「昔の曲を一切やらない」ライブツアーに挑戦して成功を収めたw-inds.。逆に今年のライブ「w-inds. LIVE TOUR 2024 "Nostalgia"」では、過去のヒット曲を中心にした構成を発表しています。ライブのプロデュースを担当する橘慶太さんは、「何でもやれる、という自信がついたから」とその意図を説明します。そして話はファンへの思いにもつながっていき――。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
《略歴》たちばな・けいた 1985年、福岡県生まれ。w-inds.のメインボーカリストとして、2001年にシングル「Forever Memories」でデビュー、初のアルバム「w-inds.~1st message~」がオリコンチャート1位を記録し、「第43回日本レコード大賞」最優秀新人賞を獲得。23年に15枚目のオリジナルアルバム「Beyond」をリリース、同アルバムを携えた「w-inds. LIVE TOUR 2023 “Beyond"」を開催。24年には「w-inds. LIVE TOUR 2024 “Nostalgia"」を予定する。作詞作曲、プロデュースを手掛け、ソロ活動やサウンドエンジニアとして他のアーティストとのコラボレーションにも取り組む。
――次のライブ「w-inds. LIVE TOUR 2024 "Nostalgia"」は「過去のヒット曲中心」の構成にするそうですね。昔の曲を一切やらなかった“Beyond”からは大きな変化ですが、狙いはあるのでしょうか。
それは今回の“Beyond”のツアーが成功したことが大きくて。“Beyond”に過去のヒット曲を入れなかったことで、新しいものをみんなが、「認めてくれた」っていうとアレですけど、「今のw-inds.でも大丈夫だよ」っていうのを、僕はファンのみなさんが思ってくれた感じがしたんですよね。
それは自分たちの新たな可能性だと思っていて、もう言葉を濁さずに言うと、“Beyond”のツアーがダメだったら結構ダメだなと思ってたんですよ。今のw-inds.として評価されないのであれば、かなり厳しい状況というか。もうチャレンジもできないし、何だろうな、足踏みしてしまうというか。
そんな感覚だったので、みんながそれでも支えてくれたっていうのがすごく、背中を押してくれた感覚になって、僕的にはそこでファンに対して「本当にありがとう」っていう気持ちが芽生えて、勇気が出たんですよね。
勇気っていうのは、新しいものに挑戦する勇気ももちろんなんですけど、逆にもっと昔の曲を大切にして、ファンのみなさんが「もっと聴きたい」って思ってくれる気持ちに応えたいっていう勇気もそうで。
――3月にデビュー23周年を迎えました。最近はファンの「一生ついていきます」という言葉を信じられるようになったとも聞きました。
そうなんですよ。僕はもう正直に言ってるんですけど、デビューしてから「一生ついていきます」「ずっと応援してます」って言われたときに、どこかで「そんなわけない」と思ってたんですよね。もちろん「ありがとうございます」とは言うんですけど。
それは相手に対してっていうよりも、危機感、自分たちが業界の中で常にどうなるかわからないと思っていたからなんですけど。でもそれが、ここまで来ると、「あれ、たぶん本当に一生、応援してくれるな」って思いますよね。
――みなさん一生ペンラ(イト)振りますよね。
振ってくれますよね。アルバム「Beyond」にはファンへの想いを書いた「Unforgettable」という曲もあって。自分の中の変化がここ数年、すごく大きくて、そういう楽曲がどんどん生まれてきますね。
ウソ偽りなく、今は「ファンのみなさんが楽しんでくれれば、あとはもう何でもいいや」という感覚なんですよね。
僕たちとしてはこの23年、「好き勝手やってきた」「自分たちのこだわりにみんながついてきてくれた」っていう印象なので。
実は15周年ぐらいから、ちょっとずつ芽生えてきていた「(ファンへの)感謝を伝えたい」という気持ちがどんどん、高まってきていて。
とにかく今は(ファンの)みんなが楽しんでもらえるように、笑ってもらえるように、面白いと思ってもらえるように、ライブに来てよかったって思ってもらえるように、と最優先で考えていますね。
――「Unforgettable」は一見ラブソングのようで、ファンへの想いを書いた曲なんですよね。すごいことをされるなと思いました。
いやいや、僕はステージ上とかで、こうみんなに直接、言葉で伝えるのが苦手で。楽曲だったり、こういうインタビューだったりを通して伝わる方が、自分らしいと思ってますね。
――過去のヒット曲はライブで盛り上がりやすいイメージがありましたが、2020年にメンバー編成が3人から2人に変わった中で、昔の曲をやるのは勇気が要ることだったんですね。
簡単じゃないですね。それに関しては、新たにボーカルを担当するようになった(メンバーの千葉)涼平君がもう、一番大変かなっていうのがありますけど、それもでも間違いなくできるだろうなって。僕は涼平君を信じているので、やろう、やれると思いましたね。
――「過去のヒット曲中心」はファンのみなさんも喜びそうですが、今の曲も昔の曲も楽しんでもらえるという状態は最強なんじゃないかなと思います。
いや、本当にそうなんですよ。
――「最強」はちょっと言葉が足りなくてお恥ずかしいですが……。
僕も今、恥ずかしいんですけど(一同笑)。本当にこう、何でもやれるっていう自信がついたがゆえに、やっぱり昔の曲を二人でパフォーマンスしても絶対いいものにできるし、みんなを楽しませられると思えるようになったんですよね。
だから、思い切った次のツアーを考えることができたので、本当に“Beyond”があったからこそ開けた扉がいくつかあって、そのうちの一つです。
“Beyond”は自分たちの色として一つ形にできたので、もちろん今後も機会があれば同じようにストイックな内容もやりたいですし、次に“Nostalgia”でやるようなツアーの内容もどんどんやっていきたいです。
軸が増えたような感じで、すごく今、自信に満ちあふれた音楽活動ができているなっていう感覚があります。
――根拠のないポジティブではなく、しっかり裏打ちされているし、すごく悩まれながらトライアンドエラーを繰り返した結果、信じている、というように聞こえました。
そうですね、「信じてる」っていう一番その言葉が正しいですね。こう、全部を、なんだろうな……「上手く行く、上手く行く」っていうふうには思ってなくて。僕は自分としてできることをすべてやった上で信じている、っていうことが多いので、ただのポジティブとちょっと違いますね。
常に自分がチャレンジする立ち位置に身を置きたいって考えているので、このツアーも多分めっちゃ難しいっていうか、新たな気持ちで挑まないといけないなって感じてますけど。
でもすでに、それこそセットのイメージもあって、楽曲もどの曲を歌うとかも、実はほぼ決まってますね。(編注:インタビューは3月に実施)
――楽しみですね。「キャーポイント」(w-inds.のライブで観客が声援を上げるポイント)満載ですか?
僕もすごく楽しみですね。多分一生(ライブ中ずっとの意)キャーって言われてる気がします。参加する方には「次の日、休みにしといた方がいいよ」って伝えたいです(笑)。