「主なやりとりはメールに」
「イヤイヤ期の表現、なんでみんな似ているの?」や「『ごめんなさい』となかなか言えないのはなぜ?」など、子育て中の読者や記者が抱いた疑問をひもとくwithnewsの連載「乳幼児の謎行動」で、6回にわたり回答者として協力くださいました。
この企画に、「赤ちゃん学」に携わる小西さんの協力を仰ぎたいと、小西さんが所属する同志社大学赤ちゃん学研究センターに私が連絡をしたのは、昨年末のこと。
京都・木津川市にあるセンターに足を運ぶと、出迎えてくれたのは、小西さんのスケジュール管理などを長年担当している小野恭子さん(同センター職員)でした。
この頃、小西さんは入院されていましたが、小野さんからは「面白い企画なので協力させてほしい。やりとりは主にメールになる」と前向きな返事をいただき、企画は進み出しました。
主語は「子ども」
メールで受け取る小西さんの言葉には、優しさの中に切れ味鋭いまなざしがあり、毎度うなりながらメールを読んでいました。
初めて受け取った小西さんからの回答には、こんな前置きがありました。

例えば「どうすれば覚えてほしい言葉を覚えてくれるでしょうか」という質問に対しては

「まだまだやるぞ」感じていた
小西さんとは、メールでのやりとりを続けつつ、電話で補足取材をすることも増えました。
電話を通して聞く小西さんの声には張りがあり、現代の子育て報道全般に対しての怒りをぶつけてくださることも、個人的な子育ての悩みに向き合っていただくこともありました。「まだまだやるぞ」というエネルギーが満ちあふれていたように感じていました。
大人の「安全安心」、子どもにとっては
その際、小西さんがお話されていたことで、印象的だった言葉があります。
子どもは親に余裕があると、かわいくて、とてもおもしろい存在です。
「余裕」とはつまり、悪いことをしてもいいことをしても、受け止めてあげるということ。
子どもなりの「作戦」ってあるんです。その場をやり過ごすための子どもなりの作戦です。その作戦を大人は読まないといけない。いまの親は引き出しが少なく、遊びがないんですよね。
また、子どもを大人と同じように扱う親が多い。
信号の話(「信号の意味を2歳児に覚えてもらいたい」という悩み)があったでしょう。教えればどうにかなると思っているんですよね

間違った情報が多すぎます。そのほとんどが親目線です。「子どもがどう思っているかを考えているのか?」と疑問に思います。
小児科医をしていて、親に「こどもはウソをつくようになりましたか?」とよく聞くんです。すると、親からは「ウソをつくと困る」という答えがまず最初に来る。でも、私は「ウソをつくのは発達です」と伝えます。
うそをつくのはどういう能力だと思いますか?
「正直に言うと怒られる」→「言いわけをする」→「だます」という流れです。つまり、反応を知った上で裏をかくということです。
親からすれば『困ったこと』、それは、能力が伸びているというということになります
発達障害の話に戻ると、理由も聞かずに「みんなと同じ」を求める。子どもの世界に大人のルールを持ち込んでしまいすぎるのは、すごく怖いことです
想像力のない子が増えてしまっています。
大人は明るい清潔感のある部屋を「安心安全」と言うけど、子どもからすれば、暗闇や隠れ家のない場所は安心できない。

子どもが「持ち物」の感覚
「子を自分の持ち物と思ってしまう感覚があるような気がする。それは僕は危険だと思う。『自分のつくった子ども』という価値観ではなく、コウノドリが持ってきたという発想がないと、子は自由になれない」

多くの子育て世代からのコメントをいただき、たくさん読んでいただけました。