連載
#48 #就活しんどかったけど…
「学歴だけでは通用しない」夏のインターンで危機感 慶應大生の反省
気持ちを入れ替えて取り組んだ結果は…
「学歴だけでは、就活は通用しない」。慶應義塾大学4年の男性は昨夏、何の準備もせずに受けたサマーインターンシップの選考で危機感を覚えました。関心の高かった企業や業界最大手のインターンは全滅。しかし、その経験が内々定へとつながったと話します。
「仲の良い友だちが選考を通っていたのに、自分は落ちていて悲しくなりました」
来春に卒業予定の慶應義塾大学4年の男性(22)は、サマーインターンの選考を受けていた3年の6、7月のことをそう振り返ります。
当時、周囲の学生に比べると「就活に対する意識は低かった」そうで、友人に「受けた方がいいよ」と言われたことをきっかけに、何の対策もしないままインターンに応募しました。
志望業界は固まっていませんでしたが、「多くの人が名前を知っている大手企業に行きたい」という気持ちから、ITや金融、メーカー、コンサル、製薬、人材など約50社にES(エントリーシート)を送ったといいます。
そのうち15社から通過の連絡をもらったものの、関心の高かった企業や業界最大手と言われる企業のインターンへ参加はかないませんでした。
「学歴で通るかと思ったけど、このままではまずい」
就活への向き合い方を反省し、秋冬インターンの応募までに毎日最低でも30分、長くて3時間、webテストの勉強に打ち込みました。知人に勧められた自己分析の参考書も読み込み、自分の長所やアピールポイントを言語化できるようになったそうです。
ESの無料添削サービスも利用し、就活の口コミサイトも参考にしました。「初めはESを書くのも苦しくて限界を感じていましたが、コツをつかんで慣れていきました」と話します。
きちんと対策をしたかいがあってか、秋冬インターンでは金融とIT業界の計5社すべての選考を通過しました。そのなかには夏に落ちた企業もあったそうです。
夏と秋冬で計20社のインターンに参加した男性。サマーインターンは各社1~5日間のプログラムだったため、15社参加するとなると連日インターンの予定で埋まりました。慣れない生活で体力的にもきつかったといいます。
秋冬インターンは大学の講義との調整に苦労しました。インターンの開催は基本的には平日で、講義を休みすぎると単位取得に影響します。講義がない日や休んでも単位に支障のない日を中心に日程を組んだそうです。
「企業の方が土日は休みたいということも理解できますが、学業のことを考えてくれてないなと思いました。土日開催の企業には好感を持ちました」
しかし、男性がそこまでしても秋冬インターンに参加したいと考えたのには理由があります。
就活の口コミサイトなどで「インターンは採用に直結する」という情報を目にしたり、サマーインターン中に人事担当者から「優秀な人は早期選考に進んでもらいます」と言われたり……。周りの学生はみんな必死に競い合っていたように感じました。
男性が参加したインターンは、大きく分けると3タイプあったといいます。タイプ1は事業体験。タイプ2は新規事業の立案。タイプ3は架空の取引先への提案書作成です。
2と3のケースではゼロから企画を作り上げないといけないため、夜中まで取り組むこともありました。「ちゃんとしたものを作り上げないと『優秀』だと思ってもらえません。早期選考に呼ばれないのではないかというプレッシャーがあり、気が抜けずにきつかったです」
結局、参加した20社のうち10社ほどで早期選考に進んだという男性。3年生の3月までに、本命の大手金融機関を含む6社から内々定をもらい、本選考へ応募することなく就活を終えました。
政府のルールでは、3月1日に会社説明会などの「広報活動の解禁」、6月1日に面接など「採用選考の解禁」とされていますが、強制力はありません。
リクルート就職みらい研究所の調査によると、男性と同じ2025年卒の大学生の就職内定率は、4月1日時点で58.1%(前年同月差9.7ポイント増)。5月1日時点では、72.4%(同7.3ポイント増)でした。
男性は「就活が早期化したことで、長期化もしているのではないか」と学生側の負担が高まっていることを懸念します。
一方で、「早い段階で内定をもらえたのは気持ちが楽だった」といい、「就活の期間は長くなってしまうかもしれないけど、自分を見つめ直したり、いろんな職種に触れることでキャリア観が広がったりするので、早めに始めても損はない」と振り返っていました。
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