連載
#5 U30のキャリア
オヤカク「不要」、就活生の8割 でも親の意見重視 ベンチャー調査
「オヤカク資料」を実際に作った経験者にも聞きました。
就職活動の際、自身の内定先の企業がなんらかの方法で内定者の親の意思も確認する「オヤカク」を不要と感じる就活生は8割近くにのぼる――。そんな調査結果を、新卒対象のスカウトサービスを展開するベンチャー企業が公表しました。
調査を実施したのは、新卒対象のスカウトサービスを展開する「ABABA」(本社・大阪府吹田市)です。
4月下旬、2025年卒業予定の就活生300人を対象に行ったインターネット調査では、就活をする際、親にアドバイスや意見をもらった経験のある就活生は6割にのぼりました。
さらに、就活についてのアドバイスで「一番信頼する相手」として33%が「両親」と回答。最も割合が高かった「友人」(38%)に次ぐ結果となり、親ともコミュニケーションをとった上で就活を進める学生の姿が浮かびあがりました。
また、就活生の内定先の企業が、なんらかの方法で内定者の親の意思も確認する「オヤカク」については、「不要」と答えた学生が78%に上りました。
「オヤカク」は親子間での就職先への認識差で起こる内定辞退を防ぐ目的で行っている企業もあります。
調査では、「内定が決まった企業への就職を親に反対されたらどうするか」という質問も。その問いに対しては、84%が辞退しないと回答。その理由として最も多かったのが「自分の決めたことだから」が58%でしたが、「自分で決めるが決心は揺らぐと思う」と答えた人も45%いました。
「辞退する」と回答した学生にその理由を聞いたところ、85%が「自分より社会を知っている親の意見は信頼できるから」、17%が「親の言うことには従うべきと感じるため」と答えました。
この結果について、ABABAの担当者は「両親からの反対意見が学生にとって大きな影響があることがうかがえます」とコメントしています。
オヤカク資料を実際に作った経験があるという、都内で勤務する20代の男性に話を聞きました。
男性は4年にわたり、複数の会社で新卒採用に携わっているといい、2022年、住宅関連の企業に勤めていた際に「オヤカク」のための資料を作成したことがあるといいます。
「資料は当時、内定者の一人が親から反対を受けていることを受けて作ったものです。自社の財務が健全であることなど、外部に向けて公表されているIR情報を元に、『最後の一押し』として作りました」
男性によると、その会社では内定辞退の理由に「親の反対」が多かったといいますが、「コロナ禍の前と後とでは就活における親子の関係が変わっているように感じる」とも指摘します。
新卒採用を4年続ける中で、男性は学校行事などの対面機会が減ったコロナ禍で、「自分で意思決定をする場面が減ってしまったのではないか」と推測。
就活をする上で欠かせない「自己分析」ですが、意思決定機会の損失は「どのような企業が自分に合うか」を見えにくくしてしまったのではないかと男性は考えます。
その結果、親に「自分とはどんな人間か」を聞く機会が増え、親のスタンスも就活に反映されやすい環境になったのではないかと考えています。
「親が就職先に口を出すというのはどの時代でもあると思っています。ただ、社会情勢が不安定な中で就活生自身にも迷いが生じやすい。だからこそ、親に対して『口を出さないで』とは言いにくい環境になっているのかもしれません」
◇
連載「U30のキャリア」
コロナ禍を経験、オンラインコミュニケーションが増加、混迷を深める社会情勢――。
そんな令和の時代を生きる20代以下のみなさんは、人生をどう選択し、キャリアをどう考えているのでしょうか。
経験談やデータを元に、多様な側面から見つめます。
1/21枚