乳幼児(0歳から就学するまで)の、「なんでそうなる?」と不思議に思う行動について、同志社大学赤ちゃん学研究センター所長で小児科医の小西行郎さんに聞く「#乳幼児の謎行動」シリーズ。第6回は、ハッシュタグをつけてツイッターでつぶやいてくださった方からの質問「赤ちゃんの延々と繰り返す行動が心配になります」です。
一見理由のなさそうな行動ですが、小西さんによると赤ちゃん特有の行動でした。
「繰り返し」という意味では、ちょっと目を離した隙に、おしりふきの中身を延々と出し続け、1袋開けてしまうことも。かわいいですが、ひたすら同じ事を繰り返す姿に少し心配になることも。
「繰り返す」ことで、何かを学んでいるのでしょうか。赤ちゃんは何のために繰り返すのでしょうか。
〈相談者:1歳7カ月の息子がいるイラストレーター・おうさまけんさん(38)〉
泣くことで「お母さん発見!」
小西さん
相談者
どういうことでしょうか?
小西さん
2,3か月ごろ、目の前のモビールと赤ちゃんの手をひもで結べば、「手を動かすと必ずモビールが動く」という事を見つけます。
こういったことを心理学者のピアジェは循環反応と言っています。
繰り返すことで学習するのではなく、繰り返し同じ行動を起こすことで必ず起こる何らかの変化を学ぼうとするのです。
決まった反応を見て安心
相談者
大人の場合、「繰り返し」には「覚える」という効果を期待する場合があります。子どもの場合も同じなのでしょうか?
小西さん

相談者
危なくない限り、基本的には息子の気が済むまでやらせていますが、これでいいのでしょうか?
ただ繰り返させるだけでなく、親として工夫できることがあれば教えていただきたいです。
小西さん
保護者の方が少し遊びの幅を広げるように対応してあげることも必要かもしれませんね。
手遊びをしたり、赤ちゃんの真似をしたりして、こちらの世界に引きこむ事も必要だと思います。そのようにして赤ちゃんの気持ちの切り替えをしてあげることも重要だと思います。
「飽きる」のではなく「興味が変わる」
相談者
小西さん
相談者
小西さん
子どもの発達にはこういった現象は頻回に起こります。
一喜一憂することなく様子を見ることも大切かもしれません。そのうちに、同じ行動と思っていた行動でも少しずつ変化し、新しい行動の芽が出てくることが分かるようになります。
相談者
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小西行郎(こにし・ゆくお)
同志社大学赤ちゃん学研究センター長、教授。小児科医。日本赤ちゃん学会理事長。
専門は小児神経、発達神経科学。1947年生まれ。京都大学医学部卒業。
主な著書に「赤ちゃんと脳科学」(集英社新書)、「赤ちゃんのしぐさBOOK」(共著、海竜社)、「はじまりは赤ちゃんから」(赤ちゃんとママ社)、「発達障害の子どもを理解する」(集英社新書)、「今なぜ発達行動学なのか―胎児期からの行動メカニズム」(診断と治療社)など。
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赤ちゃん学
小児科学、発達認知心理学、発達神経学、脳科学、ロボット工学、物理学、教育学、霊長類学などの異分野研究の融合による新しい学問領域。赤ちゃんの運動・認知・言語および社会性の発達とその障害のメカニズムの解明から、ヒトの心の発達までを対象とする。2001年には「日本赤ちゃん学会」が設立。08年に同志社大学内に開所した赤ちゃん学研究センターは、16年に文部科学省の共同利用・共同研究拠点「赤ちゃん学研究拠点」として認定された。
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