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#7 #乳幼児の謎行動

おしりふきを出しまくる赤ちゃん…実は世の中の変化を実験中

おしりふきの中身をひたすら引っ張り出す=イラスト・minchiさん
おしりふきの中身をひたすら引っ張り出す=イラスト・minchiさん

目次

乳幼児(0歳から就学するまで)の、「なんでそうなる?」と不思議に思う行動について、同志社大学赤ちゃん学研究センター所長で小児科医の小西行郎さんに聞く「#乳幼児の謎行動」シリーズ。第6回は、ハッシュタグをつけてツイッターでつぶやいてくださった方からの質問「赤ちゃんの延々と繰り返す行動が心配になります」です。
一見理由のなさそうな行動ですが、小西さんによると赤ちゃん特有の行動でした。

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赤ちゃんの繰り返し行動が気になります。というのも、うちの息子は1歳5カ月ごろから、空気清浄機の隙間に私の化粧品をひたすら詰めます。化粧水、乳液……もらいものの化粧品サンプルが、気づくと隙間に詰め込まれていきます。
「繰り返し」という意味では、ちょっと目を離した隙に、おしりふきの中身を延々と出し続け、1袋開けてしまうことも。かわいいですが、ひたすら同じ事を繰り返す姿に少し心配になることも。
「繰り返す」ことで、何かを学んでいるのでしょうか。赤ちゃんは何のために繰り返すのでしょうか。
〈相談者:1歳7カ月の息子がいるイラストレーター・おうさまけんさん(38)〉

泣くことで「お母さん発見!」

 

小西さん

正確には、赤ちゃんが同じことを繰り返すのではなく、その行動によって必ず同じように変化することを認識するといわれています。

 

相談者

繰り返す中に変化を見いだす…。なんだか哲学チック!
どういうことでしょうか?

 

小西さん

たとえば、自分が泣けばお母さんがあやしてくれることで「母親の存在」を発見するのが新生児期の発見です。
2,3か月ごろ、目の前のモビールと赤ちゃんの手をひもで結べば、「手を動かすと必ずモビールが動く」という事を見つけます。
こういったことを心理学者のピアジェは循環反応と言っています。
繰り返すことで学習するのではなく、繰り返し同じ行動を起こすことで必ず起こる何らかの変化を学ぼうとするのです。

決まった反応を見て安心

 

相談者

「繰り返す=学習」というより、「繰り返す=発見」が大きいのですね!
大人の場合、「繰り返し」には「覚える」という効果を期待する場合があります。子どもの場合も同じなのでしょうか?

 

小西さん

ある程度繰り返さないと赤ちゃんには認識しにくいといえるかもしれません。また、決まった反応が常に起こるということによる安心感もあるのではないかと思われます。
ピアジェ(1896-1980年)はスイス生まれの心理学者。児童の心理的発達の研究に生涯をささげた。ピアジェの「循環反応」とは、同じことを繰り返すことが赤ちゃんが物事を学習していく方法だと説いています。
小西さんの説明より
空気清浄機の吹き出し口に化粧品サンプルをひたすら詰める=イラスト・おうさまけんさん
空気清浄機の吹き出し口に化粧品サンプルをひたすら詰める=イラスト・おうさまけんさん

 

相談者

ところで、ずっと同じことを繰り返すことはいいことなのでしょうか?
危なくない限り、基本的には息子の気が済むまでやらせていますが、これでいいのでしょうか?
ただ繰り返させるだけでなく、親として工夫できることがあれば教えていただきたいです。

 

小西さん

1、2時間も繰り返すことは良いこととは言えないと思います。
保護者の方が少し遊びの幅を広げるように対応してあげることも必要かもしれませんね。
手遊びをしたり、赤ちゃんの真似をしたりして、こちらの世界に引きこむ事も必要だと思います。そのようにして赤ちゃんの気持ちの切り替えをしてあげることも重要だと思います。

「飽きる」のではなく「興味が変わる」

 

相談者

反対に、次々におもちゃを引っ張り出してきたり、ひとつの事に全く集中力がなく「心配」という親御さんの話も聞きます。子供に飽きるという感情ってあるのでしょうか?

 

小西さん

飽きるのではなく、次から次へと興味を持つものが変わるといったほうが良いかもしれません。

 

相談者

「集中力がない」という言葉にはちょっとマイナスイメージがあったので、その言葉で安心しました……。

 

小西さん

この時期の子どもは、いろいろな物やおもちゃに興味を持ち、次から次へと新しい遊びに挑戦する中で、好きな物をみつけて熱中するようになります。
子どもの発達にはこういった現象は頻回に起こります。
一喜一憂することなく様子を見ることも大切かもしれません。そのうちに、同じ行動と思っていた行動でも少しずつ変化し、新しい行動の芽が出てくることが分かるようになります。

 

相談者

ありがとうございます。見守りつつ、子どもの興味を引き出す手助けをしていきたいと思います!

     ◇

小西行郎(こにし・ゆくお)
同志社大学赤ちゃん学研究センター長、教授。小児科医。日本赤ちゃん学会理事長。
専門は小児神経、発達神経科学。1947年生まれ。京都大学医学部卒業。
主な著書に「赤ちゃんと脳科学」(集英社新書)、「赤ちゃんのしぐさBOOK」(共著、海竜社)、「はじまりは赤ちゃんから」(赤ちゃんとママ社)、「発達障害の子どもを理解する」(集英社新書)、「今なぜ発達行動学なのか―胎児期からの行動メカニズム」(診断と治療社)など。


     ◇

赤ちゃん学
小児科学、発達認知心理学、発達神経学、脳科学、ロボット工学、物理学、教育学、霊長類学などの異分野研究の融合による新しい学問領域。赤ちゃんの運動・認知・言語および社会性の発達とその障害のメカニズムの解明から、ヒトの心の発達までを対象とする。2001年には「日本赤ちゃん学会」が設立。08年に同志社大学内に開所した赤ちゃん学研究センターは、16年に文部科学省の共同利用・共同研究拠点「赤ちゃん学研究拠点」として認定された。

  withnewsでは赤ちゃんの謎行動を募集しています。「洗濯物を装着する」「前転したくてお尻を押されるのを待っている」など、みなさんの中で「そういえば……」とひらめいたものをハッシュタグ「#乳幼児の謎行動」をつけてツイートしてくれませんか? 編集部が取材にかかります。

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