0歳~就学するまでの子どもたちの、思いも寄らない行動や不思議な言葉遣いに心当たりはありませんか?編集部では「#乳幼児の謎行動」をSNSで募り、乳幼児の「なんでそうなる?」を、同志社大学赤ちゃん学研究センター所長で小児科医の小西行郎さんに聞きました。第4回は「言いたくない言葉と、そうじゃない言葉の違いって?」です。質問者は2歳児に「ごめんなさい」を言わせたがりますが、小西さんとのやりとりを通じ、結果的に記者は反省することに…。どんな気づきがあったのでしょうか?
「これは?」「あれは?」となんでも興味を示し、「消防車だよ」「ダンプカーだよ」などと教えると、そのまま繰り返します。それなのに「ごめんなさい」だけは、言葉を繰り返すことを頑なに拒みます。もしや、プライドゆえに「ごめんなさい」が言えないのですか??
〈相談者:2歳の息子(取材当時)を持つ女性記者(31)〉
小西さん
記者
おもちゃ投げた理由を推測・理解して
小西さん
記者
小西さん
記者
小西さん
しかし、少し余裕がある場合は、おもちゃを投げる理由を推測して「○○だから、腹を立てて、おもちゃを投げたんだよね」という言葉かけをして、子どもの行動を理解しようとする親の姿勢を示すことは大切です。
記者
小西さん
それよりは「おもちゃが壊れるでしょう」の方が分かりやすいと思います。
記者
冒頭の質問内容に戻りますが、「ごめんなさい」が言えないのはプライドがすでに芽生えているということなんでしょうか?
「ただ謝りたくないだけ。それだけの話です」
小西さん
いまの子育て世代全般に言えることですが、子どもを大人の物差しで見ているから苦しくなるんです。大人のミニサイズとして訳の分からないことをしていると思うから苦しくなるのではないでしょうか。
記者
子どもの発達段階を踏まえずに、自分たちの「当たり前」の中で子どもを見てしまうこと、思い返せばたくさんあります。反省。
小西さんによると、発達の段階の中では、9か月頃から「自我の目覚め」、1歳半ごろから「自己主張」…の二つの段階を経て自己肯定感ができるようになります。「それがいわゆるプライドといわれることの始まりかもしれません」
記者
小西さん
記者
小西さん

「悪いことをした」と謝れるのは4歳ごろ
記者
小西さん
それ以前は、繰り返して教え込めば「ごめんなさい」と言うかもしれませんが、本当に「ごめんなさい」という気持ちができたのではありません。大事なのは、「ごめんなさい」と言えば許してくれるということを経験的に学ぶことではないかと思います。
記者
ただ、「こういうときには『ごめんなさい』と言うんだよ」と教えていくこと自体は間違っていませんよね?
小西さん
「ごめんなさい」が言えないからといって、「どうして言えないの!」と叱ることにはなるべきではないですね。
子育ては「教えないと覚えない」のではなく、子どもは自分で学ぶ存在だということを忘れないでください。
コミュニケーション、言葉だけじゃない
この質問をさせていただいてから半年。息子は2歳半を過ぎました。最近「ごめんなさい」を適切なタイミングで言えることが増えました。
ただ、うちの子の場合はまだ「ごめんなさい」と言葉にするよりも、「仲直りのギュウー」といって抱きしめる方が気持ちを表しやすいようです。
「ごめんなさい」という言葉にとらわれるのではなく、「けんかは嫌だな」「仲良くしたいな」「傷つけたくないな」という感情のコミュニケーションができればいいのかなと、気づかせてもらいました。
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小西行郎(こにし・ゆくお)
同志社大学赤ちゃん学研究センター長、教授。小児科医。日本赤ちゃん学会理事長。
専門は小児神経、発達神経科学。1947年生まれ。京都大学医学部卒業。
主な著書に「赤ちゃんと脳科学」(集英社新書)、「赤ちゃんのしぐさBOOK」(共著、海竜社)、「はじまりは赤ちゃんから」(赤ちゃんとママ社)、「発達障害の子どもを理解する」(集英社新書)、「今なぜ発達行動学なのか―胎児期からの行動メカニズム」(診断と治療社)など。
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赤ちゃん学
小児科学、発達認知心理学、発達神経学、脳科学、ロボット工学、物理学、教育学、霊長類学などの異分野研究の融合による新しい学問領域。赤ちゃんの運動・認知・言語および社会性の発達とその障害のメカニズムの解明から、ヒトの心の発達までを対象とする。2001年には「日本赤ちゃん学会」が設立。08年に同志社大学内に開所した赤ちゃん学研究センターは、16年に文部科学省の共同利用・共同研究拠点「赤ちゃん学研究拠点」として認定された。
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