっては、1対1で、個人の持つ疑問に対し納得するような回答を得られる」といった感想が届いているといいます。
前述の女性も、「最初の面談から就活をしている感じはなく、なんでも話せました」と評価します。
就活では、企業から届く不採用連絡「お祈りメール」に胸がえぐられる思いをする学生もいます。
しかし、女性の場合はエージェントを通じて合否を聞いていたため「お祈りメール」を受け取ることはなく、不採用の場合でも「一方的に否定されたと思わずにすみ、あまりつらくなかった」そうです。
担当者は、選考の合否にかかわらず、企業から届いた「面接での良かった点・改善すべき点」をフィードバックしてくれました。
うまくいかなかった時は「ちょっと合わなかったのかもしれないね」「次頑張ろう」と励ましてくれたといいます。
「『次も落ちたらどうしよう』と不安に思うこともなく、面接が苦になりませんでした」
満足度は高いと話す一方で、「紹介された企業の中で『ここは違うな』という場合でも、断りづらいと思うことはありました。押しも強かったです」と振り返ります。
「私自身、紹介された求人に違和感があっても言語化できなかったので、担当者から『1度受けてもいいんじゃない?』と言われて流された部分もあります。そこは割り切って接する必要があったかもしれません」
しかし、気分が乗らない選考でも「面接の練習」と切り替えていたという女性。就職を決めた企業に関しては、当初から納得して進めていたそうです。
就職エージェントを検討している学生に向け、女性は「登録するエージェントにもよると思いますが、就活に悩んだら1度使ってみてもいいかもしれません」と話します。
その上で、「エージェント担当者との相性や、そのエージェントが自分の希望する業界・企業の求人を持っているかどうかの見極めも大切です」としています。
1/12枚