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「崖っぷち米」スーパーに突然の登場 あえての命名…こめた思い

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今秋、スーパーに新商品「崖っぷち米」が登場しました。新米で新商品なのに、いきなり「崖っぷち」。いったい何が「崖っぷち」なのでしょうか。生産者や地元市の担当者に聞きました。
断崖絶壁と真っ青な海を背景に、力強い筆致で「崖っぷち米」と書かれたパッケージはインパクト抜群です。
このコメは福井県坂井市で生産された新米で、関東圏でスーパーマーケットを展開するベルクで5キロ4390円(税抜き)で販売されています。
品種名は「つきあかり」です。うま味に優れ、日本穀物検定協会の食味官能試験では、「コシヒカリ」より高く評価されているといいます。
今年、坂井市内の稲作農家で組織する一般社団法人「坂井担い手ネットワーク」が、ベルクと新米約400トンを直接納入する契約を結びました。
通常は、農家が生産したコメは集荷業者などを介して消費者に販売されます。今回は、一定量のコメを確保できるコメ農家を探していたベルクに直接納入する形式です。担い手ネットワークが関東圏のスーパーにこれだけ大量の新米を出荷するのは初めてだといいます。
それにしても、なぜ「崖っぷち」なのでしょうか。坂井市の担当者に聞いてみました。
イメージのもとは、坂井市の名勝・東尋坊の崖の風景だといいます。
「生産者たちが話し合う中で、東尋坊のあの崖の風景を知らない方にも伝わるように、あえて自虐的なニュアンスも込めて『崖っぷち』という言葉にして、商品をご覧になられた方に違和感をおぼえてもらえる商品名にしました」
「崖っぷち米」での販売は1万袋限定です。まずはインパクトのある名前で存在を知ってもらい、そのあとは「坂井米」として販売するそうです。
坂井市は福井県の北部に位置し、2006年に坂井郡の三国町・丸岡町・春江町・坂井町の4町が合併して誕生しました。
溶岩が冷えて固まるときにできた規則正しい柱状のわれ目(柱状節理)が広範囲に広がる東尋坊が有名です。自然豊かで、コハクチョウの飛来地としても知られています。
九頭竜川水系の肥沃な坂井平野が広がり、コメの出荷量で県内1、2位を争うコメどころでもあります。
担い手ネットワークの宮嵜恵介さんによると、坂井市の田んぼは、農業用水供給システムが確立されているそうです。
白山水系の豊富な水を蓄えた九頭竜ダムから、九頭竜川を経て地下のパイプラインで農地へ供給されるもので、宮嵜さんは「枯渇する心配のない水量があり、地下を通る冷涼で安定した水温の水での米作りができます」と話します。
こうした豊かな水でおいしいコメができるそうです。
また、担い手同士のネットワークで、栽培方法などの情報交換が盛んなことによる品質の向上ももたらされているそうです。
坂井市のコメは、ハナエチゼン(華越前)という品種が関西地方に出荷されています。ただ、関東圏では知名度が低いことが課題でした。
「関東という最大消費地に、坂井市産の農産物を卸業者を介さず自ら出荷できたことは大変うれしく、今後の展開が可能性に満ちあふれていると思っています」
市によると、9月中旬の「崖っぷち米」発売以降、売り上げは順調。購入者からも生産農家のホームページに、ポジティブな内容のメッセージが届いているそうです。
担い手ネットワークは、コメの安定供給に努めながら、今後はコメ以外の農産物も関東圏で広げていきたいと思っているそうです。
宮嵜さんは、「品質、量ともに需要に応じた供給を続けていきたいです。さらには、コメに関わらず坂井市産の多くの農産物を関東で消費してもらうことを目標に、小売業者はもちろん消費者のみなさんとも信頼関係を築いていきたいと思っています」と話しています。
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