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2016年08月20日

「脱ぐタイミング、女優より難しい」“一発屋”を悩ますコスプレ衣装

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髭男爵の2人

髭男爵の2人

出典: サンミュージック提供

 “一発屋”芸人の多くが抱える悩みが、自分たちの「変な衣装」。荷物は重くなり、洗いにくいのですぐ臭くなる。スーツで決めた正統派漫才師と見比べ“舐められている?”と疑心暗鬼になることも。「“コスプレ”から解放されるには、別の“一発”を当てるしかない」。“一発屋”髭男爵の山田ルイ53世さんが語る、“コスプレキャラ芸人”の悩みとは?

“一発屋”の荷物は大きい

「人生は、重き荷を背負うて、遠き道を行くが如し…」
徳川家康の言葉である。
この名言を、地で行くのが、我々“一発屋”。
と言っても、人生における宿命や使命…そんな大層な話ではない。
文字通り、“荷物”の話である。

“一発屋”の荷物は大きい。
理由は単純明快。
“一発屋”と呼ばれる芸人の多くが身を包む、“変な格好”…“コスプレ”のせいである。
ギターを弾く侍、悔しがる花魁、数々の小道具で“ワイルド”をアピールする中年男、あるいは、貴族。
“コスプレキャラ芸人”とでも呼ぶのがお似合いの男達。
もはや、「一発屋=コスプレキャラ芸人」と断じても、概ね間違いではない。

たしかに大きい荷物

たしかに大きい荷物

出典: サンミュージック提供

一口に荷物と言っても人それぞれ。
登山用の大きなリュックを担ぐものもいれば、“臼”や“杵”が載せられた台車を押し歩く、“やっちまった”二人組もいる。
しかし、大概の“コスプレキャラ芸人”は、僕も含め、キャリーバッグを愛用しているようだ。
「今日、どこ行くの?」
と問われれば、
「成田空港!!」
そう返す他、誰も納得してくれそうにない、大袈裟ないでたち。
荷物の中身は、正統派の芸人には無縁の、奇抜な衣装や小道具で溢れ返っている。
我々であれば、タキシード等の貴族風衣装、皮靴、シルクハット、ワイングラス等々。
“貴族になりたて”の時分は、これに、サーベル、バルコニー、札束が詰まったアタッシュケースが加わり、とてつもないボリュームに。
細心の注意を払わねば、割れたり、潰れたりするものもある。
とにかく、嵩張るのだ。

これがないと始まらないワイングラス

これがないと始まらないワイングラス

出典: サンミュージック提供

“仮装大賞”の一般参加者

手ぶらに近い軽装で、颯爽と現場入りする、“普通の”芸人とはあまりにも対照的。
スタイリストと、世間話をしながら、用意されたお洒落な洋服に袖を通す彼らを横目に、自前の“コスプレ”に着替える我々の姿は、“仮装大賞”の一般参加者と大して変わらない。

“コスプレキャラ芸人”の憂鬱は、“荷物の大きさ”だけに止まらない。
「着替えに時間がかかる」
「いつも同じ格好なので、飽きられやすい」
「同じ理由で、季節感がない」
「“コスプレ”のせいで、“某夢の国”でロケが出来ない」
“貴族”由来の弊害も。
「シルクハットのせいで、おでこが一年中かぶれて赤くなっている」
「生放送での漫才披露中、ワイングラスが粉々に割れ、パニックに」
「水物厳禁の精密機械である、クイズ番組の回答席にワイングラスを持ち込み、叱られる」
数えあげれば、キリがない。

“臭い”も問題である。
特に“売れっ子”時の“コスプレキャラ芸人”は臭い。
自前の衣装を連日、しかも、一日に何度も着用する。
到底クリーニングは間に合わず、異臭を放ちはじめ、共演者からクレームが入る。
昨今話題の“スメハラ”、その先駆け。
しかし、この問題は既に解決済み。
理由は、お察し頂きたい。

衣装のままたそがれる髭男爵の山田ルイ53世さん

衣装のままたそがれる髭男爵の山田ルイ53世さん

出典: サンミュージック提供

リアクションとっても顔が見えない

番組内の役回りによっては、研究員や家来等、“別キャラ”に扮するケースも。
用意された白衣や裃(かみしも)を、ディレクターの指示通りに“羽織る”…“貴族”の上から。
結果、“ご当地キティーちゃん”のような仕上がりとなり、ややこしいことこの上ない。

頭上から、水や粉が落ちてくる“ドッキリ”や“罰ゲーム”の際は、シルクハットが、シャンプーハットとして機能し、顔が全く汚れない。
「うわーーーー!」
綺麗な顔で、リアクションを取った所で、後の祭り。
白々しいし、何より気まずい。

気まずくとも、顔が見えればまだまし。
十メートル近い“高飛び込み”の台から、プールに飛び込む企画。
当然、リアクションの肝は、落下中の恐怖に歪む顔の表情。
しかし、これが、着水の瞬間まで一切カメラに映らない。
胸元にあしらった、豪華な涎かけ、もとい、貴族風ネクタイ。
落下の風圧により、“マリリン・モンロー”のスカート顔負けに捲れ上がったそれが、終始、僕の顔面に張り付いていたためである。

舞台で「正装」し乾杯をする髭男爵の2人

舞台で「正装」し乾杯をする髭男爵の2人

出典: サンミュージック提供

“笑いの本道”から外れた“落伍者”

このように、“コスプレ”が引き起こす、数々の憂鬱な事態、弊害は、枚挙に暇がない。
中でも、一番精神的に堪えるのは、“舐められる”ことである。
いささか、不穏な物言いになって申し訳ないが、他に適当な表現が見当たらない。
ス―ツでビシッと決めた、正統派の漫才師は、“笑いの求道者”。
ストイックで格好良いイメージ。
対して、我々は、“笑いの本道”から外れた“異端者”、“落伍者”…つまりは、“落ちこぼれ”。
自然、舐められる。

「“生で見たら”、笑えた!」
「“意外と”、笑えた!」
「“普通に”笑えた!」
地方営業の後、久しぶりに出演した“ネタ番組”のOA後、SNS等で散見される、“小骨”混じりのお褒めの言葉。
一応、評価はして頂いているわけだが、引っ掛かる。
レストランで食事し、シェフを呼びつけ、
「“意外と”食えた!」
そんなこと言わない。

ライブのチケット売り切れを告げる貼り紙

ライブのチケット売り切れを告げる貼り紙

出典: サンミュージック提供

挙句の果てに、“極一部の方々”からは、
「“変な格好”をしたから売れたんだろ?」
…“今世”における僕の唯一の手柄も、もはや、“追い風参考記録”呼ばわり。
そんな甘い世界であれば何の苦労もないのだが。
とにかく、的外れ。
無念である。
しかし、ここは、耳を傾けねばなるまい。
何のメリットもなかろうに、わざわざ時間を割いて、“匿名”での御指摘。
よほどの何かを成し遂げた、一廉の人物に違いない。
名を明かせば、騒ぎになってしまうような…ゆえの“匿名”。
知ったかぶりのおサムいバカとは訳が違う。
有難い。

“脱ぐ”タイミング、女優のそれより難しい

ここまで書いてくると、
「そんなに言うなら、“コスプレ”やめればいいじゃないか!」
さすがに、お叱りを受けそうだ。
いや、御尤もである。
実際、僕の“レギュラー仕事”は、今現在、ラジオ三本に、書く仕事が幾つか。
“コスプレ”関係ない。
シルクハットと共に歩んだ十年間は、一体何だったのか。
とは言え、我々が“脱ぐ”タイミング、その見定めは、女優のそれより難しいのだ。
夏休み明け、イメチェンを敢行した高校生が、髪を染め、ピアスをして登校するのとは訳が違う。
想像して頂きたい。
ある日、突然、貴族をやめて、スーツ姿で現場入り。
“売れっ子”時であれば、まだいい。
“天狗”の一言で済む。
しかし、今や、“一発屋”。
そもそも、天狗になる動機がない。
動機なき天狗…もう、“おかしくなった”と思われても仕方がない。
結局の所、“コスプレ”から解放されるには、更なる別の“一発”を当てるしかないのである。

自らがプロデュースする、まどもあ54世と

自らがプロデュースする、まどもあ54世と

出典: サンミュージック提供

精進あるのみ。
頑張ろう。
そんな想いを胸に秘めた、年に一度の“髭男爵”の単独公演。
そこでは、新ネタ作り、スーツ姿で漫才も披露する。
ワイングラスもなしだ。
しかし、何やら、気恥ずかしい。
そわそわと、落ち着かない。
例えるなら、そう…“コスプレ”でもしているような、そんな気分である。


一発屋芸人、今も地道に活躍中 HG・テツトモ・ダンディ…
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