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連載

#3 教えて!超常現象記者!

ペリー、ワシントン、あの元首相も会員 フリーメイソンが変えたもの

フリーメイソン会員だった歴代アメリカ大統領たち
フリーメイソン会員だった歴代アメリカ大統領たち 出典: 皆神龍太郎さん撮影

目次

 「あの歴史上の人物は、実はフリーメイソン会員だった」。こんな噂を一度は聞いたことがありませんか? 超常現象・オカルト分野を30年間取材し続ける専門記者に、300年に及ぶ歴史をもつ秘密結社「フリーメイソン」について、聞きました。(朝日新聞東京社会部記者・原田朱美)

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【超常現象を30年取材してるけど、質問ある?】(全8回予定)
1.UFO編
2.フリーメイソン編
  前編 日常を知りたい
  後編 歴史を知りたい(今回)
フリーメイソンについて語る皆神龍太郎さん
フリーメイソンについて語る皆神龍太郎さん 出典: 朝日新聞

 皆神龍太郎さん(ペンネーム)です。

 超能力から、ネッシー、ツチノコ、死後の世界、生まれ変わり、予言、水素水、ホメオパシーまで。
 超常現象かいわいのテーマを30年間取材し続けている、専門家です。
 (そして、朝日新聞社員です)

 質問役は、怪しい話に興味津々な若者5人。
 多くの都市伝説がささやかれるフリーメイソンについて、気になることをぶつけてもらいます。

今年は300周年

 

若者

フリーメイソンって、いつからあるんですか?

 

皆神さん

近代フリーメイソンができたのは、1717年6月24日。英国のロンドンで発足しました。6月24日って、奇しくもUFO(空飛ぶ円盤)の誕生日と同じ日ですねえ。
UFOの誕生日はこちら

 

若者

え、なんか意味深(笑)

 

皆神さん

だから、近代フリーメイソンは今年ちょうど300周年なんです。
近代化する前にも、もっと古くからあったんですが、本当のルーツとなると古すぎてフリーメイソンにも資料が残っていないそうです。とにかく当時ロンドンに四つあったフリーメイソンの団体が一緒になって「本拠地をつくろう」と発足したのが、1717年6月24日。これが近代フリーメイソンの始まりです。
注:一般的には「フリーメイソン」という言い方が多いが、彼らは自分たちのことを「メイスン」と呼ぶことが多い。組織を指す場合には「メイスンリー」と言う。
1717年は、日本では徳川吉宗が将軍に就任した翌年。写真は和歌山県にある吉宗像
1717年は、日本では徳川吉宗が将軍に就任した翌年。写真は和歌山県にある吉宗像 出典: 朝日新聞

 

若者

日本には、いつ入ってきたんですか?

 

皆神さん

江戸時代後期ですね。1779年に長崎・出島に来たオランダの商人がフリーメイソンの会員だったという一番古い記録が残っています。
また、日本に開国を迫ってきたペリー提督もフリーメイソンでした。

300年前にできた近代フリーメイソンですが、大きく分けると、もともとのイギリス系と、大陸に渡った後にできた大東社と呼ばれるフランス系の二つの流派があります。

 

若者

なんだ、フリーメイソンってひとつじゃないんですね。

 

皆神さん

イギリス系は最も古典的です。女性は入れないとか。今もそうです。
あと、入会の条件に「創造主を信じていること」というのもあります。キリスト教じゃなくてもいいんですけど、「大いなる建設者」、つまり宇宙をつくった何者かを信仰していないと入れません。

一方フランスの大陸系は、そういう条件がありません。
たぶん、イギリス系の進化系がフランス系なんでしょうね。

マシュー・カルブレイス・ペリーさん。ペリー提督の兄の子孫
マシュー・カルブレイス・ペリーさん。ペリー提督の兄の子孫 出典: 朝日新聞

ヤクザと同じ?

 

若者

なんで300年も続いているんですか? 
なんでそんなに必要とされてるんですか?

 

皆神さん

わかりやすいのは、「呼び方」の変化ですかね。
フリーメイソンの秘密の入会儀式を通過すると、入会前は「ミスター」と呼ばれていたのが、入会儀式通過後は「ブラザー」と変わります。
つまり、他人の関係から義兄弟になったということです。儀式の秘密を共有しあう仲になったとして疑似血縁関係を結ぶわけです。簡単に言うと、ヤクザさんが互いに杯を交わして義兄弟になるのと似たようなものかもしれません。

 

若者

えええ? ヤクザ?

 

皆神さん

日本はもともと地縁血縁が強いお国柄ですが、移民だらけの国の米国となると地縁血縁はかなり薄いわけです。そこで「強い絆がほしい」となると、互いに義兄弟の契りを結ぶのが手っ取り早い。

仲間作りのひとつの手段として秘密結社があって、それが世界的なネットワークにつながるわけですから、けっこうな人脈となるわけです。

日本のグランドロッジの写真が掲載された本「怪奇秘宝戦慄編 」(洋泉社MOOK)を手に、フリーメイソンについて語る皆神さん
日本のグランドロッジの写真が掲載された本「怪奇秘宝戦慄編 」(洋泉社MOOK)を手に、フリーメイソンについて語る皆神さん 出典: 朝日新聞

 

若者

フリーメイソンって、なんでこんなに騒がれるんですか?

 

皆神さん

フリーメイソンが掲げる「自由・平等・友愛」って、結成当時は先進的な価値観でした。
そういう世界を望む人たちが次々入ってくるわけですが、フリーメイソンが生まれた当時の支配階級や旧体制側からすると「あいつらは革命派だ」と警戒しますよね。

 

若者

なるほど。

 

皆神さん

あと、フリーメイソンは、カトリックにかなり攻撃されてきました。
「邪教である!」といって、
何度も破門攻撃をくらっています。
ただ何度も破門されたということは、それだけ「入るな」という教えが守られていなかったということですよね。イギリスで近代フリーメイソンが発足したのは1717年ですが、十年経たずにヨーロッパ大陸にわたり、60年ちょっとで日本まできました。まさに、あっという間ですよね。

 

若者

たしかに。秘密結社なのに。

 

皆神さん

当時、カトリックって、世界で唯一、全世界的な情報網をもった組織だったんですよ。国を越える情報網を完備していた。それが、あっという間に、自分たちと同じことができる世界的組織ができてしまった。これは脅威ですよね。だから異端とか言って攻撃しました。

カトリックの総本山・サンピエトロ大聖堂
カトリックの総本山・サンピエトロ大聖堂 出典: 朝日新聞

明治政府と結んだ秘密の協定

 

若者

じゃあ、フリーメイソンって真面目な団体だったんですか?

 

皆神さん

そうですね。
なんで日本では「世界征服を企む組織」とか、へんちくりんな話になったかというと。
明治時代に、日本政府とフリーメイソンの間に、
ある秘密の紳士協定が結ばれたためなんですよ。

 

若者

ええええええ!? 
どういうことですか?

 

皆神さん

いま、私たちって、会いたい人といつでも自由に集まれますけど、昔はその自由がなかった。何人かが集まって話をしていて、警察はそれを怪しいと思ったら「おまえら何か企んでいるんだろう」と踏み込んでもいい、という時代だったんです。
つまり結社の自由がなかった。

 

若者

そんなことがダメだったんですか。驚きです。

 

皆神さん

で、さっき説明したように、フリーメイソンって誰も見ていないところで、誰にも知られないように秘密の儀式をやって、それを通過した人のみ「ブラザー(会員)」と呼ばれるわけです。
だから、儀式で集まっている時に警察に踏み込まれるなんて彼らは絶対に許せないわけです。で、日本政府と話をして、

「フリーメイソンの儀式は外国人だけでやる。日本人は入れない。その代わり日本政府は踏み込むな」

という約束をしたわけです。
皆神龍太郎、有澤玲著「トンデモフリーメイソン伝説の真相」(楽工社)

 

皆神さん

その紳士協定は、ずーっと続きまして、戦争が終わって1950年代になってようやく日本人も入れるようになりました。
なぜなら、GHQのマッカーサーがフリーメイソンの会員だったんですよ。

 

若者

そうなんだ!

 

皆神さん

一時期「昭和天皇をフリーメイソンの会員にしたい」という計画まであったようです。

 

若者

えええええ!! 
一大ニュース!!!

 

皆神さん

まあ、失敗しましたけどね。
天皇に「フリーメイソンとは何か」というご進講(天皇に講義すること)を行う計画があったんですが、フリーメイソン側の担当者が事件を起こしてしまってダメになったそうです。

こんな風に、なんとなく生臭い話もちょこちょこあるから、日本では陰謀論が根強いんでしょうね。

連合国軍最高司令官・マッカーサー元帥(左)。隣は来日した米陸軍参謀長アイゼンハワー元帥(1946年撮影)
連合国軍最高司令官・マッカーサー元帥(左)。隣は来日した米陸軍参謀長アイゼンハワー元帥(1946年撮影) 出典: 朝日新聞

皇族、元首相、アメリカ大統領…

 

皆神さん

そういえば、
日本の総理大臣経験者にはフリーメイソンの会員が2人いるんですが、ご存じですか?

 

若者

鳩山一郎さんは、ネットで見たことがあります。

 

皆神さん

ああ、よく知ってますね、そうです。
前回お見せした「友愛ロッジ」の人ですね。
鳩山一郎元首相(1952年撮影)
鳩山一郎元首相(1952年撮影) 出典: 朝日新聞

 

皆神さん

あとひとりは、東久邇宮稔彦さん。
終戦直後にちょっとだけ総理大臣をやった皇族です。実は総理大臣だけでなく、日本の皇族にもすでにフリーメイソンがいたというわけです。

 

若者

へえええ。

日本のグランドロッジ(本部)入口の壁には、日本の名誉あるフリーメイソン会員の名前が彫られている。東久邇宮稔彦、鳩山一郎の名前がある
日本のグランドロッジ(本部)入口の壁には、日本の名誉あるフリーメイソン会員の名前が彫られている。東久邇宮稔彦、鳩山一郎の名前がある 出典: 皆神さん撮影

 

皆神さん

アメリカで言えば、初代ワシントン以来過去の大統領の15人ほどがフリーメイソンでした。

 

若者

そんなにいるんですね。
なんで皆神さんは、フリーメイソンをそんなに調べているんですか?

 

皆神さん

もちろん面白いというのもありますが、「自由・平等・友愛」っていうフリーメイソンが掲げている精神って、戦後の日本そのものを支えた標語だともいえませんか? 
第二次世界大戦前って自由も平等もそうなかったでしょ?

フリーメイソン会員だったアメリカ大統領一覧。日本グランドロッジの地下に設けられたフリーメイソン資料の展示棚に飾られている。デザインのもとは、アメリカの会員に配られた1984年のクリスマスカードから取られている。
フリーメイソン会員だったアメリカ大統領一覧。日本グランドロッジの地下に設けられたフリーメイソン資料の展示棚に飾られている。デザインのもとは、アメリカの会員に配られた1984年のクリスマスカードから取られている。 出典: 皆神さん撮影

 

皆神さん

世界的に見ても、近代以前の世界って、宗教者とか王様が支配をしていて、たとえば体制側が信じる宗教に背いたら、火あぶりとかにされたりしてたわけです。

でも宗教や権力より、人間の理性をより尊重し「自由・平等・友愛」の旗印の元に、新しい世界を築こうとした人たちの「梁山泊」として、フリーメイソンが生みだされたわけです。

注:梁山泊=豪傑や野心家の集まりを指す故事由来の言葉

 

若者

なんか、壮大な話ですね。

 

皆神さん

だから、資本主義社会とか民主主義社会とかいった、今の近代世界を造り上げた裏には、陰謀ではないのですが、フリーメイソンの役割が大きかったのではないかと思っています。

でも逆に言えば、近代が生まれたその時点でフリーメイソンの社会的役目は、すでに終わっていたのかもしれません。
彼らが望んだ民主的社会が実現してしまった今の世界では、フリーメイソンは、いわば脱皮して蝶を生みだし後の「抜け殻」みたいな存在と言えるかもしれませんね。

 

若者

抜け殻……。

 

皆神さん

フリーメイソンは、巷で囁かれているような悪魔の組織ではないですが、かといって神でもない。
フリーメイソンの組織の内部で起きた金銭上のトラブルとか、人間関係のゴタゴタなどいくつも聞いてます。

 

若者

ええええ・・・。ちょっと引きます・・・。

 

皆神さん

ま、よくある人の集まりのひとつですよ。ちょっと変わってはいますけど。

でもね、時代を動かし作り出したって、やっぱりすごいことだと思うんですよ。
だから、私はフリーメイソンが好きなんですよね。

――悪の組織と思いきや、民主主義社会の誕生という、壮大なテーマにまで話が広がりました。次回は、少し懐かしい「ミステリーサークル」です。貴重な「物証」が登場します。(5月4日配信予定)

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