「超能力捜査官」って、本当にFBIにいるの? そういえば、昔ほど「超能力特集!」みたいなテレビ番組を見なくなったよね? 超常現象取材歴30年の専門家に、「超能力」の裏話を聞きました。(朝日新聞東京社会部記者・原田朱美)
1.UFO編
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後編 歴史を知りたい
3.ミステリーサークル編
4.ニセ科学編
5.心霊現象編
6.予言編
7.超能力編(今回)

皆神龍太郎さん(ペンネーム)です。
超能力から、ネッシー、ツチノコ、死後の世界、生まれ変わり、水素水、ホメオパシーまで。超常現象かいわいのテーマを30年間取材し続けている、専門家です。(そして、朝日新聞社員です)
超常現象に興味津々な若者たちを前に、語ってもらいます。
「FBI超能力捜査官」の真偽
若者
皆神さん
「FBI超能力捜査官」とうたってましたよね。
まず第1に、アメリカのFBIには「超能力捜査官」なんてもんはないんです。
若者

皆神さん
若者
皆神さん
この番組には、超能力で犯人の顔を見抜いて、その似顔絵を描くという「マダム・モンタージュ」こと、ナンシー・マイヤーという女性が出ていました。彼女は、番組内で2001年5月に青森県弘前市で起きた武富士弘前支店放火殺人事件の犯人を透視したんです。

若者
皆神さん
若者
皆神さん
彼女の透視と犯人逮捕の時期が非常に近かったので、透視内容と犯人の犯行時の実際の行動などがとても比べやすかったです。録画していた番組内でのナンシーの発言と逮捕後の新聞記事などをよ~く比べてみたら、ナンシーの透視は全部間違っていたことが分かりました。
例えば彼女は、放火に使ったガソリンはプラスチックタンクに入れていたと言っていたのに、実際は金属缶だったり、動機は親の借金だと言っていたのに、実際は自分が競輪ですってしまっただけだったし、犯人は農園を経営しているはずだったのに、実際はタクシー運転手でした。

若者
皆神さん
若者
皆神さん
彼女が番組内で描いてみせた犯人の似顔絵が、実際の犯人の顔と割と似ていたんですよ。続編の番組ではそのことだけを取り上げ、彼女がいろいろ他に語っていた間違った透視内容のほうは、なかったことにされちゃいました。

若者
皆神さん
警察の似顔絵は、3億枚以上配られていました。ですので、ナンシーが警察による似顔絵をどこかで見ていて、それに似せて自分のモンタージュを描いた、という可能性が否定できないんです。
どっちにしても彼女の透視は、犯人逮捕にはなんの役にも立ちませんでした。
「透視が的中」のカラクリ
若者
皆神さん
若者
皆神さん

出典: PIXTA
若者
皆神さん
その時に見いだされたのが、マクモニーグルでした。
若者
皆神さん
都合良く話をねじ曲げて作られていたフシがあるんです。
たとえば、「超能力捜査官」がアメリカから日本を透視して、「ここに川があって、線路があって、三角の屋根があって」とかいいながら行方不明者が隠れているはずの家までの道順の絵を描くとしますよね。テレビ局スタッフは、その絵に似ている場所を、日本国内で必死になって探すわけです。ですが番組内では、彼が描いた道順では行き着けないはずの、全く違うところにある行方不明者の自宅に、番組スタッフがなぜかちゃんと行き着いてしまって「見事に透視は当たった」などとオンエアされたりしていたんです。
若者
皆神さん

テレビから「超能力」が消えた?
若者
皆神さん
ただ、あまり話題にはならないですね。
若者
オウムって「空中浮揚」とか超能力がある的なことを言ってましたよね。
高学歴のエリートがたくさん信じて入団して、あんな事件を起こしてしまって。

皆神さん
オウム事件の当時は、超常現象関連番組が一斉に消えましたよね。
事件前には、たとえば「矢追純一UFOスペシャル」みたいなTV番組は、そのメチャクチャぶりが大変に面白かったんですが、オウム事件の後は、視聴者から批判がくることを考えて、テレビ局側が自己規制するようになりました。でもしばらく経つとその規制もゆるんだのか、従来と少しトーンを変えた「FBI超能力捜査官」のようなオカルト番組が始まりました。。
いま、日本のテレビ局で超常現象専門番組を、定期的にシリーズで流しているのは、
唯一NHKだけじゃないかと思います。
若者
一番やらないと思ってました。
皆神さん
懐疑的な視点で超常現象を検証していて大変に面白いですよ。
ちなみに私も時々出させていただいております。
若者
――「超能力捜査官」は、どうも創作の世界だけのようです。次回は専門記者・皆神さんが語る超常現象の今昔です。