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#49 #就活しんどかったけど…
半数の保護者「オヤカク」経験あり 背景に「売り手市場」「コロナ」
増加傾向にあるそうです
新卒の就職活動で、子どもの内定先の企業から何らかの形で親が内定承諾の確認を受けることがあります。「オヤカク」と呼ばれ、近年、増加傾向です。就職情報会社の調査では半数超の保護者が「オヤカク」を受けたと答えていますが、背景には何があるのでしょうか?
学生向けの就活サイトを運営する「マイナビ」が1月に実施した「2023年度就職活動に対する保護者の意識調査」(有効回答1000人)によると、子どもの内定先から「内定確認の連絡」、いわゆる「オヤカク」を受けた保護者は、52.4%と半数を超えました。
2022年度の調査では48.3%、2021年度は49.9%で、増加傾向にあります。
内定確認の連絡を尋ねる調査は毎年行っていたわけではないものの、初めて調査した2018年度の17.7%からは大幅に増えました(いずれも有効回答は1000人)。
調査を担当したキャリアリサーチラボ研究員の長谷川洋介さんは、「オヤカク」が広がっている背景には、売り手市場とコロナ禍における「採用側のニーズ」が関係していると分析します。内定を出した企業は、「なんとしてでもうちに入ってもらいたい」という切実な思いを抱えているそうです。
「企業の高い採用意欲に対して学生の数が少ない売り手市場で、人材の獲得競争が激化しています。内定を出す前の選考段階から自社を好きになってもらったり、学生との関係を密にしたり、関係性強化のための矛先のひとつが、保護者との連絡や確認になったのだと考えられます」
2020年以降、新型コロナウイルスの影響で、それまで対面中心だった採用活動はオンラインに切り替えられました。
「オンラインだけでのコミュニケーションでは、本当に入社意欲があるのか、好意醸成ができているか、企業側は不安に感じます。学生とのやりとりの量や質をカバーするため、保護者に連絡を取るようになったのかもしれません」
オヤカクと一口に言っても、やり方は様々。主流になっているのは、「親御さんは弊社のことをどう考えているんですか?」などと間接的に確認する方法です。
2024年卒の学生を対象にした調査(n=1415)では、「対面式の個人面談や面接の席で確認された」が7.4%、「あなた宛の電話で確認された」が6.8%、「親または保護者の捺印または署名を求める書類を渡された」が5.6%でした。
「親または保護者宛の手紙で確認された」「親または保護者も含めた対面式の面談があった」「人事担当者の家庭訪問があった」という回答も、わずかですがありました。
厚生労働省の指針では、企業側は採用選考時に学生へ「あなたの親御さんはどんな人ですか」といった家族に関することや、出身地・思想信条など本人に責任のない事項、本来自由であるべき事項について聞いてはいけないとされています。そのため、基本的には保護者の意向は学生を介して確認されるそうです。
保護者の「オヤカク」経験率は、子どもと同居しているほうが高いというデータもあります。
2023年度の調査では、「オヤカク」を受けた保護者のうち、同居は58.9%、非同居32.5%でした。保護者と同居しているかどうかについても、企業は知るよしもありませんが、結果的にコミュニケーションを取りやすい同居の方が高く出るといいます。
「オヤカク」は企業が学生との関係を強化し、内定辞退を防止する方法のひとつではありますが、最優先されるのは学生本人へのフォローです。保護者へのフォローはあくまで副次的なものだといい、保護者がいない場合は学生本人の意思を確認するにとどまります。
そもそも、「オヤカク」はいつから行われているのでしょうか?
長谷川さんによると、内定を出した学生の保護者に対して企業があいさつや連絡をすることは、バブル期にもあったと考えられるそうです。現在と同じく「売り手市場」と言われ、企業が採用や内定者の「囲い込み」に苦労していた時代でした。
「1989年発行の企業向けの雑誌に、採用担当者らが保護者に対してアプローチしていたという記述がありました。『オヤカク』という言葉は使われていませんが、内定辞退を防ぎ、入社意欲を醸成するひとつとして当時もあったと認識しています。ここ数年で急に出て広がった現象というよりは、脈々と行われていて、言葉があとから定着していったのではないでしょうか」
近年のマイナビの調査では、少なくとも2017年にはひらがなで「おやかく」の言葉が登場しています。「就職活動で話題になる言葉」について保護者に聞く質問で、当時の知名度は2.5%。2023年度調査でも2.8%だったため、ほどんど変化はありません。
「『内定確認』を受けたと感じる親御さんは増えているかもしれませんが、『オヤカク』という言葉としての認識はないのかもしれません」と長谷川さんはいいます。
朝日新聞のデータベースによると、朝日新聞紙面では2016年の社会面に「オヤカク」の文字が初めて登場しました。朝日新聞出版が発行する雑誌「AERA」では、2014年に記載されています。
しかし、企業から保護者へのアプローチという意味では、2013年にも以下の記述がありました。
就職活動に対する保護者の関心は、ここ数年70%前半で推移しています。
そんな保護者へのフォローとしては、「保護者向け説明会」を行う企業もあります。親向けのオリエンテーションということで「オヤオリ」とも呼ばれます。
長谷川さんは「企業が保護者に自社を知ってもらうPR活動の一環という意味では、『オヤオリ』も『オヤカク』のひとつと考えられると思います」。企業が保護者の理解を促したいと考える場合、効果的だそうです。
2023年の調査では、子どもの内定先の企業から「保護者向け説明会実施の案内」を受けたのは2.2%、「内定式・入社式への招待」があった保護者は17.3%でした。
一方で、学生が保護者へ就活の相談をすることが多くなっていると長谷川さん。必ずしも親と同じ環境で就活をするわけではありませんが、「家庭の中にいる一番身近な社会人が保護者。学生が親に相談し、親も相談があれば受ける」という状況になっているそうです。
「それは必ずしも親に依存していて、親の意見がないと決められないというような極端な話ではありません。親の過干渉や子の依存ではなく、親子で関わり合えるポイントが増えてきていると考えられるのではないでしょうか」
長谷川さんは「企業側としては、『オヤカク』をした結果、学生とのコミュニケーション不足が解消したかどうかが重要です」と話しています。
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