0歳~就学するまでの子どもたちの、思いも寄らない行動や不思議な言葉遣いに心当たりはありませんか?編集部では「#乳幼児の謎行動」をSNSで募り、乳幼児の「なんでそうなる?」を、同志社大学赤ちゃん学研究センター長で小児科医の小西行郎さんに聞きました。2回目は、「息子をしかったときの反応が謎すぎる」です。小西先生は「子どもの作戦勝ち」と笑います。作戦?子どもが作戦?どういうこと??
2歳の娘、信号の意味を覚えてくれない…悩む父に専門家「無理です」
息子が2歳になったばかりの頃、夕ご飯を一緒に食べていた時のことです。おなかが空いていなかったのか、それとも好きな物がなかったのか、理由はわかりませんが、食事の載ったお皿を手で払いのけた息子。「こぼれちゃうよ!だめ!」と注意すると……あれ?寝た?
息子は座った姿勢のまま目をつぶってしまいました。名前を呼んでもだめ、肩をたたいてもだめ。いつもいすに正座してご飯を食べている息子が目をつぶっている様子は、さながら修行僧のよう。しばらくすると、すっと目を開け、「ごさまでした(ごちそうさまでした)」。面白くて怒るに怒れない。これってうちだけですか。
〈相談者:2歳の息子がいる女性記者(31)〉
子どもの作戦勝ちです
小西さん
おもしろいことを認めてあげるのはいいことだし、親も楽しむことが大事です。
子どもなりの「作戦」ってあるんです。その場をやり過ごすための子どもなりの作戦。その作戦を大人は読まないといけないですね。
記者
ところで、この「目をつぶる」という行動に私は驚いたのですが、よくあることなんでしょうか?
小西さん

記者
小西さん
記者
子どもの気持ちの切り替えを促す声かけを
小西さん
記者
小西さん
記者
拒否するしぐさの理由は?
記者

小西さん
記者
話は変わりますが、うちの場合は息子は2歳になったいまでこそ、喜怒哀楽がわかりやすくなってきましたが、赤ちゃんの感情って、なかなか想像しにくく、ストレスに感じることもあると思います。
小西さん
生きるために重要な「負」の感情
小西さんによると、赤ちゃんの最初の感情は「快」と「不快」であり、新生児期にすでに存在するといわれているといいます。「ただ、快と不快については、不快の方が早く出現するのではないか」と小西さんは言います。「痛みの感覚は胎児期にあり、いわゆる未熟児の医療の中でも注射などをすると赤ちゃんが泣くということなどから、不快という感情があるのではないかと思われます」
小西さんによると、それ以降、快の感情は喜び、望み、愛情や達成感といった感情に種類も増え、不快の感情もまた年齢と共に成長し、嫌悪、怒り、失望や嫉妬、恐れ、心配などの感情が生まれてくるようです。
記者
小西さん
先生、私、勝ちました!
小西さんの「子どもなりの作戦がある」という言葉がとても印象的でした。取材後、息子に向き合うときに、その言葉を思い浮かべて接することが増えました。
たとえばこんな出来事がありました。
息子の最近のお気に入りの服は、キリンが描かれた半袖パジャマです。保育園に行くときも、どうしてもその服が着たいと言います。しかしいまはまだ半袖には早い時期。「寒いから別の服にしよう」と言ってみたり、クローゼットから自分で選ばせようとしてみたり…。でもどれもうまくいきません。
そんなとき、「作戦で勝つんだ!」と思い立ち、最近息子がはまっているアニメを引き合いにし、「この服着たらシンカリオンになれるよ!」と差し出した長袖の服、すんなり着てくれました。
勝った……。小西先生、私、勝ちました!
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小西行郎(こにし・ゆくお)
同志社大学赤ちゃん学研究センター長、教授。小児科医。日本赤ちゃん学会理事長。
専門は小児神経、発達神経科学。1947年生まれ。京都大学医学部卒業。
主な著書に「赤ちゃんと脳科学」(集英社新書)、「赤ちゃんのしぐさBOOK」(共著、海竜社)、「はじまりは赤ちゃんから」(赤ちゃんとママ社)、「発達障害の子どもを理解する」(集英社新書)、「今なぜ発達行動学なのか―胎児期からの行動メカニズム」(診断と治療社)など。
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赤ちゃん学
小児科学、発達認知心理学、発達神経学、脳科学、ロボット工学、物理学、教育学、霊長類学などの異分野研究の融合による新しい学問領域。赤ちゃんの運動・認知・言語および社会性の発達とその障害のメカニズムの解明から、ヒトの心の発達までを対象とする。2001年には「日本赤ちゃん学会」が設立。08年に同志社大学内に開所した赤ちゃん学研究センターは、16年に文部科学省の共同利用・共同研究拠点「赤ちゃん学研究拠点」として認定された。
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