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開成高校、高校ゲートボール界屈指の強豪に 強さ支える戦略とは

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日本の高校ゲートボール界で、屈指の強豪として知られている学校があります。あの開成高校です。指導者は不在、受験に専念するため2年で引退。そんな特殊な環境にもかかわらず、昨年、全国大会2連覇の金字塔を打ち立てました。強さの秘訣(ひけつ)はどこにあるのか、選手に聞きました。
今月、長野県で「全国ジュニアゲートボール大会」が開かれました。男子1部(15歳以上18歳未満)など3クラスで争う大会で、全国から30チームが参加しました。
開成高校は実質高校生年代で争う男子1部で昨年まで2連覇している全国屈指の強豪です。今年の大会も開成の部員で作る2チーム(チーム名は「開成学園 風」と「開成学園 花」)が予選リーグを突破し決勝トーナメントに進出しました。
しかし、「風」は昨年の決勝で開成に敗れて準優勝だった広島楓ジュニア(広島)と当たり、リベンジを許しました。「花」は、最終的に3位に入ったECバディ(三重)に敗れました。
ただ、高校野球で考えれば、夏の甲子園で2連覇して次の年も甲子園8強ということなので、全国屈指の強豪であることに変わりはありません。今年の開成高校はオール1年生で臨んでいて、伸びしろは十分です。「花」の主将仲沢智貴さん(1年)は、「ギリギリの戦いで自分たちに大きなミスはなかったが、相手がうますぎました。現時点の力は出し切ったと思いますが、3連覇できず悔しいです」と話しました。
ゲートボールは高齢者のスポーツというイメージが強いですが、全国ジュニアだけでなく、全国高校ゲートボール選手権大会も毎年開催されていて、作新学院(栃木)や白樺学園(北海道)も常連校です。
年齢や性別にかかわらず楽しめる「ユニバーサルスポーツ」であり、かつ「チームスポーツ」であり、「戦略型スポーツ」でもあります。
5対5のチーム戦で、1ゲームは30分です。球を打ってコート内にある三つのゲートを順番に通過させ、最後にコート中央のポールに当てると「上がり」になります。コート通過や上がりごとに点を獲得でき、最終的に総得点の多いチームが勝ちになります。
一打ごとに変わるコート上のボールの配置を読み、戦略を組み立てます。単純に自分の球を打ってゲート通過の早さだけを競うわけではなく、自分の球で相手の進路を妨害したり、相手の球をコートの外にはじき出したりすることができるため、緻密(ちみつ)な戦略が鍵を握ります。
仲沢さんはゲートボールの魅力を、「体格差や生まれ持っての才能とかではなく、テクニックと作戦面を突き詰めればうまくなれる」と話します。
ゲートボール部は、開成中学と開成高校が一緒に練習をしていて、開成高校の部員も多くが中学時代から競技を続けています。仲沢さんも中学からのメンバーで、全国ジュニアの2部クラスで昨年3位に入っています。現在の部員数は中高合わせて25人ほどです。
高校生が主体となって下級生を指導し、戦略面も考えます。中3で加入した鈴木昭之介さん(1年)は加入当初、作戦のレベルの高さに面食らったといいます。「高度な作戦を理解して実行しているチームメートを見て、すごいなと圧倒されました」
練習は、普段は週3~4回、2~3時間ほど。練習のあとに塾に行くメンバーもいれば、塾と練習の日を分けているメンバーもいるそうです。
勉強とゲートボールを両立するコツを尋ねると、「勉強はしていません」と開成生ならではジョークを返されました。高3の5月に開成生にとって非常に重要な「運動会」という学校行事があり、運動会後に受験勉強に向けて切り替えていくという人もいました。
何が開成高校の強さを支えているのか。仲沢さんは、戦略面に自分たちの強みがあると分析しています。「次の次の手を考えながら戦略を組み立てています。次に打つ球を、どうやって次の一手につなげていくかが重要。のちのちの利益を求めて、次の球につなげていく。そのあとの展開を見据えて作戦を組み立てています」
リスクをいとわぬ強気なプレーも特徴の一つです。「ある程度のリスクがあるが、リターンが望めるなら、リスクをいとわない。その方が楽しいので」
佐々木崇太さん(1年)は、自分の球を相手の球に当てることができれば有利になる局面を例に、チームのスタンスを説明してくれました。「外したときのデメリットと当たったときのメリットを比較して、メリットがあるならリスクを取りたいと思っています」
ゲートボールの魅力はゲーム面だけではありません。ゲートボールを通じて、コミュニケーション能力の向上も図れるといいます。
佐々木さんは、「チームメートとたくさんコミュニケーションを取ることになるので、ゲートボール部で過ごせば間違いなく絆が深まると思います」
試合で審判やゲートボール連合の方など、普段の生活では話すことがない初対面の大人としゃべることができるのも楽しいそうです。
開成高校のゲートボール部には、指導者がいません。「自主自律」の精神ゆえにあえて自主的な運営をしているのかと思ったら、「できる人がいないだけです」という答えが返ってきました。戦術にたけた指導者に教えを請いたいという思いがある半面、指導者がいないゆえの「いい意味での緩さ」もメリットだと感じているそうです。
試合中もメンバー同士で知恵を出し合って作戦を修正するなど、フラットで風通しの良い組織を作っています。
今年の全国ジュニアに、開成高校はオール1年生で臨みました。たまたま元から高2の年代がいなかったためだといいます。
仲沢さんたちは試合後、「(準々決勝の相手に)細かいところの詰めをされて、自分たちが詰め切れなかったところを差された」と相手をたたえました。
「コートによってボールの転がり方が違うが、感覚を合わせきれなかった」「打撃の力加減など個人技をもっと磨く必要がある」。部員たちは熱心に敗退の原因を分析していました。
ゲートボール部は、受験勉強に専念するため多くの部員が2年で引退します。今回出場した1年生にとっては、来年が最後の大会ということになります。
仲沢さんは、「来年の大会に挑戦できるので、なんとしても優勝して『開成高校のゲートボール部は強い』という印象を残せたらと思っています」と話しました。
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