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2017年06月08日

超常現象を30年間追う男 「なんでそんなこと?」聞いたら深かった

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 超能力、幽霊、UFO、ツチノコ……。超常現象・オカルト分野を30年もひたすら取材し続けている記者がいます。「なんでまた、そんなことやってんの?」。聞いてみると、「科学者」のあり方、社会の変化、深いこたえが返ってきました。(朝日新聞東京社会部記者・原田朱美)

【超常現象を30年取材してるけど、質問ある?】
1.UFO編
2.フリーメイソン編
  前編 日常を知りたい
  後編 歴史を知りたい
3.ミステリーサークル編
4.ニセ科学編
5.心霊現象編
6.予言編
7.超能力
8.なんでそんなことやってんの?編(今回)

皆神龍太郎さん。手にしているのは日本のフリーメイソン内部の写真が載った本

皆神龍太郎さん。手にしているのは日本のフリーメイソン内部の写真が載った本

出典: 朝日新聞

 皆神龍太郎さん(ペンネーム)。
 1980年代後半から、超常現象の取材を本格的に始めたそうです。

 実は皆神さん、「正体」は朝日新聞の社員です。
 科学系の記者歴が長いですが、超常現象の取材は「社業というより、ほとんど趣味」だそうです。

 

皆神さん

だって、そういう怪しい話ってめったに新聞に載らないですから

 たしかにそうですね……。

 ご本人は「趣味」とおっしゃいますが、出版に関わった本は100冊を超えます。
 専門家としてテレビ番組に招かれることもあり、この分野の第一人者です。
 超常現象に興味津々な若者の前で、語ってもらいました。

皆神さんの話を聞きに集まった若者

皆神さんの話を聞きに集まった若者

出典: 朝日新聞

「あるわけない」はヘン

 

若者

なんでまた、こんな変わった分野を追い続けているんですか?

 

皆神さん

私は、そもそもは新聞記者なので、客観的な事実というものが気になるんですよ。
超常現象が「ある」のか「ない」のか。

私が超常現象の調査や研究を始めた約30年前には、そこらにこだわってちゃんと調べようとする人が日本には全くと言っていいほどいなかった。
科学者で超常現象を批判する人ならいました。
ですが、単に「あるわけない」といった否定の仕方なんですよね。科学者なのに、批判する対象をちゃんと調査研究した上で否定していたわけじゃなかったんです。それってやっぱりヘンでしょ?

 

若者

言われてみれば、たしかに。

 

皆神さん

例えば、科学の分野では、論文も読まず、検証もしないまま相手のいうことを「間違っているに決まっている」って批判したら、逆にバカにされますよね。でも日本の科学界では、超常現象は調べなくても否定して良いということが、なにか不文律みたいにされていた。
メディアも似たようなものでした。NHKの7時のニュースとか朝日新聞の一面で
「ネッシー捕獲か?」なんて記事をみたことないでしょ?


1977年に発売されたぬいぐるみ「ネッシー君」

1977年に発売されたぬいぐるみ「ネッシー君」

出典: 朝日新聞

 

皆神さん

そういう怪しげな話を扱うのはスポーツ新聞とか大衆誌がやることであって、「相手をしない」ということが一流のジャーナリズムの証しなのだ、といった感じだったんです。
一種のタブーでもあったわけです。

 

若者

たしかに日本では「真面目に調べるに値しない」っていう空気はありますね。じゃあ、超常現象の取材を始めたきっかけってなんだったんですか?

 

皆神さん

超常現象の真偽をチェックしたいと思っても、何をどうしたらいいのか皆目分からなかったんです。そんなある日、仕事でアメリカに行っていた友人から、「お前の好きそうな本とか雑誌とか見つけたから」と段ボール1箱分送られてきたんです。アメリカの古本屋巡りで集めたとか言ってました。で、その本の中に、見たことのない雑誌が入っていた。
「スケプティカル・エンクワイヤー」という雑誌で、
アメリカの懐疑主義団体CSICOP(サイコップ)が出している機関誌でした。

 

若者

懐疑主義団体ってなんですか?

 

皆神さん

超常現象を科学的・批判的に検証する人たちのことです。

雑誌を読んで驚きました。占星術が当たるかどうかを科学者が確率計算をして真面目に検証していたり、自称超能力者にマジシャンが挑んでそのトリックを暴こうとしていたり、宇宙人に誘拐されたと主張する人々の証言の裏をジャーナリストが追っていたりしたんです。

バカにするのではなく、真っ正面から、ガチで挑んで調べていたんです。
ああ、こうして検証をすればいいのかと目からウロコの体験でした。


石川県にある宇宙科学博物館「コスモアイル羽咋」でアルバイト中の宇宙人「サンダー君」

石川県にある宇宙科学博物館「コスモアイル羽咋」でアルバイト中の宇宙人「サンダー君」

出典: 朝日新聞

「僕の前に道はない、だけど僕の後ろにも道はない」

 

皆神さん

そのまま見事に道を踏み外し、かれこれ30年というわけです。

サイコップは、ノーベル賞クラスの著名な科学者やジャーナリストらが集まって、超常現象の真偽を客観的に調べる組織で、1976年に結成しました。CSIと名前は変わりましたが、いまでも続いています。でも、そういう世界の情勢は、日本ではまだまったく紹介されていませんでした。1億2千万人も人がいるのに、
日本人だけが誰も知らなくていいのか
誰かが、こういったことをちゃんとフォーローしなくてはいけないのでは? そんな義務感を感じるともう足抜けもできず、そのままズルズルと30年でした。

「僕の前に道はない、だけど僕の後ろにも道はない」

って感じで、荒野をひたすら一人でさまよっているみたいでした(笑)
でも最近になってようやく、後に続く優秀な人たちが出てきてくれて、そろそろ引退できるかな、なんて思っています。

 

若者

サイコップのような組織がアメリカでできたのは、なんでだったんですか?

 

皆神さん

科学者の社会に対する姿勢が、日米でかなり違っていた気がします。
日本の科学者の多くって、自分の専門分野を狭くてもいいから、ひたすら深く掘ることをもって良し、としていた気がします。

一方、アメリカの一流の科学者たちは、自分たちが知識階級であることに誇りを持ち、故に自らの知識をアメリカ社会に還元し、
社会を無知から守る義務があると考えていたようです。だから、非科学的な迷信や無知な思い込みなどをアメリカ社会から駆逐しなくてはならない、と立ち上がってサイコップが結成されました。


社会を無知から守るのは科学者の義務?(画像はイメージです)

社会を無知から守るのは科学者の義務?(画像はイメージです)

出典: PIXTA

 

皆神さん

ところで、マジシャンが自称超能力者のトリックを暴こうとしたのは、なぜだと思います?

 

若者

なんででしょう。言われてみれば、わざわざ面倒くさそうなことに首を突っ込む必要ないですよね。

 

皆神さん

アメリカのマジシャンって、一流のエンターテイナーとみなされていて、社会的地位が高いし、収入もかなりいいんです。彼らは、マジックは人々を楽しませるためのものであって、
人を騙すためのものではないと考えています。
そういったプロのマジシャンの目からすると、自称超能力者たちはトリックを使って人々を欺いている存在なので、プロマジシャンの職業倫理からすれば許し難い存在と見えたようです。


マジシャンのマギー司郎さん

マジシャンのマギー司郎さん

出典: 朝日新聞

超常現象はゴミに似ている

 

若者

そのサイコップという組織が立ち上がって、アメリカでオカルトなものって減ったんですか?

 

皆神さん

ああ、それはいい質問ですね。
そう大きな変化はなかったと思います。

 

若者

じゃあ、無駄だったわけですか?

 

皆神さん

無駄でもないんですよ。
たとえば、みなさんがお医者さんだとしますね。毎日、患者さんを診察して病気を治すわけなんですが、ではそれで世界から病気が消えると思いますか?

 

若者

いえ、無理です。

 

皆神さん

今日、誰かの病気を治しても、明日にはまた新しい患者さんがやって来るわけですよね。でも、それを「無駄」とは誰もいわないでしょう? 

超常現象も同じです。
今日、ある超常現象を解決しても、明日またヘンな超常現象を言い出す人がどこかで生まれるわけです。このことをゴミの清掃業に例えて、こういった人がいます。
「今日ゴミを片付けても、明日には必ず新たなゴミがでる。でも誰かがゴミを片付けないことには、やがて街中がゴミだらけになってしまう」

 

若者

ゴミって言い切っちゃうんですね(笑)

 

皆神さん

超常現象って、結果的にはほとんどが見間違いや勘違いの山なんで、そう揶揄したくもなるんでしょう。片付けてもまたすぐ出てくる、というあたりは確かに似てはいますしね。
客観的なデータを付けて否定しても、そんなことを全然気にしない人たちが多くて、すぐにまた同じようなことを主張してきたりしますから。


京都・天橋立でゴミ掃除をする人々(2015年)

京都・天橋立でゴミ掃除をする人々(2015年)

出典: 朝日新聞

30年で変わったこと

 

若者

30年も超常現象を見てきて、最近の傾向ってなにか違いますか?

 

皆神さん

伝説となるような事件や現象がなくなった、ということでしょうか。
たとえば、UFOの時に説明した「ロズウェル事件」(1947年)などは、起きてからこの70年、人々があれこれと語り続け、一種のUFO伝説となっています。
こういった事件が伝説にまでなるには、人々の間で長く語り継がれ、話題として熟成する時間が必要なんです。

(注:ロズウェル事件=アメリカでUFOが墜落し、中から宇宙人が出てきて空軍が回収した、とされる事件)

ロズウェル事件は、長い時間をかけて「伝説」となった

ロズウェル事件は、長い時間をかけて「伝説」となった

出典: 朝日新聞

 

皆神さん

今は、ネットに新たな都市伝説が出てきても、次の日にはもう忘れられているでしょう。
調べる我々としても瞬間風速すぎて、追いかけていられないっていう感じです。
調べるのも謎を解くのも、すごく時間がかかるんですが、やっと解明した時にはもう誰も覚えていない、なんてことになっちゃうわけです。

 

若者

たしかに(笑)

 

皆神さん

超常現象を変質させたもっとも大きな原因はネットでしょうね。
人々が語り続けたものが、伝説になって、それがさらに「神話」にまで昇華する。そういう過程がなくなっちゃったというのは少し寂しいですよね。


――人々を魅了し続けてきた、「超常現象」も、大きな曲がり角を迎えているようです。

超常現象を取材して30年! 専門記者の秘蔵写真集
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日本のフリーメイソンの本拠地「グランドロッジ」の地下ホール
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出典:皆神龍太郎さん撮影
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